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スッポンをさばいてみよう!

「ふむ、このような沼地に似た場所ならスッポンがるのもうなずけるのう。同じ亀でもミイロウミガメの汁は食した事があるんじゃがな」


 ウミガメって食べてもいいのか?

 いや、元の世界とは違うんだから、日ノ本では日常的に食べているのだろう。

 淡水とはいえ亀に対して拒否反応を示さなかった事からも、意外とメジャーな食材なのかもしれない。

 ギンレイは脱走を企てるヌマギンチャクガメを見つけると興味深そうな視線を向け、背中のウネウネが気になって仕方ないといった感じだ。


「よっしゃ! それなら夜に備えて、栄養たっぷりのスッポン料理を振る舞うとしますか!」


 手早くタープと木の枝で簡易テントを作ると、早速仕込みの準備を始めた。

 こういった水の流れが停滞した場所や、砂泥底に住む生き物は入念に泥抜きを行うのが定石セオリーなのだけど、今回は時間がないので省略する。

 その代わり対表面はしっかりと洗い、胃や消化器官を始めとした膀胱ぼうこうなどの内臓を丁寧に取り除く。

 切り取った内臓は後でにでもしようかと思ったが、目を離した隙にギンレイが残らず食べてしまったようだ。

 別に毒ではないので害はないんだけどさ。


「お前も最近よく食べるよなぁ。

 そんなに腹が減ってたのか?」


 ワンワンと何度も吠え、モフモフの尻尾を振り乱してお代わりを要求する我が愛犬。

 つい先日まで仔猫と同じくらいだったのに、今では豆柴の成犬とさほど変わらない大きさにまで成長している。

 改めて成長の早さに驚くと共に、驚異的な食欲がそれを支えているのだと実感するばかりだ。

 少し前は俺のポケットに入り込んだり、竹筒の中でかくれんぼしてたのによぉ。


「……お主、そこまで泣かずとも……」


「ぅ…ばっかやろう……泣いで……ぅぅ」


 愛犬の成長記録、今日からでもつけようかなぁ。

 もういっそ一眼レフ買っちゃう?

 想定外の出費によって減りまくるAwazonポイントと激しく葛藤かっとうしつつ、ヌマギンチャクガメの調理は続く。


 次の工程は切り分けた身を水で洗い、臭みの原因となる血を綺麗に拭き取る。

 これだけでも仕上がりは段違いであり、更に各種のハーブと根菜を使って徹底した臭み対策を行った。

 甲羅に付着しているヌマギンチャクも食べられるので、分離させた後で鍋の具材にしよう。

 ダッチオーブンに水と味醂みりんに各調味料を加え、甲羅で取った出汁だしに具材を投入した後は、次々と沸き上がる灰汁あくを取り続ける。

 初めて亀をさばいた感想はというと、『調理するまでが大変』が率直な表現だ。

 まさか首を落として心臓も取り出したのに、まだ足が動いてるとか想像もしていなかった。

 それこそ、心臓の弱い人には調理する事自体がハードルの高い食材だと思う。

 次第に山で採れた根菜やキノコを伴い、今夜の主役であるスッポンが鍋という舞台を前に、俺達の熱視線を浴びて堂々たる登壇とうだんを果たす。


「待たせたな! あしな特製、ヌマギンチャクガメのスッポン鍋が完成したぜ!」

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