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異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp! 【 完結】  作者: ちゃりネコ
第一部 一章 遭難と書いてソロキャンと読もう!
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苦渋の決断

「やべぇよ……やべぇよ……」


 異世界ソロキャンが始まったかと思ったら終わりそうだった件。

 そんな聞いた事ありそうなタイトルが頭をよぎっていたが、今の俺には物語を考える余裕などない。

 あれから河原を一通り歩いて探索していると、少し小高い所に大きな岩の裂け目を見つけた。

 あそこなら雨風を避けられるかも――。

 そんな淡い期待で足を運び中を覗いてみると、一匹の獣が息も絶え絶えに血を流していたのだ。

 幸いな事に暗がりにいる獣はこちらに気づいておらず、時折辛そうな唸り声を挙げている。

 ゆっくり音を立てずに裂け目から離れるとスマホから『異世界の歩き方』を呼び出し、うずくまる獣について調べた。


「ネコ…いや、こいつはイヌ科の動物か?

 現実世界では見た事がない…下手に近付くのは危険……だろうな」


 召喚された本のページをパラパラとめくり、該当する情報を調べて驚いた。

 こいつはタテガミギンロウ!

 獰猛な森の捕食者でクマと並び、自然界のヒエラルキー上位を占める存在。

 通常はオスメスのつがいや群れで狩りをするのだが、この個体ははぐれてしまったのか、それとも怪我が原因で置いていかれたのか判然としない。


「なんだよオイ…。

 折角いい場所を見つけたと思ったのに…」


 どの道、ここで寝泊まりするのは危険過ぎる。

 手負いは気が立っているので、見境なく襲われる可能性が高いのだ。

 水場も近くて良い拠点になりそうな場所ではあるが…仕方がない。

 そのまま歩き出すと裂け目から悲痛な鳴き声が聞こえてくる。


「可哀想だけど俺にはどうする事も――出来ない…………かもしれん…けど……」


 獣に背を向けたまま立ち止まった理由、口にしてから思い出してしまった一つの事柄。

 俺には異世界アプリ『Awazon』がある。

 無論、俺は獣医ではないし野生動物の治療など行った経験などない。

 しかし、Awazonの品物の中には食料や水の類いはないが、その代わりに医薬品は豊富に揃っていた。

 それは人間を対象にした物だけでなく、犬や猫、馬などの動物を対象にした物まであるのだ。

 これを使えばあるいは……。


「待て待て、貴重なポイントをこんな所で使うのか? 馬鹿馬鹿しい、俺は遭難してるんだぞ!」


 冷静にならなければ。

 ここで野生動物を助けて何になる?

 食料にするなら分かるが、明日は我が身かもしれないんだ。

 こんな事にポイントを使っては万が一の時に……。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 俺の意思は鋼よりも硬く、正しいと思う選択をしたのだろう。

 手の中には犬用の治療薬や包帯を納めたキットが握られていた。

 総額20000ポイント……っけぇ。

 いや、これで助かるなら安いのか?

 もう何が正常な判断なのかも分からないが、目の前で死にかけている命を見捨てる事などできなかった。

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