ウロボロスの物語(亡国の異邦人) 第1章ー4
今回が初投稿作品になります。読みづらい文章になっているかも知れませんが、誤字脱字等あればご指摘のほどお願いします。
本作品では人が亡くなる描写もあるため、苦手な方はご遠慮頂きますようお願いします。
手持ち無沙汰だった俺は、睡魔に襲われながらも自分の名前が呼ばれるのを待った。俺の名前が再び呼ばれたのは、1時間ほど経った頃だった。
「太宰 精様。太宰 精様。第3検査室にお入り下さい」
アナウンスが流れた。俺は眠い目を擦りながら、再び第3検査室へと向かった。
第3検査室は椅子も机も同じ場所に置かれ、スーツ姿の女が机の前に立っているところも同じであった。
「そちらにお掛けください」
俺はスーツ姿の女に言われた通り、机の前に置かれた椅子に再び座った。
「厳正な審査の結果、太宰 精様のご職業が決定致しましたのでここに通知します。ご確認お願いします」スーツ姿の女はそう告げ、1枚の用紙を机の上に置いた。俺はその用紙を受け取り、内容を確認した。
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<決定された職業>
【農作業員】
推定年収:100〜200万ルブラ(日本円で200〜30
0万円)
<就業地区>
ウレウル自治区・南部第1農村地区
<ウレウル自治区に関する情報>
ウレウル自治区はウレウル山脈を中心とした自治区であり、
北部は永久凍土、南部は短草草原が広がっている。北部は機
械工業を中心とした工業地帯であり、農業機械、重機械、輸
送機械を主に生産している。南部は広大な短草草原を利用し
た小麦の生産、畜産が盛んに行われており、近年開発された
新種の小麦、『Sea Seed』の生産量は国内1位であり、我
が国の食料自給率を支えている。
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政府が決定した職業は、俺の希望した通りになった。難を言えば、就業地区である。ウレウル自治区は中核都市であるモスク自治区からかなりの距離があり、車で5時間もかかる。だが、そう贅沢も言ってられない。
「本当にご希望の職業の選択に関して、訂正はございませんでしょうか?」スーツ姿の女は用紙を確認する俺に向かって言った。
「はい、問題いないです」
俺は用紙からスーツ姿の女に視線を移し答えた。
「そうですか…」
そう言ったスーツ姿の女は、やはりどこか納得しかねる表情をしていた。
「それでは、今から今後の具体的な職業訓練について説明致します」スーツ姿の女は表情を戻し淡々と告げた。
具体的な職業訓練の内容とは、要するに今後の俺の身の振り方についてであった。スーツ姿の女の説明によると、俺はこの後政府がが手配した車でウレウル自治区まで移動するらしい。その後は、ウレウル自治区・南部第1農村地区の農耕管理者が後を引き継ぎ、俺の面倒を見てくれるという。そして、しばらくの間はその農耕管理者の家に世話になり、そこで農業の知識を身につける…、という話であった。
「以上が職業訓練の内容となります。何かご質問はございますか?」説明を終えたスーツ姿の女は言った。特に疑問も無かった俺は、「大丈夫です」と答えた。
「分かりました。本来なら最後に職業適応カードをお渡しし、就業地区まで移動して頂くのですが…」スーツ姿の女はそこで言い淀んだ。
「公安検疫室からのお呼び出しがございましたので、今からそちらに案内します」
全ての検査が終わり、職業も決まった。後はこの空港を去るだけだと思っていた。それだけに、スーツ姿の女の言葉は予想外だった。公安検疫室とは入国に際し、何か不備があった者を一時的に拘束する場所だ。だが、公安検疫室から呼び出される理由など、俺には検討もつかなかった。嫌な予感がする…。そう思いながらも、公安検疫室に向かわざるを得なかった。
「それでは、私の後について来てください」
そう言うと、スーツ姿の女は第3検査室を後にした。
俺はスーツ姿の女の後を追うように、公安検疫室へと向かった。
これで、職業適応検査についての大まかな説明は終わりです。次回から、ようやく主人公以外の登場人物が出てきます。まぁ、この物語に出てくる登場人物は主人公を含めて、ほぼ全員クズなのですが…。
ちなみに、主人公以外の登場人物は完全に架空の人物ですが、主人公だけは現実のある人物をモデルに書いています。それが誰か、気づくことができる人は殆ど居ないでしょうが…。
あー…、僕もこんな殺伐とした物語じゃ無くて、もっと明るくて、青春を感じる物語が書けたらいいのに…。
いや、物語はまだ始まったばかりですし、これからも1人でもこの物語を読む人がいる限り、頑張って書き続けていきたいと思います。
※次回投稿予定 2023年 8月2日(水)