表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/26

ウロボロスの物語(亡国の異邦人) 第1章ー1

今回が初投稿作品になります。読みづらい文章になっているかも知れませんが、誤字脱字等あればご指摘のほどお願いします。

本作品では人が亡くなる描写もあるため、苦手な方はご遠慮頂きますようお願いします。

 3月下旬の暖かい、よく晴れた早朝だった。日本から飛行機で約10時間、俺はアジア社会主義連邦共和国の中核都市であるモスク自治区、シェレンソ国際空港に降り立った。観光客であればシェレンソ国際空港から直ぐに跡を絶ち、各々の目的地に散って行く。しかし、俺は観光が目的でこの国を訪れた訳では無い。俺はシェレンソ国際空港のエントランスに点在する椅子に腰掛け、自分の名前が呼ばれるのを待っていた。



「お客様のお呼び出しを申し上げます。太宰 精様。太宰 精様。至急、第3職業相談窓口までお越しください」呼び出し音と共に俺の名前がアナウンスで流れる。


太宰だざい せいか…」

俺はひとりでに呟いた。俺は自分の名前が嫌いだった。誰かが自分の名前を口にする度に嫌気が差した。


 俺は重い腰を上げ、少ない荷物を押し込めたキャリーバックを引き、アナウンスの指示通り第3職業相談窓口へと向かった。

 


 職業相談窓口は大きな長机がパーテンションで区切られ、パーテンションごとに1か10の番号が割り振られていた。俺は第3職業相談窓口に行き、相談員に自分の名前を告げ長机の前に置かれた椅子に腰掛けた。第3職業相談窓口で対応した相談員は若い女だった。


「お待ちしておりました、太宰 精様。就労ビザの査定が終了致しましたので、只今より職業適応検査(OFT:Occupational Fitness Test)の説明をさてせ頂きます」相談員の女は機械的な笑みを浮かべて言った。


 俺はこの国に就労を目的として入国した。アジア社会主義連邦共和国における職業とは選択的職業制度により国が厳密に管理、運営しており、国民は就きたい職業に就くのでは無く職業適応検査の結果に基づき職業を選択をしていく。


「我が国では満13歳となった国民に対し職業適応検査を実施します。そして、検査結果に応じていくつか選出された推薦職業から国民は職業を選択し、その職業に応じた知識を身につける職業訓練へと移ります。他国から来られた方も我が国で就労される場合は職業適応検査を受けていただく必要があり、太宰様もこのご説明の後職業適応検査を受けて頂く予定となっております」相談員の女はそう説明した。俺は適度に相槌を打ちながらその話を黙って聞いていた。

 

 『職業による支配的社会システム』。それが、相談員の女の話を聞いて最初に抱いた印象だった。国家にとって都合の良い人材を育てるためこのシステムは導入されている。


「なるほど、よく分かりました」

俺は自分の考えが相談員の女に気づかれないよう笑顔を取り繕い言った。



「1つお聞きしたいのですが、例えば僕が自国で勤めていた職業の経験が職業適応検査に影響を及ぼすことはあるのでしょうか?」俺は相談員の女に問うた。


 俺の問いかけに相談員の女は、「そうですね…」と言い眉根を寄せた。


「職業適応検査では遺伝的、環境的要因から形成された人格が結果に左右されると言われております。これまでの職業の経験が職業適応検査の結果に左右されることはありません。なので、以前と同じ職に就けると断言することもできません」相談員の女は頭を下げて言った。


 俺は「そうですか。ありがとうございます」と笑みを浮かべて返した。


 相談員の女は俺の質問の意図を履き違えている。俺は前と同じ職業に就きたいからこの質問をした訳では無い。むしろ、全く逆の意図があって俺は相談員の女に尋ねた。


 その後も30分ほど相談員の女からの説明は続いたが、俺はある程度日本で職業適応検査について調べていたため、俺から再び質問をすることも無く相談員の女からの説明は終わった。

今回はこの物語の根幹となる職業適応検査という単語が出てきましたが、実際にそんなものが現実世界にあったら僕は間違いなく社会不適合者の烙印を押されると思います。まぁ、現時点でもかなり社会からズレた生き方をしているので、そんな検査受けるまでもありませんが…。この後も職業適応検査はこの物語の鍵となるので覚えていただけると幸いです。

次回は前回もお話しした通り、少し長めの内容となっていますのでそちらもお楽しみ下さい。

世間的には夏本番となり子供は夏休みと羨ましい限りですが、みなさんも体には気をつけてお過ごし下さい。


※次回投稿予定 2023年 7月22日(土)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ