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僕の存在意義

作者: 範如

「こんにちは」「こんばんは」「ごきげんよう」なんと挨拶をしたらいいのだろうか? 僕は周りを見渡した。戸惑う僕を横目に、僕の存在がないかのように僕の前を後を右を左を通りすぎていく。目線を合わせることもなく通りすぎていく人々。近くに緑覆い茂る美しい公園が見えた。美しさに連れられて公園に吸い寄せられるように入っていった。公園には、家族連れ、恋人、散歩中の高齢者、ジョギングをしている中年男性や美しいプロポーションの女性。太極拳をやっているグループ。ヨガをやっているグループ。ストリートライブをやっている自称歌手もいた。多くの人がいるのに、僕は孤独だった。ひとりぼっちだった。僕に気がつく人がいないのか、気づいていても知らない人だからと関心が無いないのか分からないけど。なんだか悔しくなって僕は大声を出してみた。自分でも、よくこれだけ大きな声が出るなと思うほどの大きな声が出たと思った。遠くに見えるマンションに木霊して自分の叫び声が返って来た。自分の声は返ってきても、他の人の声はなかった。「うるさい」とも「ここをどこだと思っているんだ」とか「カラオケ屋に行って来い」とか苦情も批判も何もなかった。

 「一体どうなっているんだろう」 この言葉が耳の中で波紋のように広がっていく。耳から喉へ、食道へ、胃へ、腸へ。腸のつづら折りを何度も越えて心に届いた。心に届いた時「お前は何者だ」という言葉に変わっていた。僕は「僕は僕だ!」と心に答えた。心は僕の言葉を無視した。そしてもう一度「お前は何者だ」と言って来た。もう一度「僕は僕だ!」と答えた。心は同じことをまた聞いてきた。僕は同じ答えをした。それを10回くらい繰り返した。僕は心に負けた。「一体自分は何者なのだ」と思うようになっていた。僕という存在は一体何なんだ。僕は、何をもって僕というのだと、自分が分からなくなってきた。

 僕は目で見える範囲の自分の身体を見た。細胞は日々死んでいく。そして誕生していく。生まれ時に持っていた細胞は、17歳の僕の身体には存在しない。半年経てば人間の細胞は全て入れ替わると高校の授業で習った。何をもって僕という存在を同一自己としてしているんだ。そんなことを考えていると頭がおかしくなってくる。

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