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ディストピア2030〜信じるか信じないかはあなた次第〜  作者: 地野千塩


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薬屋のはかりごと

 2032年、とある製薬会社の研究員だったMは夢のような薬を開発した。


 鬱、統合失調症、発達障害などの精神疾患がスッキリ治る夢のようなワクチンだった。既存の薬と違い、目立った副作用もない。既存のこういった薬は、副作用・自殺とあり、中途半端に断薬などすると、自害他害の副作用もあるのだが、そんな事は知らない人間も多かった。Mのいる製薬会社はメディアや医者にも金をばら撒いている。そんな事実が大手メディアや医者の口から出る事はないだろう。


 それにこういった薬は、もともと生活環境や生育歴に問題があるものが服用する。例え、自殺や犯罪に走っても、卵が先か鶏が先か有耶無耶になってしまい、製薬会社が責められる事は一切ない。まさに完全犯罪だ。


 今回Mが開発したワクチンは、そういった目に見える副作用はない。最近は薬の売り上げも減少傾向にあり、上司にせっつかれて開発したワクチンだが、これは免疫系に多大な副反応があり、運が悪ければ癌になる。まあ、打ったものの免疫力によるので、ロシアンルーレットのようなワクチンだった。


 上司には完治する薬やワクチンは決して作るなと言われていた。商売にならないからだ。何なら成分に病気の種を仕込んでおけと言われているぐらいだった。


 それでもMは全く罪悪感などない。結局のところ病気は本人の心が変わり、生活習慣や考え方や生き方も変わらないと治らないからだ。いくら外側で医療をやろうと、本人が怠惰で甘えた精神があった場合何も変わらない。特に社会や人のせいにしたり、疾病利得を楽しんでいる場合は、病気が良くなるケースは稀。こうした「患者様」は自ら病人になりたいのだ。潜在意識下ではそれを待ち望んでいるのだ。


 疫病にしたって、打つだけでスッキリ全部解決する夢のようなワクチンだってないものだ。必ず悪き点はある。それを調べずにホイホイ打つのは、自己責任ではないか。打つ前のサインは自己責任である事を認める行為だ。Mは自分達は全く悪くないと思う。


 こうして「患者様」に夢のような薬を売る。もはや偶像を売っているカルト教祖のような気分だが、Mには何の罪悪感もない。


「M、よくやった。こんなロシアンルーレットのようなワクチンは、私達が求めていたものだよ」


 上司に褒められ、Mの顔は笑顔。もうMには何の良心もなかった。

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