言霊の真相
Uは何をやっても上手くいかず、ついに引き寄せの法則などスピリチュアルに手を出していた。
「良い言葉を何回も言っていたら、願いが叶うの!? まじで?」
常々楽して一発逆転したいと思っていたUは、この情報に飛びつき、良い言葉を何千回も繰り返し呟いていた。いわゆるアファメーションと言われているメゾットで、引き寄せやスピリチュアル 界隈ではオーソドックスなものだった。
怠惰なUなりに頑張ったが、何にも現実は変わらなかった。「ありがとう」を十万回ほど唱えた時、ようやく何かがおかしいと気づいた。
「という事なんだけど、アファメーションとか言霊とかって嘘?」
「嘘ね」
友人のKに相談したところ、ばっさりと切られた。Kはオカルト、都市伝説など怪しい情報にも詳しいので、うっかり相談していたが。
「Uのやっている事は、いっぱい食べながら痩せたいって言ってるようなもんよ。そんなフワフワしたもんで一発逆転できない。まずは努力しなさい」
「わーん、そうだけど」
いつになく辛辣なUに躓きそうになったが。
「でも引き寄せでいう言霊ってなんなの? クリスチャンでも言葉を大事にしてるって聞いたことがある」
「それは、神の言葉が一番強く、現実する力があるってことよ。人間如きの言葉が何回もアファメーションしたって叶うわけないじゃない」
「へー」
「あと聖書では、権威が大事らしい。目上や国家のリーダーが扱う言葉も力があるってね。神よりはないけど」
「昔の天皇が歌を詠んでたのは、まさにその効果?」
「そうよ。だから親が子供に言う言葉って超大事。ここでブスとかバカとか言うと、呪いになるから。聖書的には親も権威があるのよ」
「ひー」
そんな事を言われると怖いのだが。確か子供の頃、Uは親にグズとかノロマと言われた事があったのだが……。
「クリスチャンは、そういう悪い呪いの言葉は神の言葉、つまり聖書の言葉を心に受け入れ、信じる事でキャンセルできるんだって。神の言葉が一番強いしね」
「へえ。でもウチらのような一般人はどうすれば?」
「まあ、はじめに言葉がありきよ。これからはスピリチュアルで一発逆転せず、真面目に生きますって口にして、毎日小さな事でも腐らずに努力しなさい」
「それが難しいんだよね」
そうは言っても厳しいKと話すうち、だんだんと楽して一発逆転しようという思考も消えてきた。とりあえず、もう引き寄せとかアファメーションとかは辞める事に決めていた。




