なんて美しいダイバーシティ
学校の道徳の授業で、「多様性」を習った。どんな国籍、性別、性的嗜好で差別してはならないらしい。
「多様性は素晴らしいと思いました。差別は良くないと思います」
クラスで一番の乱暴ものの男子がそう発表して、教室中から拍手。私は気分が悪くなってきた。綺麗なものに包まれてはいるが、決してて本質的ではないような。
次の授業は学級会だった。議題は「佐藤くんがなぜいじめられているのか、話し合う!」だった。このクラスには貧乏・ブサイク・親がカルト信者という佐藤くんがいて、いじめられていた。服も臭いし、話し方も気持ち悪い。
黒板には、佐藤くんがいじめられている理由が書かれていく。先生も特に止めていない。こうして悪い部分が自覚できれば、いじめが終わると信じられているようだった。
「先生、さっきまで多様性で、差別はダメって言ってたのに、佐藤くんへは公開処刑はしていいんですか?」
私はそう発言したが、軽くスルーされてしまった。国籍や人種、性的嗜好の差別じゃないからOKらしい。
数週間後、佐藤くんは自殺したらしい。葬式では担任や例のいじめっ子は不自然なほどに泣いていたが、翌日はけろっとしたものだった。誰も佐藤くんの話題はしていない。何事もなかったように日常が過ぎていた。
「LGBTの人たちの差別はやめよう。今日はドラァグクイーンの方の講演会もあるから、体育館へ行きましょう!」
その上、こんな講演会にも参加させられた。
佐藤くんが消えた教室は実に平和。臭いものに蓋がされ、綺麗に漂白されたシャツのように綺麗。なんて美しいダイバーシティ。
「ドラァグクイーンさん、差別がよくないのはわかりました。でも、いじめやパワハラが昔からずーっとある理由ってなんですか? 今もみんな差別は良くないって知ってるはずなのに、ネットの誹謗中傷も全く消えないのはなぜですか?」
私の質問には誰も答えてくれず、講演会をしている体育館から追放されてしまった。




