昨今の美しい多様性カップル
今、S郎達が見ているテレビには、男性同士のカップルがインタビューを受けていた。昨今の多様性カップルだと綺麗な言葉でラッピングされていたが、彼らは二人ともイケメンだった。職業も二人で会社を経営しているらしい。BL漫画から出てきたかのような綺麗な二人だった。
「しかし、こういう所に出てくる多様性カップルって、極端なブスとかチー牛はいないよな? どこが多様性なん?」
S郎の発言により、テレビのあるお茶の間は凍りついた。S郎の母や妹は「多様性カップル頑張って!」と応援していたから余計に。
「こういう所に救いようのないチー牛、無敵の人っぽい不細工が出て来ると、多少は説得力はあるね? でも、俺はそんな多様性カップルはテレビで見た事ないぞ。テレビ局も容姿差別してんじゃん。アナウンサーも不細工見た事ないわな。テレビ自体が容姿差別の最たるところなんだが、それはいいんか? どこが多様性なん?」
「ひっどい、お兄ちゃん! 夢を壊さないでよ! BLみたいだって萌えていたのに!」
「そうよ、S郎。テレビにブスやチー牛なんて出て来たら、絵面が悪くて視聴率取れないじゃない。スポンサーからクレームくるわよ」
S郎の空気の読めない発言により、お茶の間は言い争いに発展するが、テレビでは相変わらず美しい多様性カップルを写していた。
「新しい愛のカタチです。さあ、彼らのようなマイノリティも差別しないで応援しましょう」
美しい言葉で包まれた多様性。見かけだけは美しい画面がずっと映し出されていた。




