子供おじさん戦略
S郎は四十代、非正規、独身。子供部屋で寝起きしていた。いわゆる子供部屋おじさん。
「子供部屋おじさんか……」
仕事は事務職で残業はほとんどない。それ故に暇な時間は、子供部屋でネットを見てしまう。S郎のような男への風当たりは強い。婚活カウンセラーが子供部屋おじさんを馬鹿にしていたが、かなり強い口調だったので、炎上までしていたが。
そんなネットを見ると憂鬱になってくるが、年老いた両親に食事作りや病院の送迎は一応やっていた。趣味も無いので、非正規でも貯金は貯まっている。正直、この暮らしにどこが問題があるのかと思うが、見栄や世間体は確実に悪い。
「しかし不自然なほどに子供部屋おじさん叩きが多い。これは何かの陰謀か?」
裏に不動産会社がいて、ネット記事を書かせているのか。そんな陰謀論も浮かぶ。それに現状は資本主義経済。個人プレイにさせた方が資本主義経済的には理にかなっている。
東南アジアなどでは、大家族で助け合って生きている伝統的な暮らしをしているものもいる。だからと言って彼らは、別に子供部屋おじさんとは叩かれてはいない。むしろこうした大家族で生きる方が人間として理にかなっている気みする。大家族だったら、空き家問題、介護疲れ、ワンオペ育児、孤独死、ニート問題も解決しないか?
そんな仮説をたてていた時、ちょうど妹が離婚して、子供を連れて家に戻ってきた。子供は四人もいるので、一気に家は保育園化してしまったが。
それでも甥や姪の面倒を見ながら、子供おじさんへのコンプレックスは消えていく。そもそもS郎のような男をネットで叩く人々は、人の人生に責任なんてとってくれない。他人の目を気にして生きる事は、いかに馬鹿馬鹿しい事だと思う。
S郎の住む地域は過疎化し、空き家も多い。この空き家も何か上手く地域の為に活躍できないか。子供たちの世話をしながら、S郎は色々と考える事も増えた。いくら資本主義経済でも、人間は一人で生きていない。家族や地域に目を向けて見るのも自然な事だった。
「空き家をシェアハウスとか、教会や子供食堂と連携して学習支援の場にするとかもいいよな……」
まだまだ思いつきの段階だ。夢と言ってもいい。それでも、そんな事を考えていると、別に子供部屋おじさんでも良いだろう。これも一つの生き方、戦略みたいなものだ。
家の中の子供達の声は、うるさい時もあるけれど。それでも今のS郎は決して不幸ではなかった。




