宣言儀式〜未来〜
あるライターの男は、ずっと気になっている事があった。
漫画「未来」の事である。この漫画は、ある一人の女性が主人公なのだが、未来に起こる地震、疫病、殺人事件などがピタリと言い当てられていた。漫画なのに詳細に描写され、特に地震のページはリアルでゾッとする。
漫画の発売された時期は1990年だった。それなのに2011年の地震やや2019年の疫病の予言もピタリと合っていて謎が深まる。特にオカルトや都市伝説界隈では、話題になり、ベストセラーにもなっていた。
予言を捏造したというものもいるが、漫画のインクの色などで、1990年より以前に描かれたものだと特定されていた。また、陰謀論者は、イルミナティから計画を知り、一般庶民にネタバレをしているという妄想もしていたが、確かな証拠はない。
そこでライターは、この漫画について調べてみる事にした。
まずはコネを使い、出版社にもあたる。作者の須々木凛子は、もう引退している事も知ったが、何度も頭を下げ、彼女の出身地だけは教えてもらう。
T県T町の出身だった。ちなみにもう凛子は住んでいないが、何かヒントがあると思い、地道に調査をし続けた。
どうもT町には、拝み屋がいたそうだ。今で言う呪い屋で、不倫相手の男などを犯罪にできないような人間がターゲットになり、殺されているのを突き止めた。
しかも拝み屋と凛子の実家は近い。T村では祭りがあるらしく、何かヒントがあると思い、ライターも向かった。
神社はT町に神社周辺で行こなわれていたが、どうも様子が変だ。なぜか巫女たちが呪文のような言葉を言いながら、踊っている。
「なんですか、この祭りは?」
「土着の祭りだわ。はは」
町の人に聞いたが、答えになっていない。ただ、巫女たちが使う言葉には「地震」「災害」「疫病」なども混じっていて気持ちが悪い。
さらに調査を進めると、この祭りは、もともと拝み屋とも関係が深いようだった。というか全く同じ組織で、同じ呪文を共有していた時期もあるらしいが、今は色々あり、分かれていた。拝み屋の方が自然消滅し、巫女たちの祭りが現在まで残ったそう。
ただ、この巫女たちの使う呪文は、文字通りの呪いだったらしい。「地震がくる」などと脅して住民から金を巻き上げていたという。
地震の記録を調べると、巫女たちの予言もそこそこ当たっていたようだ。まるで巫女たちの言葉が地震などを引き寄せたようでゾッとする。
そういえば人間の言葉、思考、イメージする力は、そこそこの現実化する力があると聞いた事がある。ライターは一応キリスト教系の学校出身で、聖書にもそんなような事が書いてあったのを思い出した。確か、神は言葉とか、信じるとそうなるとか。
もしかしたら、巫女たちも凛子もそんな力を使って、現実に地震や疫病を起こしていた?
そんな仮説を立てつつ、調査を続行した。キリスト教系の学校にいた時の友達にもあたり、どういう事かインタビューもした。彼女はクリスチャンで何か知っていそうだ。
「ああ、これは宣言儀式で地震や疫病を呼んでいる可能性があるね」
ライターの仮説はあってた?
彼女が言うには、人間は神に似せてつくられたので、言葉やイメージもそこそこ現実化するらしい。ただ、神の意向に沿ったものは現実化するが、この力を悪用した場合、本人にその呪いが下り、かなり危険なんだそうだ。
断言儀式と言われているもので、オカルトの人達はよくこの手法を使い、地震予言などを当てているらしい。いや、当てるというか、わざわざ当てにいってるのだ。自作自演というか、まさに呪い。
そういえば凛子も拝み屋も行方不明だ。巫女も不審死が多い。彼女の言う事はもちろん非科学的だが、間違っているとも断言できない。呪って呪われた? 人を呪わば穴二つ。そんな諺もあった事を思い出す。
「でも一番強いのは、神様の言葉。つまり聖書の言葉よ。何かオカルトな人が変な呪いをかけても、こっちが聖書の言葉で祈れば、その力はキャンセルできる可能性がある」
「本当?」
「ええ。試しに『未来』の一つを潰してみる?」
そこには、ある殺人事件が予言されていた。地下鉄でナイフを持った男が暴れ、女子高生が一人亡くなる事件だ。この事で地下鉄の監視カメラが増え、より監視社会になるという。日付はなんと明後日の事だと予言。
もはや呪いだが、ライターは彼女と一緒に祈りを捧げた。正直よくわからないが、無我夢中で祈る。
そしたらどうだろう。女子高生は刺されたものの、軽傷で済んだ。ネットでは凛子の予言が外れたと大騒ぎだった。
彼女は台風や地震なども、祈りでこういった予言を潰していた事もあったと告白した。
「神様の計画を邪魔するヤツは、潰す」
こちっちも相当アタオカで怖いから……。
とりあえず、一つでも呪いが潰れて良かったというべきか。
まあ、信じるも信じないのも貴方次第。




