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落し物届けます  作者: 雪飴
7/18

不法侵入

「すみませーーん!誰か居ますか?」

 インターホンが鳴らず、扉を叩いても何も状況が変わらないが、、

 もしかしたら、次こそ誰か出て来てくれるかもしれない!という期待を込め、もう一度扉を叩いて声を出す。


 しかし、待てども何も変わらない。

取り敢えず誰のお宅だろうか、と表札を探した時。

 目に着いたのは、縦長の木の板に油性?で書かれた文字だった。

 

      【落し物届けます】


(落し物届けますって、何?ここ、民家じゃ無いの?店?)


  初めて見る内容の看板だった。

(学校じゃあるまいし、それとも駅の忘れ物とか?でも、それだったら。駅の忘れ物に気付いたらここまで!見たいな看板のがいいよね)


 誰かの家なのか、それとも店なのか。看板を見た事によって、分からなくなった花音だったが。

 今、自分がしなければならない事を思い出す。


 (ここが、人の家でも店でもどっちでもいい!

 御守り取り戻さなきゃ。)


 そう。目的は、猫に持って行かれた御守りである。

 

「ごめんくださーーい」

 このまま、待っていても埒が明かないと判断した結果。花音はこの家なのか、店なのか分からない建物に入る事に決める。

 幸いにも、玄関の鍵は掛かっていなかったので、すんなり入ることができた。


 最初にびっくりしたのは、玄関で。土間って言うのだろうか、横に広々とした昔ながらの木の造りだった。

 次にびっくりしたのは、()である。

折角の広々とした玄関に、物が溢れ、積み重なりごちゃごちゃしていた。


 しかも、物に統一性が無い。

ぬいぐるみに、本。帽子。衣服。鞄。もう何でもござれだ。

 (ゴミ屋敷?)

 一瞬そう思ったが、臭い匂いなど一切無く。寧ろ木の良い香りがしているし、イヤな感じがしない。


 もしかしたら、猫が何処かからか盗って来てしまったのかもしれない。

 自分の御守りもこの何処かに埋もれているのでは?と考えた花音は、溢れている物の山に手を伸ばした。


 ガラッ!!!!


「うぉい!!!(しゅう)!!!!!」

「!!」


 本日2回目のびっくりに、伸ばしていた手を思わず引っ込める。


 玄関の奥の障子からではなく、少し前に自分が入って来た玄関の引き戸を豪快に空け、黒い髪色の男の人が1人入って来た。

 腕にはダンボールが抱えられている。


「っと、嬢ちゃん見ねえ顔だな、新しいバイトか?」

「え……?」

「今立て込んでてな。ゆっくり挨拶する時間も惜しい。悪いが、これアイツに渡しといてくれな!仕事さぼんな!って伝えといてくれ。じゃ!」


 (…………え?)

 

 髭を少し生やした、自分より背の高い。ダンディ感満載の男は、戸惑う自分をよそに言いたい事だけ言って、秒で登場し、秒で消えて行った。

 ダンボールを私に押し付けて……。


 ダンボールの中身を見ると、これまた色々入っていた。

ぬいぐるみ。チケット。キーホルダー。何だこれ?

 もしかしたら、そこの物の山の一部なのかもしれない。


 (それにしても、一方的に喋って人の話も聞かず。オマケに、このダンボール……どうすればいいの?)


―――――――――――――――――――――――――


「おい。そこの不法侵入者。」


 ダンボールを両手で持って立ち尽くす、自分に届いた声は酷く冷たい男の声だった。

 


 

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