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落し物届けます  作者: 雪飴
6/18

黒猫

 駅で千佳と別れ、直ぐに家に帰る気分になれなかった花音は、駅の近くを散策する事にした。


 (高校決まってから、ここの街って何があるか良く分かってないんだよね、)


 駅から出発し、適当に道を進み歩いていると。小さな公園が目に入る。


 何となく、公園に入りベンチに座って、周りを見渡せば小学生位の子どもが何人か遊んでいて、それをぼーっと見つめていれば、気付いた時には自分1人だけベンチに取り残されていた。


 心ここに在らずで無心になっている時。ハッと意識が戻ったのは、自分の左手が何やら柔らかい物に触れていると気付いたから。


 ビクッとして、左手を見れば黒い柔らかい物が手に触れている。

 犯人は、逃げる様子もなく。こちらを見つめて

「ニヤァー」と鳴いてみせる。

 触れていたのは、黒猫の尻尾だった。


―――――――――――――――――――――――――

「お前は、何処から来たの?」

 自分の隣から退く気配の無い猫を撫でながら、黒く柔らかい毛を堪能する。


 人馴れしているのか、触られても逃げる様子は全く無い。

 見た限り、汚れていないし。人馴れしているし、何処かで飼われている猫なのかもしれない。


それから、ひたすら猫に構う事約20分。

猫と戯れる事に満足し。

 帰るために座っていたベンチから立ちあがろうとした時だった。


「ニャアァァ!」

「きゃっ!!」


 今まで、大人しかった黒猫が自分に飛び掛かってきたのである。


「痛ぁ!!」

 猫の勢いにビックリし、後ろに尻もちを突いてしまった花音は、打ったお尻の痛みに悶える。


いきなり何するんだ!という気持ちでお尻を摩りながら猫を恨めしげに見た時、花音は慌てる事になる。


 花音が慌てたのは尻もちを突いた拍子に、スカートが汚れたからでは無く。猫が咥えている御守りが目に付いたからだった。

「!!」


 直ぐ様、自分の首を確認する。

 (無い!)

 普段首から下げている物が今は無かった。


 あっ!と思う間もなく、猫は走り出す。

口に獲物を咥えながら。


「待って!!」

 それは、花音にとってとても大切な物で。

 失くしてはいけない物で。

 

 いつもは、なるべく身に付けていようと紐に通し、首から下げているお守りは、さっき猫に飛び付かれた拍子に千切れたのか。在るべき場所に存在していなかった。


 そこからは、花音と猫の追いかけっこの始まりで。

 諦めるという選択肢が花音に無い以上。取り戻すしかなかった。


 先ほどまで、大人しく触らせてくれていた猫は。

今は逃げる様に動きが俊敏になっている。


 待ってぇー!と叫びながら。猫を追い掛ける姿を何人かの人に見られても。狭い道に入られ、制服が汚れても気にならなかった。

 それどころではないのだ。


 見失いそうになりながらも、追いかけ続け。

猫が最終的に入っていったのは、ある古い家の造りの一軒家だった。


 そして、冒頭に戻る。

 

 


 


 

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