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落し物届けます  作者: 雪飴
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学校2

 机の上に数学の教科書を用意して先生が来るのを待つ、いつもと変わらない日常の始まり。

 

先生が教室に入ってきて挨拶もそこそこに授業を始める。まだ、一ヶ月程度しか使っていない教科書はきれいなのだが、流石進学クラスというべきか、進むスピードが速い。

 

しかし、予習と復習をしっかりとしていればついていけない程ではないだろう。この一ヶ月様々な教科の先生達の授業を受けてきたが、どの先生も教え方が分かりやすいので助かっている。

 

数学は特に得意な科目で、数と式の問題だつたら展開・因数分解・平方根をしっかり中学でやっていれば出来ない問題ではない。

まぁ、簡単なのは触りだけであってこれからの授業内容はどんどん難しくなっていくと思うのだが……。


「はい、舘倉さん。」

前の席に座っている女の子が此方に振り向いてプリントを渡してきた。

いつも数学では授業最後にプリントの問題を解いて終わる。今渡されたのがそれだろう。


 「ありがとう」

受け取りながらそう応え、プリントに取り掛かった。


 二限目、三限目と授業は問題なく進んでいって四限目の体育の時間になった。

 

体育は今朝先生が言っていたように自習になったのだが、体育館へは行かなくては行けないので、体操着に着替える為女子更衣室へと向かう。

 

「自習だから、着替えなくてもよくない?また制服に着替えるの面倒くさいよ。」

「うーん、でも体育の授業ではあるから着替えた方がいいよ、多分。」

文句を言う千佳をなだめながら足を進める。

体育館の隣にある女子更衣室に入れば、まだ着替えが終わっていない子がちらほらと見えた。

 

仕切りがない服を入れるただのロッカーしかない空間では、恥じらいもなく豪快に脱いでいる子もいれは、人に見られない様注意を払って着替えている子も見える。


 私自身は同性に下着を見られようが見られまいが、別段きにする性格ではないので、隠したりせず堂々と着替えていく。

学校で指定されている体操着の上は白色と何処の学校でも同じ様なものだが、ズボンの色で学年の色が分けられている、

 三年が赤・二年が緑、そして一年生が青色だ。

五月中頃の天気は思っていたよりも暖かかったが、体育館の中は恐らく少し肌寒いだろうと思い、ズボンと同じ青色に染められたジャージに腕を通す。

 

さて、そろそろ急がなくては鐘がなってしまうだろう、花音は脱いだ制服を綺麗に畳んで体育館へと向かった。

中に入ると皆んなはそれぞれ座り込んだり、ボールを出してバレーをしている。

今の時間は自習という名の自由時間なので何をしていてもよいだろう。

一通りぐるっと辺りを見渡せば陽の光が入っている暖かそうな場所が空いているのを確認する。

 

先ほど自分が見つけた場所へと千佳が向かって歩いていった。どうやら自分と考える事は同じな様だ。


「はぁー、やっと高校生活に慣れてきたきがするよ。」

床に座るなり足を伸ばして、腕を天井にあげながら千佳は花音に話しかけた。

「ついこの間まで中学生だったのにね。」

「本当だよ、この間まで受験勉強頑張ってたのが懐かしいわ、思い出したくないけどね。」

話をしながら、受験に向けて寝る間も惜しんで机に向かい合っていたことを思い出したのだろう。千佳は苦い顔をした。

 

「っていうか、本当に受かると思わなかったわー…花音のお陰だね。」

「どういたしまして、でも元々千佳は頭がいいんだから受かるの当たり前だったよ。」


 受験勉強の際に、花音は千佳によく勉強を教えていた。人に頼られる事は嫌いではないし、人に教えることによって自分もよく理解することが出来たので、花音自身にとってもプラスだった。


「いやいや、あんたの頭の良さには負けるって。」

先生より、分かりやすく教えてくれた幼馴染に千佳は感謝している。

中学受験をする人は知らないが、全国的に見ても普通の人は受験というものを高校受験で初めて受けるだろう。

 

そして、殆どの人はどこを受験するのか、どこの高校に入りたいのか迷うはずだ、何かのニュースで見たのだが高校の数は、全国で約五千校はあるらしい。

 

高校を選ぶ理由は人それぞれだ、在り来たりな理由で言えば、制服が可愛かったから、家から近かったから、自分の頭に見合っているから等、人の数だけ理由はあると思う。


 千佳がこの高校を選んだ理由は、花音が受けるからだ、周りから見たら友達が受けるから自分も受けるだなんてひどくバカバカしい理由だろう。

勿論、この先の大学受験の事や、家から通える距離も理由には入ってはいるのだが、一番の理由はこの舘倉花音という存在が頭の中にあったからだ。

 

中学二年生になったばかりの頃、何となく進路の話になった時、花音は既に何処を受験するのかを決めていた、理由を聞いたときはやっぱりなと思ったし、何となく放って置けなかったのだ。

 

「あ、そういえば千佳って今日暇?久しぶりに時間が空いたから、遊びたいなって思ったんだけど…。」

「…………。」

千佳が過去の事を思い出している時に突然今日の予定を聞かれる。

 何の脈絡も無く話題を振られた為、少し間が空いた。

 

「無理そうだったら、いいよ。また今度誘うから。」

少しの沈黙を、予定が既に入っていると勘違いした花音は残念そうにしながら言った。

 

「ご、ごめん、ちょっと考え事してて…今日は大丈夫だよ、でも家族で夕飯食べに行くから十八時半には帰らないと行けないんだよね、ちょっとしか遊べないけどいい?」


 花音の顔色を見て、慌てて返事を返した千佳は、それでも良いよと笑顔になった親友の顔を見てホッとした。

 

「でも、珍しいね今日は夕飯の買い出しとか智樹のお迎えとか大丈夫なの?」

舘倉家の事情を知っている千佳は首を傾げながら口に出す。

 

「うん。今日はお母さんが早めに帰ってくるから大丈夫なんだ。」

「そっかぁ、音ちゃん元気そう?」

「元気、元気。また今度遊びに来て、皆んな喜ぶよ。」


  千佳の言う音ちゃんとは母の事だ。因みに千佳のお母さんのことを、私は美幸ちゃんと呼んでいる。長谷川家とは家族ぐるみで仲が良い。


それから、他愛もなくお喋りして時間が過ぎていった。

 

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