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落し物届けます  作者: 雪飴
18/18

雇用契約書

 漸く仕事を達成し終えた花音が、あの家に向かったのは次の日。

 

 気持ち的には直ぐにでも報告しに行きたかったが、家に着く時間を考えると帰らなくてはいけなかった。

 弟には夕方までには帰ると伝えていたし、夕ご飯の準備をしなくてはいけない。なので行きたい気持ちをグッと堪えて家に帰ったのだ。

 

 家に着いてから、先に帰宅していた和樹に言われたのは、「何か良いことあった?」で、頼まれた事が解決した今の自分は浮き足だっていたのかもしれない。


 明日は早めに家を出ると決意をして、布団に潜った花音は久しぶりに気持ち良く眠る事ができた。


---------------------------------------------------------


 そして昨日決意した通り。花音は古い一軒家の前に立っていた。

 朝は爽やかな気分で起きる事ができ。いつもなら来る度に重く感じていた足取りも、解決した今なら全くそんな事は感じない。寧ろ早く来たすぎて仕方なかった。

 そう、やっと取り戻せるのだ。


 お約束の鳴らないインターホンを無視して、玄関の扉をガラガラと音を鳴らして開けた。

 鍵は毎回の如く掛かっていない……。


「ごめんくださぁぁぁぁい!!」

呼び出し方は、お決まりになりつつあった……。


 

「上がれ。」

 暫くしてから、いつも通りボサボサの髪をして眼鏡をかけた男は私を見るなり玄関ではなく、初めて家の中へと招き入れる。

 

「上がれ」と言われ、(玄関で話せばいいのでは?)と思うが、目で圧を掛けられれば逆らえない花音は渋々靴を脱いだ。

 (早く、帰りたいんだけどな私。)


 入った部屋は、(ふすま)を開けた瞬間に畳の匂いがしてくる。机が二つ程置かれその上にはパソコンや、資料が積み重なり。玄関にあった様に段ボールに入った色々な物が畳に乱雑に置かれていた。


「そこに座れ」

部屋の中に置いてある座布団を指差せば、言った本人は机を挟んだ向かい側の座布団へと腰掛けた。


「先ずは、仕事ご苦労だった。そしてほら、返してやるよ。」

 最初に出た言葉は労いの言葉で、ぽいっと投げられたのは御守りだった。

 

「え?あぁ。あ!ありがとうございます。」

 (びっくりした、何か理不尽な事言ってくるかと思った)

 これまで、何回か顔を合わせてきたが初めてかけられた優しい?態度に花音は戸惑い緊張してしまう。


「ぬいぐるみはちゃんと、元の持ち主に返却されたんだろ?正直、もうちょい日にちかかると思ったが早かったな」

「ちゃんと、みきちゃんって言う女の子に返しましたよ。住所伝えましょうか?」

 

 仕事がちゃんと出来たかを疑ってるのかと思った花音は、証拠が無いため住所を言おうとするが、疑って無いと首を振られる。


「それにしてもですね!物を返して欲しいなら名前と住所が分からないと困ります!探しようが無いんですよ!」


 ぬいぐるみが返せたのはラッキーでしか無い。偶々持ち主を知ってる女の子に会えて、偶々少年に関われたから解決したのだ。


「それで、次は何をすればいいんですか?それが終わったら後は一人で頑張って下さいね。」


 これで最後にしたいが、この男ともう一度だけ仕事を手伝うと約束してしまったのだ。


「そうだったな、次も探し物を届けてもらうが……今日からお前は俺の助手だ。」

「はい?」

「次も探し物を届けてもらう。」

「そこじゃ無くて!助手なんかになりませんよ!言う事を一つだけ聞くって、頼まれごと一つに決まってるでしょう?」

 

 それとは、話が違う!と反論するが目の前の男はどこ吹く風で、、


「もう書いてもらった。」

「誓約書の事を言ってるんですか?助手になる話とは関係ありません。」

「……違う。一つ言うことを聞くの条件をお前はもう果たしたんだ。」

「?」

「署名するっていうのも、一つ言う事を聞くに入るだろう?」


 話が分からない顔をする花音に、男はA4の紙を渡す。(これは、この前私が署名した紙?)


「こ、これ!!違う!!私が署名したのこの内容じゃ無い!!!」

 書かれていた紙には雇用契約書、この前見た内容と明らかに違う。(絶対、すり替えた!多分。一度突き返した時!!)


「こ、これは無効です!!」

 花音は強く抗議するが、目の前の男は笑ってにっこりこう言った。

「これから、宜しくな館倉花音。」

 

 

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