表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落し物届けます  作者: 雪飴
16/18

少年2

 弟と年が近そうだったからかもしれない、それにそんなに暗いと気になって、声を掛けずにはいられなかった。


「ねぇ、君大丈夫?」


 花音はもう一度声をかける。

ズボンが汚れるだろうに、四つん這いになっている男の子は、自分に話しかけられていると思わなかったのか、二回目の呼びかけで顔を上げた。


 頭に葉が所々くっ付いているのは、茂みのせいだろう、髪の毛はボサボサの酷い事になっている。

 何より酷いのはベージュの色をしたズボンで、砂や土が付いていて茶色く変色していた。


 ……これは確実に洗濯が大変だと、、この子の親は今日必死で砂や土を落とすのだろうと想像すれば、思わず心の中で合掌してしまう。


 汚れた服をじっと見ていたからなのか、急に話しかけてきた知らない女性に男の子は、警戒する。

 ジリジリと後ろに後ずさり、今にも走り出して逃げそうな雰囲気だ。


「怪しい人じゃ…………」ズルッ、ドサッ!

 怪しい人じゃないから逃げないでと、前に屈んでいた状態から、しゃがんで話そうとした時。

 肩にかけていた鞄がずり落ちて、中からぬいぐるみが飛び出してしまう。


「あ……!!!」


 咄嗟に上げた声は私では無く、目の前にいる少年の声だった。


 え?と思って男の子を見れば、目線は落ちたぬいぐるみに釘付けになっている。

 珍しい物でもないだろうに、そんなに興味があるのだろうか?


「これがどうかした?」

「それ!どこで見つけたの?」


 何やらぬいぐるみを見て、興奮し出した男の子は。警戒していた事を忘れ、私に詰め寄ってくる。


「どこで買ったかは、分からないんだ。ごめんね。」

()()()()よ!どこに落ちてたの!?」


 花音はてっきり、ぬいぐるみが何処に売っているのかを聞きたがっていると思っていたが、少年はぬいぐるみが何処に落ちていたのかを聞いていた。


「落ちていた場所も知らないんだ。落とした人の所へ届けようとしている所だよ。」


 興奮している男の子を、落ち着かせようとさっきよりゆっくりと話し、目を見ながら優しく微笑んだ。


「私は館倉花音(たてくらかのん)君の名前は?」

「……鈴木勇太(ゆうた)


()()()君だね、このぬいぐるみのこと知ってるのかな?」


 確実に何かを知っている。と狼狽える姿を見て思う。それにしても名前がゆうた。

 ゆーくんとは、この子の事ではないのか。


 知っているのか?という質問に中々男の子は答えない。喋り出そうとしては口を閉じ。そしてまた開き、同じ動作を繰り返すのを辛抱強く待つ。


 花音は急かさなかった。弟がそうだったから、何か悪戯をした時や悪い事をしてしまった時に問い詰めると、中々口を割らない。


 だから、急かして問い詰めるのではなく。目をじっと見つめて向こうから話し出してくれるのを待つのだ。


「……が、……んだ。」

小さな声でボソボソと、呟いた言葉は所々聞こえない。

「ん?」

何て言ったのか、よく聞こえなかったので優しく聞き返す。


「ぼくが、盗んだ。」

二回目に言った言葉は、聞き取ることができた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ