少年2
弟と年が近そうだったからかもしれない、それにそんなに暗いと気になって、声を掛けずにはいられなかった。
「ねぇ、君大丈夫?」
花音はもう一度声をかける。
ズボンが汚れるだろうに、四つん這いになっている男の子は、自分に話しかけられていると思わなかったのか、二回目の呼びかけで顔を上げた。
頭に葉が所々くっ付いているのは、茂みのせいだろう、髪の毛はボサボサの酷い事になっている。
何より酷いのはベージュの色をしたズボンで、砂や土が付いていて茶色く変色していた。
……これは確実に洗濯が大変だと、、この子の親は今日必死で砂や土を落とすのだろうと想像すれば、思わず心の中で合掌してしまう。
汚れた服をじっと見ていたからなのか、急に話しかけてきた知らない女性に男の子は、警戒する。
ジリジリと後ろに後ずさり、今にも走り出して逃げそうな雰囲気だ。
「怪しい人じゃ…………」ズルッ、ドサッ!
怪しい人じゃないから逃げないでと、前に屈んでいた状態から、しゃがんで話そうとした時。
肩にかけていた鞄がずり落ちて、中からぬいぐるみが飛び出してしまう。
「あ……!!!」
咄嗟に上げた声は私では無く、目の前にいる少年の声だった。
え?と思って男の子を見れば、目線は落ちたぬいぐるみに釘付けになっている。
珍しい物でもないだろうに、そんなに興味があるのだろうか?
「これがどうかした?」
「それ!どこで見つけたの?」
何やらぬいぐるみを見て、興奮し出した男の子は。警戒していた事を忘れ、私に詰め寄ってくる。
「どこで買ったかは、分からないんだ。ごめんね。」
「知ってるよ!どこに落ちてたの!?」
花音はてっきり、ぬいぐるみが何処に売っているのかを聞きたがっていると思っていたが、少年はぬいぐるみが何処に落ちていたのかを聞いていた。
「落ちていた場所も知らないんだ。落とした人の所へ届けようとしている所だよ。」
興奮している男の子を、落ち着かせようとさっきよりゆっくりと話し、目を見ながら優しく微笑んだ。
「私は館倉花音君の名前は?」
「……鈴木勇太」
「ゆうた君だね、このぬいぐるみのこと知ってるのかな?」
確実に何かを知っている。と狼狽える姿を見て思う。それにしても名前がゆうた。
ゆーくんとは、この子の事ではないのか。
知っているのか?という質問に中々男の子は答えない。喋り出そうとしては口を閉じ。そしてまた開き、同じ動作を繰り返すのを辛抱強く待つ。
花音は急かさなかった。弟がそうだったから、何か悪戯をした時や悪い事をしてしまった時に問い詰めると、中々口を割らない。
だから、急かして問い詰めるのではなく。目をじっと見つめて向こうから話し出してくれるのを待つのだ。
「……が、……んだ。」
小さな声でボソボソと、呟いた言葉は所々聞こえない。
「ん?」
何て言ったのか、よく聞こえなかったので優しく聞き返す。
「ぼくが、盗んだ。」
二回目に言った言葉は、聞き取ることができた。