少年1
いや、本当に大丈夫か?クマの記憶って……。100人
居たら100人に頭の中を心配される発言だと思うけど…。
あの男が言う助言を信じても良いのか、揶揄われているだけなのか、、。
それでも他に探しようが無いのでクマの記憶を頼りに?するしか無い。
「署名しない方がよかったよね……。」
歩きながらポツリと後悔が口から漏れるが、あの男に口では敵わないと諦める。何を言っても言い返してきそうだし。
私が名前も分からない傍若無人男とのやり取りを、思い出していた時に、御守りと署名の件で頭の中がいっぱいで、特になにも思わなかったが。あれ?と今になって一つの疑問が浮上した。
いいからそこに名前を書け
"館倉花音"
「私、自分の名前教えたっけ?」
考えてみるものの、名乗った覚えは全く無い。もしかしたら知らない所で会っていたのかも?だからあんな態度を取ってきたのだろうか。
「んんーーー。」
頭の中を捻っても、関わった記憶が見つからないので、ひとまず頭の片隅に留めておくことにし、ゆーくんと言う少年の探索に集中する事にした。
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公園まではそれ程遠い距離では無いのだが、日が落ちてきているので、また明日探しに来なければいけないかもしれない。
「それにしてもなぁ、名前だけじゃ分かんないしなぁ」
何だか、振り出しに戻った気分になってしまう。このクマの落とし主は、見つかってるのに。男の子を探すなんて、遠回りする必要があるのだろうか?
今日会ったちーちゃんという女の子だって、運で会えたものなのに……。
(クマに聞いてみる?)
「クマさん、クマさん。ゆーくんって言う男の子は誰なの?」
「……………………」
言ってみて、花音は死ぬほど後悔する。
自分は、疲れているのかもしれない。傍から見たら、、女子高生がぬいぐるみに向かって話しかけるやばい図になる。
(それもこれも、傍若無人男がぬいぐるみに聞け、なんて当たり前の顔して言うから!!
喋るわけないよね!だってぬいぐるみだもん!)
顔から火が出るほど恥ずかしかったが、救いなのはそのやばい姿を誰にも見られていない事だった。
周りを見れば公園に残っている子どもの数は、昼間と比べると少なくなっている。日はまだまだ明るいが、後一時間もすれば夕焼けが見えてくる筈だ。
やはり今日は切り上げて明日探す事にしよう。花音にも夕飯の準備が待っているのだ。
冷蔵庫の中身は何が残っていただろうか?花音の頭の中で、夕飯の事を考えながら公園を歩くと、視界の端で何やら気になるモノが目に入る。
公園を囲むようにした茂みに頭を突っ込んでいるのだ、見て分かるのは暗いという事で、その子の表情が暗く焦った顔をしている。
男の子の雰囲気を見るなり、声をかけた方が良さそうだと判断した花音は、声をかけた。
「大丈夫?」