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落し物届けます  作者: 雪飴
13/18

助言

「はぁぁーーーっ。」(嫌だ)

「はぁぁぁーーーーっっ。」(行きたくない)

 歩くたびに、溜め息を吐いてしまう。そこに行く事をとても拒否したかったが、行かない選択が無いという事を私自身理解していた。


 車が行き交う道路や、人が居て騒がしかった場所から、奥へ奥へと進む度。段々と周りの音が静かになっていく。


 変な看板がある古い一軒家に向け、重い足取りで歩けば、、時々家同士の隙間から流れてくる風が、前髪を乱していった。



 この前来た時と同じ家。同じ看板。

 カチャカチャッ。

 ……鳴らないインターホン、、。

(直しとけよ!)と誰にも届かない突っ込みをする。


 そして、

 ドンドンドン!!

 ……扉を叩いて(殴って)も出てこない主、、。

(皆さーん、ピンポンダッシュし放題ですよー。)

 子どもには人気だろうが、金にならない売り文句を思いついた。頭の中ではスーパーの激安セール中の売り場が展開されている。


 待っていても、何も起こらない時間に現実逃避する事を諦め中に入り、大きく息を吸い

 ――スぅぅぅ……


「ごめん!!!くださぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」

 吐き出した言葉に、近所から苦情が来ない事を祈った。


 ドタドタと走ってくる音が聞こえ、出て来た男は

「煩ぇぇ!!近所迷惑だろうが!!!!」

私と負けず劣らずの声量で登場したのだった。


―――――――――――――――――――――――――

 

「不法侵入の次は、近所迷惑か、、。」

 私を見るなり、顔をしかめ迷惑そうな顔をする男だが、迷惑被っているのは私の方だと主張したい。


「すみません。インターホン押しても鳴らないですし、ドアを叩いても出てこなかったんで!」

 お前のせいで不法侵入も、近所迷惑もする事になったんだぞ!と伝えてみるも、


「それで、?何しに来た。」

 男は、私の言い分をシカトする。


「何しに来たって……」

(助言をもらいにきました?助けてもらいにきました?ぬいぐるみを受け取ってくれません?)

 どう話し出そうか考えずに突撃してしまい、言葉に詰まる。


「……何もないなら人に迷惑をかけるな。」

言葉に詰まる私の姿を一瞥し、消えようとするのを引き止める為、目の前の男が着ているTシャツを引っ張り


「こっ、困ってます!!」

咄嗟に言った言葉がこれだった。


 主語がなさすぎるその言葉に、一から説明しろと。話を聞いてくれる姿勢になった男に、今の状況を説明する。

 頼まれた(押し付けられた)ぬいぐるみの落とし主を見つけたのだが、女の子がどうしても受け取ってくれない事。ぬいぐるみを届ける事ができずに、そのまま一旦預かって来た事を説明した。


「……というわけなんですが、、どうすればいいですかね?」

 自分では、何も良い考えが思い浮かばず。本来?の仕事の主からの助言を期待する。


「知らねーよ。クマに聞いて見るしかない。」

「クマにどうやって聞くっていうんですか!?この前は、公園を探せって言ってくれたじゃないですか。」


 てっきり、こんな事態になった時の為のマニュアルとか。その場合はこうするんだ!みたいな経験上の、助言的な何かを期待していた私はガッカリする。


 (この人は、これが仕事では無いのか?それにクマに聞けって、聞けれる物なら聞いてみたいよ!)


 頼みの綱が切れてどうしようか。と考えている私の目の前に

「ん。」

 男が片手を突き出してきた。

 何をしているのか分からずに、不思議そうな顔をして見せれば

「ちっ。ぬいぐるみ」

 舌打ちをしてくる。

 


 (舌打ちしなくても良くないですか!?)

心の中で思ったが、イライラした顔を表に出さない様どうぞと笑顔で渡した。


 受け取ったぬいぐるみをどうするのか見ていると、両手で触って目を閉じ出す。

 その状態から少しも動かないので、まさか眠った??と不安になり声を掛けようとしたら


「公園か、公園の周り。ゆー君っていうガキを探せ。」


 目を開いて、ぬいぐるみを突き返してきた。

 (公園は、今日二つ目に行った公園の事?ゆーくんって男の子は、どっから出て来た情報なんだ。)


「ゆーくんって言う。男の子を探せば解決するんですか?ゆーくんって何処の誰何でしょうか?」


「ゆーくんって言う、名前しか分からん。どこの誰かも俺が知るわけない。」


 何処の誰かも分からない子の名前を、何で口に出したのか、分からないのはこっちの方で。この男の妄想と会話をしているのか?揶揄(からか)われているのではと思い始める。


「あの……それじゃあ、どうしてその子を探せなんて言うんですか?」


 揶揄われてたまるかと、疑う質問をすれば、


「どうしてとか、何処の誰だか言われても分かんねーって言ってるだろうが。そのクマが記憶してるのがその情報ってだけで、責めるならそのクマを責めろよ。」


  余計分からない回答が返ってきた。


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