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落し物届けます  作者: 雪飴
12/18

予想外の事態

 予想だにしていなかった言葉に驚いたのは、私だけでは無く。女性の表情を見れば、娘の発した言葉に不意打ちを突かれている。


「これは、みきの物でしょう?」

 ぬいぐるみを持ち、これが証拠!とリボンの刺繍を

娘に見せる。

 それでも、違う違うと頑なに首を振る少女に困った顔を見せた。


「わたしのじゃないもん!みきのじゃない!!」

「いい加減にしなさい!どうして嘘を吐くの!?」


 それまで、優しく言い聞かせようとしていた母親が、娘の態度にとうとう痺れを切らした。

 嗜められた少女はそこからヒートアップして行く。


「ちがうもん!ちがうもん!もとの所にかえしてきてーーー!!うわぁぁぁぁん!!」

 

 泣き出した事により、説得するのは無理だと思ったのか、落ち着いたら娘に渡しますので、とお礼を言いドアを閉めようとするも、ぬいぐるみを家に入れる事すら許さないらしく。

 母の手から、ぬいぐるみを奪い。ドアの外に放り出す始末。


 どんなに怒られても態度を変えない少女に、今日は一旦預かりましょうか?と提案する他なかった。

 

―――――――――――――――――――――――――


 あれから家を後にして、駅近くに戻ったが。予想外の事態に、どう対処すればいいのか分からない。

 ドッと疲れが押し寄せてきて、お昼を食べていない事に気付き、気分転換を兼ねて、遅めの昼食を取る事にした。


 入ったお店は、お昼のピークを過ぎたからかもしれないが、土曜日なのに人が少ない。

 店内の様子を(うかが)えば、店員がいくつかの席に置いてある食器を片付け、テーブルを綺麗に整えている。


 「お好きな席にどうぞ」と、にこやかな笑顔を見せた店員に言われ、四人がけのソファーの席へと移動した。

 一人で四人がけの席に座るのは、普段だったら遠慮するのだが、気持ち的に疲れてしまった今の気分は、椅子ではなく、ソファーに座らせて欲しい。


 机の上にメニューを広げ、数分迷ってから店員を呼んで注文した。

「デミグラスのオムライスを一つ。」



 人って、お腹が満たされると落ち着くのかもしれない。お腹が空いていた時より、満足した方が頭が働きそうだ。少なくとも私の今の状態がそうだ。


 さてさて、と食べ終えた食器を端に寄せ、今回の問題をどう片付けたらいいのか、冷静になって考えてみる。

 

 まず、当初の目的のクマのぬいぐるみの持ち主は見つかった。

 少女は、自分の物では無いと言っていたが、母親の態度と、"Miki"と書いてある刺繍と少女の呼ばれていた"みき"という名前が一致している。

 (お母さんか女の子か、どちらかが嘘を付いているとしても、お母さんは絶対に違うだろう)


 問題は、自分の物であるぬいぐるみを、頑なに拒否する少女だ。何か理由があるから受け取らないのだろうか?

 

 先ほどの、少女の言った言葉を思い出そうとするが

「わたしのじゃない」や「もとの所にかえしてきて」

 という事しか言っていなかった気がする。


 (う〜〜ん。解決策が見いだせない……。)


「助けを求めようか……。」

(誰にだよ!)と自分で自分に突っ込むが、頭の中に浮かんできた人物は、一人しかいなかった。

 

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