表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
落し物届けます  作者: 雪飴
10/18

手がかり1

(明日は、何処を探そう)

 弟と共に家に帰宅し、部屋に戻ってから行き詰まってしまった。

 クマのぬいぐるみを手に持って考えながら、改めてこのぬいぐるみを観察してみる。

 

 茶色いクマのぬいぐるみは、珈琲と牛乳を混ぜ合わせた、カフェオレみたいな色で。赤いリボンが首に目立つ様に縫い付けられている。

 落とされてからまだ、日にちが経っていないのか、汚れは殆ど見当たらず綺麗だった。


(女の子や子どもが好きそうな、可愛いクマだよなぁ。

 ……ん?)


 ぬいぐるみを観察していた時、赤いリボンに目立たぬよう、端にピンクで刺繍してある文字を見つけた。


 "Miki"

(みき?)

この持ち主の名前なのか、クマの名前なのか分からない少しガタついている刺繍は、売られた時から付いている物では無く。買ってから誰かが縫った感じがする。


 一つ手がかりが増えた。

 でもせめて、クマがどこに落ちてたかぐらいの情報が欲しい……

 交番も駅も周ってしまったのだ、明日になったら交番で落とし主の情報が入ってくるかも知れないが、、


 (早く見つけ出して、パパッと終わらせて。御守り取り戻して、心置きなく生活したい……不法侵入者の汚名も無くしたい……。)


 現状を嘆いていると、あの眼鏡の男が放った言葉を思い出してしまいそうになる。


 何処を探したらいいとか、教えてくれても良かったのでは無いだろうか、あの男が喋ったのは不法侵入の事と仕事を押し付ける内容と……


「公園。」

 ぼそっと口から、言葉が出た。

  (そうだ。確かあの時、自分が何処の誰に届ければいいか聞いた時、あの人はそれだけ言って消えて行った。)


 公園を探せという事だろうか、なぜ公園なんだ。

"こうえん"では無く、"こうばん"と聞き間違えたのかも知れない。

 ……一文字違いだしね、、

  否定をしてみるものの、もしかしたら。あるかも知れないと淡い期待もしてしまう。


 明日の捜索場所が決まった。


―――――――――――――――――――――――――


 黒色のパンツに、ロゴが入った白Tシャツ。丈が長めで水色のストライプ柄のブラウスを羽織り、鏡に全身を映す。動くなら、髪の毛を結んだ方がいいかもしれない。


 学校がお休みの本日は土曜日。昨日より時間がたっぷりあるので、気合を入れる。


「あれ?姉ちゃん。何処か出かけんの?」

 階段を降りてリビングに向かえば、弟の和樹がソファに座ってテレビを見ていた。


「うん、外に出てくるね。夕方には帰ってくるけど、和樹今日は、ずっと家?お昼ご飯どうする?」

「俺も、もう少ししたら遊びに行ってくる!!お昼ご飯は冷蔵庫にある物テキトーに食べる!」

「分かった!和樹家出る時TV消して、鍵かけて家出てね!」


 母は、既に仕事。智樹は保育施設で預かってもらっているので、今は家に自分と和樹の二人しかいない。

 自分ももう外に出て行くので、最後に残る弟に注意する。

「分かってるって!行ってらっしゃーい!!」


 此方を振り向かず、TVに視線を集中させながら。返事よく我が家の長男は長女を送り出した。


 雨が降ったのはいつだったか、ここ最近の天気は、晴れが続いている。

 電車に揺られながら、窓から見える空は快晴だ。

暑くも無く、寒くも無い今の時期がちょうど良い。

 


 駅から降りて、ぬいぐるみを入れた鞄を持ち、歩き出す。

 目指す場所は公園だが、スマホのマップを見ると駅から近い距離に、公園が2つある。

 その内の一つは黒猫と出会ったあの公園だった。


 

 ……結果的に言うと、向かった一つ目の場所では何も成果が無かった。

 公園に居た遊具で遊んでいる子どもや、会話に花を咲かせているお母様達、散歩しているお婆さんに聞いても、全員に心当たりはないと首を振られてしまう。


 (行ってみるか、あの公園に)

 もう、今日は一日中聞き込みをする!と家を出る前に意気込んでいたので足取りを強くし前に進む。


 例の公園に着いてから、さっきと同様にやる事は変わらない。

 ここは前の公園より、広い分。土曜日という事もあって人が多かった。


 砂場で泥だらけになりながら、遊んでいる子。

ブランコには、順番待ちができず。お母さんに説得されているのであろう子どもの姿が見える。


 花音は小さい頃、遊具の中でもブランコが好きだった。地面から離れた時の、何処までも飛んで行けそうな、体の"ふわっ"と浮く感覚や、

 まだ上手く漕ぐ事の出来ない、背中を押してくれる親の手の安心感が好きだった。


 最近は、自分自身がブランコに乗る事もめっきりなくなり、公園に来る事も智樹の付き添いばかり。

 今度、自分一人だけで公園に行ってみるのもいいかもしれないなと思いながら、砂場まで歩いて行った。


 そして、本日何十回目かの質問をする。

 

「この、クマのぬいぐるみに心当たりありませんか?」



 


 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ