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2.出会い

「おや、君がアルネ君かい?」


高級感を感じる家具で揃えられたお父様の部屋の雰囲気にはそぐわない女性が立っていた。

こちらを振り向いた女性が私に問いかける。

初対面のはずだけど、何故この人が私のことを知っているのか?

そんな疑問を持ちながら質問に答える。


「そ、そうですけど、あなたは?」


「やっぱりそうか。初めまして、私はレリア・フレイテル。君のお父さんであるハルト・アルヴァーンの古い友人、と言ったところかな」


「まあそういうところだ。こいつは世界中を旅しているがたまにこうしてイレーヌに戻ってくるからな。その度に俺のところや昔の友人のところに訪ねてくるんだ。それで、今日は何の用だ?」


「旅が落ち着いてきたからね。私もそろそろ弟子でも取ろうと思っているんだ。それにアルネ君が『無属性』と聞いたからね。苦労していると思ったから助けてあげようと思ったのさ」


胸がチクリと痛んだ。

まただ、『無属性』と聞くだけでこうだ。

二年前に絶望したはずなのに。抗ったはずなのに。

本を読んだら魔法について知識がつき使えるようになるかもと思った。

結局覚えたのは魔法の名前や歴史だけ。

魔法が使えなくても教えてもらった剣術で戦えるはずだと思った。

結局倒せたのはスライムだけ。

それなのに、まだ私の心の奥底は魔法を使うこと、憧れに近づくを諦めていない。

そのことに気づいてしまって余計に悲しくなる。

苦い記憶を思い出して黙っていると、心配したのかレリアさんが話しかけてくる。


「誰でも魔法を使いたい、そういう憧れを持つものさ。しかし、魔力検査という絶対的な適正判断というものがあるため、憧れを捨ててしまうものもいる。だが、君は本当にそうなのかい?その目は、諦めず足掻いている者の目だ。私はそういう子が大好きでね。君の師匠になりたいと思っているんだ」


子供の頃は誰だって魔法を使って強くなりたい、そう思うはずだろう。

だけどそのほとんどが現実に気付き、諦めてしま雨のだろう。

私もそのうちの一人だ。

なのに、なんで。

なんで、魔法が使えるかも、なんて思わせるんだ。


「......今更、追ってももう追いつけないです。それに、『無属性』である以上、私はもう魔法を使えない。もう私は諦めました。だから、もうあなたも諦めてください」


他の魔法が使える子と単純計算で二年もの差がついてしまっている。貴族で小さい時から魔法に関する勉強をしている子だったらもっと差がついているだろう。

ここから追いつくのは大変な道だ。

何より、魔法を使えるかもという希望からまた絶望に落とされるのが怖い。

だったら、最初から諦めていた方が楽だ。

いいんだ。これでいいはずなんだ。

そう割り切っているのに、胸の痛みが消えない。


「高い壁に、絶望に抗うのが若者だ。それに、私も君に教えたくなったからね。君は、まだ魔法を使うという夢を、憧れをまだ諦めてはいないはずだ」


レリアさんが指摘してくることは正しい。

実際私は魔法を使うことを諦めてはいない。

でも怖いんだ。絶望を味わうのが。

もう一度、あんな思いをするのなんて嫌なんだ。

涙を浮かべながら反論してしまう。


「何度も言わせないでください...!私は、もう魔法が使えない!無力で守られて生きていくしかないんです!」


「......ふうん。そうか。では今日はこれで帰るとしよう。ハルト、紅茶美味しかったよ。ありがとう。アルネ君もまた会おう」


そう言ってレリアさんは帰って行った。

部屋の中には涙を浮かべている私と、困った顔をしながら頭を掻いているお父様だけが取り残された。

そんな私を見て、お父様が話しかけてきた。


「あー...アルネ。レリアのことを責めないでやってくれないか。あいつも悪気はないし、お前を助けたいという思いは変わらないはずだ。無理に魔法を使えなんて俺は言わない。それはお前の人生だ。お前が後悔しない道を選んでいけばいい」


...分かってる。

レリアさんに悪気がなかったこと、私がまだ本当は夢を諦めきれていないことも。


「ありがとう...ございます...。だけど、もう少しだけ時間をくれませんか」


ただ二言そう言うと、お父様は満足したのか部屋を出ていった。

...私はどうしたいのだろう。

魔法が使えないのはもう確定している。

だけど、どうしても魔法を使って人を助けたい。

そんな矛盾している夢なんて叶えられるはずすら無いのに。

あの人を一度だけ信用してみるのも手だろうか。

だけど、あの絶望を味わうのが怖い。


「...ああ。私は一体何が怖くて、何を目指したいんだろうな」


その一言は雨が降る音で少しずつうるさくなってきた部屋の中でもいやに響いたように思えた。

諦めて楽になりたいという思いと、もう一度だけ追い求めたいという思いがぐちゃ混ぜになって少し気持ち悪くなって私は自分の部屋に戻った。

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