第6話 散歩の提案
シオンが持ってきた朝食を食べ終わった後は、久々に散歩に出かける事になった。
おしのびで家の近くの領地をぐるっと回るだけだが、大切な事らしい。
何よりずっと家の中にいるのは暇だったから、ちょうど良い。
他の家の貴族もこの年代から、外に出してもらえるようなので、これからどんどん外出の機会が増えるだろう。
身支度をしながら、シオンに向かってこれから出かける場所の事を尋ねた。
「ラックス様、今日はキルトスの町まで行ってみようと思います」
「きるとすはたしか……いえのにしにあるまちだったな」
「はい、そうです。さすがお坊ちゃま。前に私が説明した事をよく記憶されていますね」
俺の家の東西には二つ町があって、東にはラウンドという町が、西にはキルトスという町が存在している。
どちらものどかな景観の町で、貴族のお忍びの保養地としてよく知られているらしい。
「キルトスにはラックス様の好きな本もたくさんありますからね。良い物があったら、買って帰りましょう」
「そうだな」
俺は別に読書家でも何でもないのだが、暇をもてあましている状況ゆえによく本を読んでいる。
それゆえ、他の物達からは読書が好きなインテリ坊ちゃまだと勘違いされているようだ。
俺としては外で走り回って遊ぶのが好きなので、そういう評価がつくのは少し不本意であったりするのだが。(誕生日プレゼントとして本を贈られても、気持ちは嬉しいが、ちょっと戸惑うし……)
だがそれも、歳をとって外出の機会が増えれば、なくなっていくだろう。