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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

洗脳

作者: 熊太郎



「俺が病気だって言える根拠なんかあんのかい?」

そう尋ねた時、母はピクリとも動かなくなっていた。



父は国会議員、母は教師のかなり裕福な家庭に僕は生まれた。小さい頃から僕は正解を教えてもらっていた。

保育園に入った時、近くの公園で友達と鬼ごっこをして遊んでいた、そしたら父が現れてこう言った。

「そんなことしてる暇があるなら家に帰って勉強しろ」

僕は必死に抵抗した、すると父は僕の腕を引っ張り思いっきり何度も殴られた。

これが正解なのだと僕も理解した。


小学校に上がった僕は毎日毎日勉強した、ただ僕はクラスメイトとの関わり方がどうも分からなかった。そんな僕をクラスの人気者はいじめてきた、数人に殴られて腫れた顔で僕は母にいじめられたことを言った、すると母はこう言った。

「あんたにも原因があったんでしょ」

原因?そんなもの...なかったはず...だけどお母さんが言うなら...

僕はこれが正解なのだと理解した。


中学生になった時、父は交通事故で死んだ。悲しかった、あんなにも正しく僕に正解を教えてくれた父はもういないと思うと不思議な気持ちだった、しかし涙は流れなかった。


高校に入ると、僕は異性に目がいくのは普通のことだと教わった、それは僕が教えられてきた「異性は不潔」という概念とは全く違った。僕の中で正解とは何なのかわからなくなってきていた。

高校2年の夏、僕は気になる子がいた、その子はあまり裕福な家庭ではなかった、その子は僕に優しくしてくれた。その子は両親から自由に飼われていた。そして、両親に教わった正解とは違う正解を教えてくれた。僕は完全にその子に魅かれていた。


ある日、母に僕は伝えた。

好きな子ができた事を。


母は嬉しそうだった、意外だった。

母は「その子の家庭は?」と笑顔で聞いてきた。

裕福ではない、[ふつう]だと伝えた。

すると母の笑顔は一瞬で消え、その子はやめなさいと言われた。

僕は初めて母に嫌だと反抗した。

これが僕なのだと、恋をするのがふつうなのだと僕は言った。

「何を言ってんの、目を覚ましてよ...」

母は僕にそう言った。理解ができない?そんなの僕も一緒だ。

そしては母は最後に「あなたは病気なんだ」とぼそっと泣きながら呟いた。

僕は母を殴った、何度も殴った。

何度も何度も何度も何度も殴り続けた。

僕は殴るのをやめて、「俺が病気だって言える根拠なんかあんのかい?」

そう尋ねた時、母はピクリとも動かなくなっていた。


これが本当の僕なのだ、今までの時間は君に巡り合うためだったのだ。

お父さんもお母さんも君の偉大さ、巨大さを理解する頭脳を与えてくれたんだ。

あぁ、僕はなんて幸せな人間なんだ、お母さん...今僕はいうよ、心から幸せだと。


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