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アイビーリライブ  作者: 誉 ロウ
9/21

始めましての再会

"動物は慣れることが出来る生き物だ”



“睡眠”


全人類に平等的に与えられた機能である。

どんなに賢かろうが、運動センスがあろうが、睡眠は健康体を維持する上で

きっても切り離せない存在だ。


真の天才は眠らない、というが彼らはそれ故に短命で命を落とすことが多い。

かの有名なナポレオンもその被害者と言っても過言ではない。


レイはこの機能を好きで、嫌ってもいた。

意識を失ってしまえば、嫌なことも何もかも忘れることが出来る。

しかし、次に目が覚めたときにはそれらを再認識させられる。


「いっそ、起きたらテスト当日の朝に戻ってたりしねえかなあ。」


張ったヤマがことごとく避けられ、赤点確定、大惨敗を喫したテストの日の夜、

ベットに入り、縮こまりながらレイは妄想に耽った。


「んなわけ、あるかよ。俺の努力不足だ。」


夢見る健全な男性ならば一度は考える“あの時に戻れたら”。

そんな青臭い妄想をする自分が馬鹿らしくなって鼻で笑う。


「寝よ寝よ。明日どうせ追試だしな。」


毛布の位置を再度調整し、反対側へ寝返りを打って目をつぶる。

波打つ意識の波をゆっくり直線に戻すイメージを頭の中で浮かべる。

そうすると、気が付いた時には朝になっている。最近はこの方法に頼っている。


「でももしも、そんな力が手に入ったら。」


最後に波打つ意識を鎮める直前にそんな考えが脳裡を駆ける。


――最高だろうな。

それを最後に、レイの意識は濃い霧の中へと沈んでいった。











レイの目覚めは人と比べて良い方だと自負している。

目覚めの瞬間からフル覚醒とまでは行かなくとも、起きて数分には意識を整えられる。


レイの感覚が最初に脳に“固い”と告げる。

それを始まりに、様々な情報が脳内に湧き出てくる。


「何が最高だよ、俺。」


今しがた、見た夢に目を開きながら悪態を吐く。

天井の木目が視界に映り、記憶を探る。あまり時間を掛けず、

自分がどこにいるのか大方の予想は付いた。


「酒場、か。」


腹筋に力を入れ、それだけでは不十分なので手で補助を入れて起き上がる。


「痛っつ。」


“固い”の意味を自分が寝かされていた椅子を見て理解する。

体重の負荷が大きくかかっていた部分が電気のような痛みで不調を訴える。

その部分を自分でもみほぐしながらボーッとした頭を覚醒へと導く。


「倒れちまって、寝かせてもらっていた。そんな所か。」


今の状況と信じがたい記憶を照らし合わせてそう結論付ける。

肺の中の酸素を全て吐き出し、新しい空気を体に取り入れる。

そうすると、若干引きずっていた取り乱した感情も無視できるまでには回復した。


「閉店後。いや、俺がぶっ倒れたせいでみんな帰っちまったってこともあり得るな。後者なら本当に申し訳ねえ……」


すっかり人気が無くなり活気が遠のいた酒場にはレイの呟きがよく響く。

それとは別に、一定周期で音を刻むものにレイは焦点を当てた。


「この子、看病してくれたのか?」


レイが座る椅子の三つ隣に伏してすーすー、と寝息を立てて睡眠を取る彼女が居た。

一撃で見惚れたその表情はテーブルに伏せていて見えないが、

ローブから垣間見える綺麗な亜麻色の髪は間違いなく彼女だ。


「なんで俺はこんな超美少女とアイツを見間違えんだよ。」


強制的に現実から引き剥がし、耐え難い恐怖と訳の分からない声を投げつけて来る

レイ自身が“影炎”と名付けた影のバケモノ。

今でも思い出すだけで背中に悪寒が駆け巡る。


気が動転したレイはあろうことか彼女と見誤ってしまった。

先ほどの取り乱しを振り返り、正気ではないと自分を罵る。


「まあ、なんにせよ。」


目の前の状況と、過去の経験がにわかに信じがたいことを現実とする。


「俺の異世界能力はタイムリープ系、ってことか。」











「すー、すー、すー。」


聞いてるだけで何だかほっこりとする寝息を聞きながら、レイは思考を回す。


タイムリープ能力。文字通り同じ時間軸を何度も行き来することを可能とする力。


物語中でこの手の能力を持つ者は確実に話のカギを握り、

主人公であれば最強クラスの力を発揮し、敵であればラスボス級の代物。

幾つもの失敗を事が起きる直前に戻って虚実のものとし、たった一回の成功を現実として

次に進むことが出来る。


レイの中で、ファンタジー世界での最強能力トップ3に入るこの力を手にした

レイの心境はやや複雑であった。


「まず、自分のタイミングで使えないって欠陥品にも程があるだろ。」


やるせなさから、手をにぎにぎするレイ。

この力の最強たる所以は、自分のタイミングで使えること。

敵に殺されては時間の戻りようも無いし、戻るべき時に戻れなければ

確かめたいことも確かめられない。


故に自分の能力を欠陥品、と結論付けるしかない状況にため息が零れる。


同じ場面を目の前で三回ほど繰り返された。

彼女の最初の言動は「もう、店長。」から変わらなかったことに確信を付け加える。


しかし、二回のタイムリープにレイの意志は一度も介入していない。


「何か、切っ掛けになる共通の言動があれば、」


記憶を探るが、確信に至るものは思いつかない。

一度目は彼女を中途半端に見失い、二度目は“影炎”に取り乱した。

喜怒哀楽が一気に詰めこんだようなこの時間軸に何か共通の言動があったとは思えない。

しかし、二回のタイムリープで唯一、共通するところが一つだけ。


「“影炎”。」


少しためらい、喉に引っ掛かった痰を飲み込んで、その名を口にする。

背中に冷ややかな感触を覚えながら引き続き考える。


「一回目は引き剥がされたって感じか。」


瘡蓋を治る前に無理やり剥がしたあの感じを何百倍ものスケールでやられた感触。


「今でも思い出すと吐き気が止まんねえよ。」


こみ上げてくるものを奥で無理やり押しとどめ、

舌に酸っぱさを感じながら思考を再開する。


ただ、水平線が広がる無機質な黒だけが存在する場所。

そこで出会ったのは、影のように蠢き、陽炎のように揺らめくバケモノ。

それはノイズがかかった声で絶え間なく恐怖を投げつけてくる。


「確か二回目は気が動転した俺をエリさんが止めてくれて……」


無駄のない構えからジャブの一閃。あの巨躯が一切のよどみなく動いたのだ。

眉間が砕け散るとはまさにあのこと。

k-1やボクシングの生中継で見たチャンピオンの磨き上げられた動きと変わりない。

いや、それ以上に綺麗で洗練されていた。


「喧嘩は絶対に売っちゃダメだな。ってか何者?あんなのがゴロゴロいたらさすがに詰むんだけど。」


王国騎士団、とまでは聞いたが、あんなのがゴロゴロいるとすれば思えない。

いや、思いたくない。と心でそう言った。


「ちょっと脱線してんな。んと、そのあとは“影炎”さんと二度目のご対面っと。」


あまりの店長の強さに論点が本題から浮気するが、無理やり引っ叩いて振り向かせる。


袋のネズミ状態で繰り出した泣き落としが効いた、と思ったら後ろに居て、何を感じる暇なく飲み込まれた。


「上げて落とすってとこをナチュラルにやってんなら性根は最悪だな。今時、そんな商法流行んねえぞ……」


もちろん、“影炎”に考える頭や意識があればの仮定の話だが、

レイ自身はあると踏んでいる。理由は勘だ。


「シックスセンスだとかいうオカルトチックなもんを信じるのは眉唾もいいとこなんだが、」


勘が告げる。あれは意志を持つ何かだと。

そんな存在と、混ざりあう感覚を味わった。


「自分っていう世界を無神経に荒らされまくったな。あれも相当な胸糞もんだな。」


線引きしていた決して犯してはならないラインを

いとも簡単にまるで、元から無かったかのように踏み荒らされた。


そんな悲惨な過去たちに一つ長いため息を吐く。


「とりあえずまとめるとだ。俺の能力はタイムリープ系、発動条件は今のとこ不明で、力が発動した時には“影炎”っていうペナルティを食らう。この能力に回数制限は今のところ怪しげな数字も、命が減る感覚も無いので希望的憶測から決めると無いと判断する。」


「自分でまとめといてなんだが、本気で欠陥品だな。まさか、この世界って使う人間によって能力の質が変わる系のやつか?だったら中途半端な俺には絶望じゃねえか。」


自分の意志では能力を発動できず、発動した際には性悪なペナルティーが待っている。

指を折ってポイントをまとめていたレイだったが、投げ捨てるように指を解いた。


「でもせっかくの能力だ。欠陥品だとしても名前を付けなきゃあな。」


頭を悩ませて、頭にありったけの言葉を思い浮かべるがどれもしっくりこない。

「ん?まてよ?アメミヤ レイはこの能力の事を知っていた、のか?」


一言一句、全てを暗記している訳ではない。

しかし、耳に残った言葉の中にふさわしい言葉を見つけ出す。


「“積み直し”。微妙にニュアンスが違った気がするが我ながら悪くねえ。」


そう結論付けたと同時にカラン、と来客を告げる音が。

握っていた手を瞬時に身体の後ろに回し、言葉を慌てて組み立てる。


「て、店長。さっきは急に倒れて、そんな俺を追い出さず手厚く看病してくださってこの雨宮玲、全力で感謝を……」


――絶対聞かれた。


羞恥心で顔を真っ赤にして頭を椅子の背もたれに押し付けんとばかりにねじ込んだ。


「あら。」


やけに大人びた艶やかな声音。なぜか記憶にあるその声に頭の中を探りながら

やけに嫌な違和感を感じて顔を上げる。


「店長さんは居ないのかしら?」


視界に映ったのは、そう言って舌なめずりをする美人のお姉さんだった。




:三人目 街角で出会った危ない宗教のお姉さん

今回も今作見ていただき、ありがとうございます。

ブックマークが少しずつ増えていっている現状に元気をもらえます。


思わぬ再開を果たしたレイと危ない目をしたお姉さん。

彼女は何の目的でさかばにきたのか。次回必見です

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