折り紙
”頭を回せ”
ぐるぐる、ぐるぐると思考を回す。
「ひねり出せっ。」
たとえそこに信用が無くとも受けた恩は忘れない。
埋もれかけていた決意を彼女の心根で再確認し、体と頭を動かす力に変換する。
守る対象ではあるが、信用はされてはいない。
それが今の自分の立場だ。
「そりゃ、出会って間も無けりゃしょうがないか。」
次々と走馬灯のように場面が脳裡を過る。
訳も分からず剥がれた一度目。
取り乱して回った二度目。
「まともなもんじゃねえ……」
思い返して無意味な時間だったと再確認する。
仕方ない部分はあるのだが、それでも、だ。
「三回目、か。」
可能性が一番高いこの周に視点を合わせてヒントを探る。
アズ・ギフトの正体が判明したこと、店長が途方も無く強いこと。
その店長が敵わなかった事。
そしてその原因であるアズの言うとっておき、“夢遊の霧”。
「夢オチってのは大体ハッピーエンドに使われるもんだろ。どこまでもまぁセオリーを破壊してやがる。」
――何か、見落としてるところないか?
戦力的に皆無なレイが突撃したところで無意味な“詰み直し”をするだけだ。
このめちゃくちゃな状況ではその手を切るのもありだと思うが、
ペナルティがある今は大人しく現状に立ち向かうしかない。
それ故に、決定打となる何かをレイは捜す。
「何か、あるはずだ。アズの目的は“あの子”で……」
自分の口から出た言葉に僅かな引っ掛かりを感じる。
それを少しずつ手繰り寄せて言葉を紡ぐ。
「目的、標的があの子なら何で酒場に放置したんだ?」
三回目、酒場で打っ倒れた直後に目覚めた時、彼女は確かにまだ息をしていた。
その後、レイが劇薬に焼かれて死にかけていた時に助けてくれたのも紛れも無い彼女だ。
「仕事なら、即座に仕留めることが何よりも優先しなきゃいけないはず。」
この疑問の先に確かに何かはある。レイはそう確信する。
「クソっ、あと一歩が出てこねえ。」
地団太を踏み、自分の非凡さに苛々を募らせる。
「早くしねえと、酒場のみんなを殺した、“反因子”を出されたらおしまいだ。」
記憶に薄いが、アズはそう言った。
四回目のループで、酒場の客の命を一瞬で奪った毒薬の説明をご丁寧にしてくれていた。
「あの方たちねえ。」
聞きなれない言葉、何かの因子なのは間違いないだろうが、
決して良い物ではない事は分かっている。
「ちょっと、待て。」
話の流れでなんとなく出た、それだけの考えだが。
何かがおぼろげに形が浮かび上がってゆく。
「まさか酒場にすぐ現れなかったのって……」
頭の中で一つ一つ、理由と事実に沿って紙を折ってゆく。
複雑な造りながら、“詰み直し”を持つレイだけが、
“決定打”という名前の折り紙を完成させることが出来る。
間違いがないか確認し出来上がったそれを見てレイは微笑んだ。
「賭けに近い代物だなこれ、」
そう苦笑いを浮かべて前を向く。
今のこの場違いな状況内でやるべきことがあると思えるだけで心が少し軽くなる。
「成功以外、死ぬ結末しか見えないんだが、これしかねえ。」
手を目の前の青い壁に触れ、安全から危険へと飛び出してゆく。
「ちょっと早いが、攻略させてもらうぜ!!」
強く地面を踏みしめる。
破壊と死が降る戦場に生身のレイは勢いよく走っていった。
今回も今作を読んでいただき、ありがとうございます。
さて、今話は転と結の丁度間のお話。
レイは果たして何に気が付いたのか。
予測してみてください!




