暗闇(ルート+β)
暗闇、暗闇(+αルート)を先に読んでください
死ぬことを決めた僕はホームセンターで手頃な縄を買い家路についた。
「我が家もこれで見納めだ。ほとんど仕事で家にいなかったけどもうこれないと思うと懐かしくなるもんだ…」
ドアノブに縄を結び首に巻く。
後は座るだけだ…そんなとき家のドアが開いた。遺体が見つけやすいよう鍵は閉めてなかったのだがこのタイミングで強盗だろうか。
「ちょっとなにしてるの!!」
お母さんだ。僕をなかば強引に追い出したお母さんだ。
「何って見ればわかるだろ。」
「やめなさい!」
お母さんは縄をとるとすぐゴミ箱に捨てる。どうやら未遂に終わってしまったようだ。
お母さんは少し悲しそうな顔をしながら家から持ってきたであろう肉じゃがを僕にだす。
「これ好きだったでしょ…」
「まぁ…それで何のようだよ」
「あのね…」
お母さんが僕に話したことはざっとまとめるとこうだ。
再婚相手が僕も一緒に住んではどうかと言っているから一緒に住まないかというものだった。
「だって、俺のこと嫌いじゃなかったのかあの人」
「私もそう思ってたんだけど、お父さんとしてどう接すればいいか悩んでてあんな感じになったって…」
どうやら嫌われてたと思っていたのは勘違いだったようだ。
「どう?さっきあれ見ちゃったものあって…できれば一緒に暮らしたいとおもうの…」
「うん…」
単純にいい話だった。生活も楽になるし仕事もかえることができる。
簡単に受け入れるとプライドが許さなかったので少し嫌なふりをする。
引っ越しも終わり僕は仕事をやめた。まだ若かったのもありすぐにいい条件の仕事が見つかった。また職場で彼女ができ、結婚が決まった。
人生はやり直せると思う。底辺の僕でもやり直すことができたのだ。意外と知らないところですれ違っていたりすることもある。今回のことで僕はそれを学ぶことができたんだと思う。
通勤のため駅のホームにたっていた。
電車の光がホームにかかる。次の瞬間すごい音がした。
横に立っていた女の人が飛び降りたようだ。
何となく見たことがある人だった。その人の手首には無数の傷跡があった。
だがただ今あるのは肉片になった人間だったものだった。
この方法しか選べなかった彼女に自分に近いものを感じ、下手したら自分がそこにいたことを考える。
目の前の死に目をそむけ、いくつもの可能性を切り捨て同時に選び、今日も僕らは生きていく。
最後の方に書いちゃいましたが1個の可能性を切り捨ててもう1個の可能性を拾っているんですよね。