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氷解、日差しの如く

紅茶を飲みながらグランツにも今回の内容を知らせ、荒ぶるグランツを宥めながら今後の動きを加速するよう打ち合わせる

急に膨れ上がったルシフェルの気配に出撃待った無しの状態だったらしい


その後暫く3人で戯れながら紅茶を楽しんでいると段々と4人が覚醒してきた

きょろきょろと辺りを見回してから橙真達の存在に気がつくと勢い良く立ち上がる



「目が覚めましたか?」

「……何故俺はここに居る……何故貴様達が居る……」



困惑している様子の4人から代表してヴァッサーが疑問を投げ掛ける

その疑問に橙真達は困惑する


意識を失った影響で記憶が混濁しているのか、ルシフェルに一時的とは言え協力していた影響なのか

ここに至るまでの経緯を分かっていない若しくは覚えていないようだ



「思い出せるだけ教えてもらえますか?ああ、無理に思い出さなくて結構です。思い出せる範囲で構いません」

「禍々しい力を持ったゴブリンが訪ねてきた……リーリウム、お前を殺したいと……」

「なんでか分からないけど…僕達はそれが凄い良い案だと思ったんだ……」



俯きながら朧げに浮かんでは消える記憶を結び付けて過去を辿る4人

4人共が思考誘導に嵌り、結託した事でその誘導力が強力になり誰も疑問を抱く事も出来なかったのだろう




(接触していたのはあのゴブリン……だからあそこまで中身がおかしかったのか……それでもルシフェルの力は感知していなかったって事は転移前に力を注がれた?蘇生と眷属化?……いや単に感知妨害をしていただけか……?)




思考が様々巡るが可能性を考え始めれば全てを疑わなければならない

それよりも今は目の前の4人を協力させなければならない、一月後には始まってしまうのだから



「まあ、良いです。取り敢えず、皆さん聞いた事は無かったんですけどどうしてそこまで僕を嫌っているんですか?流石に殺したいほど嫌われるような覚えは無いんですけど……」

「違……ッ!あ、いや……そうだな…確かに貴様を目障りだとは会った時から思っていた。だが殺そうと思うほどでは無いんだ……」



自分たちがした事に対してかなりの負い目を感じているのか、普段彼らが纏う覇気が微塵も感じられない

橙真が軽く引いてしまう程度には落ち込んでいるので、彼等からの素直な懺悔と謝罪にどう扱って良いか分からない

最初はゴミを見るような冷たい視線を浴びせていた桜花も相変わらず腕を話さないルナから「うわぁ完全に心折れちゃってるじゃん。あんだけドヤってたのね、笑える。アタシがトーマ君の代わりに心砕いてやろうかな。どう思う?桜花ちん」などと言われて苦笑いをしている


それを耳に入れて困ったように笑いながらも先を促す



「リーリウム……貴様がトウマ・キリシマ様に似ているのが気に入らなかったんだ……」

「……ん?はい……?」




ヴァッサーの告白に橙真の思考が停止する

トウマ・キリシマ。つまりは霧島橙真、リーリウム・シュヴァルツである

似ていると言われても本人なのだから当然なのだが、それを知るのはここではルナと桜花のみ


ヴァッサーの口から橙真の名前、それも『様』付けで

嫌な予感と昔の記憶と懐かしさが溢れ出す橙真の前でヴァッサーが更に続ける



「救世の英雄そして偉大なる勇者達の父!500年以上経った今もなお語り継がれ続けるトウマ・キリシマ様のお姿の特徴に似過ぎているのが気に食わなかったんだ!最弱と言われている貴様が!」



悲痛な表情で絞り出すように声を荒げるヴァッサーに橙真は頭痛が治らない

思わず羞恥で頭を抱えて悶える橙真にヴァッサーが不審な視線を向けながらも更に続ける



「俺の父は魔王でありながら英雄譚が大好きだった。英雄の素晴らしさ偉大さ尊さを教えられて育った俺もいつしか英雄の存在に魅了されていった。そんな時トウマ・キリシマ様とユリ・クロサキ様達の手で『ブレイブ・ハート』が結成され、父はトウマ・キリシマ様とユリ・クロサキ様に討伐された」

「え、英雄譚が好きな魔王……?!そ、それって……」

「あー居た居たそんな奴。あれの息子かぁ……全く似てないじゃん」



懐かしみ慈しむように過去を話すヴァッサーの話に橙真とルナの頭には該当する1人の魔王

今とは比べるまでも無いが、当時は周りよりも遥かに強かった

それでもトラウマレベルで思い出に残っている魔王

此方を褒め称え感心して受けた攻撃に喜び、一撃一撃が巨大で重く洒落にならなかった当時の七芒星(ヘプタグラム)の1人



「死ぬ間際に父はお二人の素晴らしさを語り、そのお二人の糧となれた事を喜びながら死んでいった。俺はそんな父を誇りにそして父を討伐したお二人に感じたことのない憧れを感じた!だから貴様が!対極である貴様がトウマ・キリシマ様に似ていることが気に入らないんだ!」

「あー…えーっと…取り敢えず分かりました……他の方は?」



ヴァッサーが語れば語るほど止まらない羞恥と頭痛に悩まされながら一度ヴァッサーの事を置いておき、他の3人へ話を振る

軽く流されたヴァッサーは憎々しげに橙真を睨みながらブツブツと文句を言っているがこれ以上は精神的に耐えられないので耳に入れることも放棄した



「私は、リーリウムお前が我等7人に数えられているのにも関わらず弱さを恥じず飄々としているのが思わしくない」

「それは何とも言えないですね」

「いや、それについては自身で納得がついた。ただ、すまなかった……」

「そ、そうですか……」



熱く語ったヴァッサーと違い、ジガンテはとてもあっさりと引き下がった

あまりの落差に拍子抜けしたが解決はしたようでジガンテの深く下がった頭部へ困ったような顔で笑みを送る




「僕は何となく嫌い、ムカつく。弱いくせに僕ら七凶星(マレフィク)にいるのがムカつく」

「えーっと……それについても…」

「トーマ君、ちょっとこの子借りてく」



馬鹿にするような視線で橙真に食ってかかるファータはルナと未だホールドされている桜花に少し離れた位置へ連行された

ルナが見せた新しい玩具だ!、という表情に心配になりながらも止める事はせず解決するならいいかと放置する

ルヴナンへと視線を向けると後ろからファータと桜花の驚く声が聞こえたが気になる意識を抑えて、ルヴナンへ事情を聞いた



「儂はお主のその魔術に対する理解が気に入らん!」

「前にも言いましたが、僕は魔術の得意な方から色々教わっただけですよ」

「それにしてもだ!お主のその理解の深さは儂を凌駕する!人間の時から今に至る長い月日を魔術に捧げた!その儂よりもだ!」



激昂するルヴナンに橙真も何を言っていいかわからない

ルヴナンの魔法やスキルに対しての執着は知っていた、理由は知らないが何かを追い求めている



「ルヴナンさん、貴方は何が目的なんですか?」

「それは……!儂は……儂は……ただ…友人達と再び会いたいだけなんじゃ……」

「ルヴナンさん……」

「お主に言われたことも分かっておるつもりじゃ……しかし心は諦めてくれんのじゃよ……」



一度だけルヴナンに死者の完全蘇生について聞かれたことがあった

その時はリッチである彼が完全蘇生を習得できれば強力な配下を作れるからだろう、と勝手に納得したがどうやら彼は生前の友人達を復活させたいらしい


その時に自分の持つ知識と今までの歴史から完全な蘇生は不可能だと告げたが、ルヴナンの表情は驚愕と嫉妬に彩られていた

ルヴナンのプライドを傷つけたかもしれない、とその時は反省したがまさかそれが自分を嫌う理由になるとは夢にも思っていなかった



「ルヴナンさん……話すだけならなんとかなりますが……」

「な……ッ!ほ、本当か……ッ!?」

「僕が開発した魔法ではありませんし、必ずしもその御本人が考えて返答している訳ではありません。その御本人が恐らくこう考えてこう言うだろうという物なので違和感を感じるかもしれません」

「どう言うことじゃ……?」



橙真は1つの魔法をルヴナンに教えた

これも黒崎百合が開発した魔法であり、何度か橙真自身も使ったことがある

研究や解析を何度も試みたが未だに詳細が分からない

ただそれでルヴナンが満足しこの状況を改善出来るのなら橙真としては願ったり叶ったりだ


もしこれでルヴナンが満足せずに火に油を注ぐような結果になるならば、もうそれは諦めるしかない



「【夢の続き】という魔法なんですが……僕も何がどうなってそうなるのか分かりませんが、星の記憶という物があるらしいのですが……それは誕生から今までの事柄を全て記憶しているそうなんですよ」

「星の記憶……?」

「ええ、誰がいつどこで生まれて何をして最後は何歳でどう亡くなったかまで記録、記憶しているそうで。それを利用して使用者の記憶の中の人物を幻影……だと思うんですけど再現して会話だけなら出来るという魔法です」

「な……なんじゃそれは……」



自身の理解を超えた魔法にルヴナンが困惑の表情を浮かべているが、橙真も同じくらいによく分かっていない

その魔法が生み出された時に軽く説明は受けたがあまりの難しさに疑問符しか浮かばず、慈しむような表情を向けられた記憶しか無い


その後も何度か人に教えた時に実際に使用して見せているが本当に意味がわからない

触る事は出来ないが言葉を投げかければそれに返答する、身振り手振りもまるで本人のように

自分の中の記憶の再現では無いことが余計に混乱を招くがそれで相手が満足するなら、と今まで納得してきた



「おぉ……おぉ……リーリウム……リーリウムや……すまなかった…本当にすまなかった……」



今回も橙真の手を両手で握りしめ涙を流すルヴナンを見て、これで彼が大切な友人達と話せることが出来るならよく分からない効果も些細な事である


何度も感謝と謝罪を繰り返すルヴナン背中を撫でながら橙真はようやく蟠りが無くなって1つ先へ進める安心感に身を任せた

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