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革命、誘導、悪意

城に帰ってきてから数日後、本日は魔王達の集まる場所へと来ていた

普段と変わらないようで実は機嫌の良いステラを伴いルナが拘りに拘ったレンガ造りの可愛らしい建物へ入って行く

白く丸いテーブルに花の彫刻が施された白い椅子、アクリル樹脂の様な素材と押し花で作られたコースター

部屋に差し込む日の光と時折頬を撫でる風が爽やかさを演出する


しかしそこに座る者達はそんな爽やかさと正反対の存在達

様々な国、種族、組織から災厄や災害と指定されている魔王の七人

七芒星(ヘプタグラム)若しくは七凶星(マレフィク)と呼ばれている最も危険視されている七人の魔王

ルナの陣営は普段代理人が参加しているが今回は不参加

何せルナ・エーデルワイス本人が参加しているのだから代理人は不要、知っているのは橙真とルナだけではあるが



「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます」




開催希望をした橙真がまずは口を開き進行役を務める

ぐるりと見渡せば反応は多種多様

紅茶を楽しむ老人、ふて腐れたように明後日の方向を見ている金髪で気の強そうな青年、腕を組み目を瞑る体の大きな中年、全く話を聞いていない中学生くらいの中性的な少年、じーっと橙真の顔を見ている桜花

にこにことこちらを見ている桜花に困った笑みで返してから進行を再開する




「今日は皆さんにお願いと今世界で起きている事を情報共有しようと思いまして」

「おい……その前にルナ・エーデルワイスの代理人はどうした」

「本日事情により遅れて参加するそうです」



金髪で気の強そうな青年に睨まれながら質問される

遅れて参加、既に橙真の後ろに控えているので居る事は居るがまだ席に座っていない、しかも参加するのは本人

恐らく今も実はワクワクしながら立っているんだろうと想像しながら返答すれば舌打ちが返ってくる


最弱の腰抜け魔王などと呼ばれているので桜花とルナ以外からはよく思われていない、というか嫌われている

最弱だから、威厳が無いから、なんとなく、と様々な理由で嫌われ嫌がらせもたまに受ける程




「リーリウム、お前が言いたいのはあれか?勇者達が発表していた件ではないか?」

「ご存知でしたかジガンテさん。なら話は早いです、その件です」




腕を組んでいた男が目を開き射抜くような視線で問いかけてくる

巨人族の魔王ジガンテ、本来の姿は20メートルほどの大きさを誇る

巨大な身体に硬い皮膚、土系魔法とそのスキルにより100年ほど前から7人の1人に加わった

普段は寡黙であまり自分から話すタイプでは無いが、冷静や思慮深いというわけではなく好戦的な一面も持つ


日に焼けたような小麦の肌に鋭い瞳、更に人化状態でも体は二メートルを超え腕も足も太い

多少ボサついた短髪が逆に雰囲気を醸し出している

橙真に嫌がらせこそしないものの、あまり良くは思われていない



「のぅリーリウム、その前に少し話があるんじゃがのぅ」

「なんですか?ルヴナンさん」



紅茶を楽しんでいた老人が顔を上げて橙真の話に待ったをかけた

不死の王とも呼ばれることのあるリッチの魔王ルヴナン

優秀な魔法使いだった生前に魔法に失敗してレイスへとなった彼が長い年月の中でついにはリッチとなり、50年ほど前にここに加わる魔王となった


生前から使っているというボロボロの黒いローブと顔が隠れるほどの長い白髪

ぎょろりとした目と生気を感じさせない青白い肌が不気味さを更に加速させる

忘れた頃に配下や眷属を使って夜中驚かせにくる程度には橙真に嫌がらせをしている



「ちょっとさー、僕らについての話だよ」

「僕ら?」



話を全く聞いていなかった中性的な少年が悪戯っ子のような顔で話を繋ぐ

妖精族の魔王ファータ・フィエーヤ

30年ほど前から参入した魔王で年齢的にもこの中では一番若手

相当な魔力量と妖精固有の妖精魔法を駆使する厄介な存在として認識されている


少女とも少年とも取れる線の細さ、ぶかぶかのワイシャツの様な物をわざと着用し時たまはだけさせ橙真を揶揄う

小さな女の子が好きそうな人形のように髪はさらさらの白と青のメッシュ、パッチリとした目、白い肌

なんとなく、という理由で橙真を嫌い妖精特有の悪戯好きが頻繁に橙真を襲う



「そろそろ貴様とルナ・エーデルワイスに退場してもらおうと思ってな」

「へえ……」



金髪の気の強そうな青年が瞳を鋭くし橙真を睨みつける

海の魔王ヴァッサー・シー=オーシャン

海のほぼ全てを支配していると言われる魔王

その種族は未だ不明、様々な姿の目撃情報により詳細は不明

魔王として覚醒した150年前から参加が認められ七凶星(マレフィク)と呼ばれる原因にもなった


自信に満ちあふれたオーラ、一つに纏められた輝く長い金色の髪、細めの金色の瞳、海を連想するような色の豪華な服

そのどれもがどこか大国の王子のように思わせる、若しくはグランツとは違った若年の王をイメージさせられる

初対面の時から橙真を嫌っており何かと橙真を見下したり張り合ったりと橙真に当たりが強い


今も剣呑に細められた橙真の瞳とぶつかる様に視線を外さない

各々が様々な意図を含んだ視線を橙真へと向ける



「もうそろそろカビた化石はいらないよねー、年寄りには居なくなって貰わないと」

「お主とルナは随分と長く在籍しておる、そろそろ若いのに席を譲っても良かろう?」

「リーリウム、お前だけでも今回で消えてもらいたい」



ファータの小馬鹿にしたような視線、ルヴナンの見下したような言視線、ジガンテのゴミでも見るような視線、ヴァッサーの仇でも見るような憎しみの篭った視線

その全ての視線を受けている橙真、の横に座る桜花がキレた



「今取り消すのなら今後100年のリーリウムさんへの従属で許す事を考えます、もし取り消さないならこの場で貴方達を消します。どうしますか?」

「落ち着いて落ち着いて桜花さん。大丈夫ですから、お願いしますからちょっとその殺気しまって下さい」



ドラゴンや竜人特有の瞳である龍眼が発動し、プレッシャーと殺気が溢れ出す

横に座る橙真はその影響をモロに受けており肌が痛みを訴える

せめて方向性だけでも指定してくれれば良いものを無差別に全方位で放出しているものだから橙真としてはいち早く抑えるか方向指定をしてもらいたい


目の前の4人も冷や汗と怯えを見せており、そんなにビビるなら最初からやめて欲しいと橙真が内心で愚痴りながらも桜花を抑える

今回は何があっても手出し無用と事前に頼み込んでいなければ、今頃4人は血溜まりになっていただろう



「いくら脅しても無駄だ……こっちは既に4人の賛成を得ている!貴様が何を足掻こうと無駄なんだよ!いい加減目障りなんだッ!」



ヴァッサーの喚き散らすような、苦痛を感じているような言動に橙真は結構ビビってた癖によく言うなぁ、と感心しながら立ち上がる

そのまま横の空席、本来ならルナの代理人が座るはずだった席を引いてステラへと視線を向ける



「だ、そうですけど?ルナさん」

「失礼しちゃうよねー、アタシ達の事カビた化石だなんてさ。ほら、こんなにスベスベ真っ白で魅惑的な肌なのにね」



ステラが歩きながら銀光を纏い、真っ赤なドレスを着たルナへと姿を変える

エスコートする橙真へと腕を見せびらかして席に座り橙真排斥派の4人を挑発的な視線で迎え撃つ



「ル、ルナ・エーデルワイス……?」

「に……偽物だ……!絶対に偽物だ!本物がリーリウムみたいな弱っちいの相手にするはずないよ!」

「ふぅん?おチビさん、アタシが偽物かどうかその身体に教えてあげようか?」



動揺と不安と疑惑が広がる中4人は互いに視線を交わして次の一手を誰が打つか押し付け合う

その間にルナは桜花へと視線を向けてひらひらと手を振る、振られた桜花は恐縮したようにペコペコと頭を下げて対応する

冷や汗をかきながらも自分の感覚が告げる危険信号をなんとか抑えつける

様々な死線をくぐり抜けた自分の感覚が間違いなく目の前の人物がルナ・エーデルワイス本人だと否応無しに伝えてくる



「ル、ルナ・エーデルワイスが今更現れたからなんだッ!多数決で負けるからとその力で俺たちを黙らせようって事かッ!」

「え、違うけど?アタシはただ君達の勘違いを訂正しようと思ってさ」

「勘違い……?」



目の前のカップとコースターを腕でなぎ払い、テーブルに腕を叩きつけて叫びながらも自分を鼓舞して腰を折られた話を元に戻す

揺れる視線を受けてルナは首を傾げながら間違いを告げる

恐らくグルグルと思考を巡らせている4人へルナは悪戯な笑みを浮かべて、この集まりにおいて忘れられた絶対的なルールを彼らに教える



「最終決定権はアタシが持ってるんだよ、多数決で決まろうが暴力で決めようがアタシが気に入らないと言えば決定は覆る。アタシはリーリウム・シュヴァルツを七芒星(ヘプタグラム)から抜けさせるつもりはないからアンタ達が何を悪巧みしようと何を画策しようと無駄ってコト」

「なっ……」

「巫山戯るでない!そんな横暴が罷り通っていい訳がなかろうッ!」

「そ、そうだよ!だったらこんな話し合い意味ないじゃんっ!馬っ鹿みたい!」



4人が立ち上がり急いで外へと出て行く、残された橙真とルナに桜花はお互いを見やり首を傾げながらそれに着いて行く

橙真の後ろでルナと桜花が何やら仲良さげに話しているのを耳に入れながら、窓から外を見れば転移魔法で誰かを呼んでいるところ

どうやら橙真の後継者として用意した者を呼び出して力ずくでも認めさせる算段のよう



「っ……!そう言う事か!」

「なるほど……弱い癖にやたら自信満々なのはこう言う事か」

「ま、待って下さいー!」



転移の途中からこちらに流れてくる気配と魔力に全てを察した橙真とルナが窓から飛び出して外へと出て行く

急いで4人の元に駆けつければ、1人の例外もなく瞳が濁っている

背後から黒い靄が立ち込み転移魔法陣へと吸い込まれて行く



「最初からこうすれば良かったのだ……リーリウム今日が……命日だ」

「まどるっこしいのは……終いじ…ゃ」

「死ね……死んじゃえ……リー…リウム」

「貴様達……後悔するがいい……」



言い終わると同時に倒れこむ4人、恐らく自分がどうなっているかもわかっていない

彼らの体から出て行く靄のように、思考にも靄がかかり自分が何をしていたかもわかっていない筈

思考誘導がかけられている彼らを見て、橙真は一歩前に出る



「仕方ないです、僕が対処しますからルナさんと桜花さんはあの4人を回収して適当に転がしておいて下さい」

「橙真さん、無理は禁物です。どうか御武運を」

「トーマ君が戦うのすっごい久し振りじゃん!これは見逃せないね!」



回収を頼んだはずのルナが魔法でイスとテーブルを取り出してお茶やお茶菓子まで用意して観戦モードに入った

桜花までも隣に座らせて、困惑する桜花に自分でなんとか出来るから大丈夫、と説得してお茶菓子を食べさせている

一度も戦闘を見せたことの無い桜花から心配の視線、実力を知っているルナからキラキラの視線を浴びて橙真は深いため息と共にゆっくり転移魔法陣へと歩みを進める


建物内は完全禁止の効果が付与されているが、敷地内であればただの妨害だけが成されており転移完了までかなり遅くはなるが出来るようにはなっている

ようやく完了した転移魔法陣から真っ黒の肌で坊主姿、ボロボロの服を着たゴブリンのような魔物が姿を表した

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