理不尽生ゲーム
若菜は人生ゲームを始めるための準備をしている。
パッケージに書かれた『理不尽生ゲーム』の文字と、膝から崩れ落ちて頭を抱えているサラリーマンの男性イラスト。
これを1週間見てたらきっとノイローゼになる。
そんなおぞましいイラストから、結人は目をそらしボードを見た。
おや、割と普通の人生ゲームだ。
ところどころに大きなものもあるが、全て四角で統一されたマス目。
そのマスから外れたところに、家がまばらに建っている。
右端には大きなルーレットが備えられていて、1から10までの数字が円になって並んでいる。
「まず自分の車を選ぶみたい」
説明書を読みながら、若菜が指示をする。
車に棒人間を差し込んで、マス目を進んでいくらしい。
桜乃が赤、若菜が青、澪は黄色で結人は緑の車を選ぶ。
そこに各々、自分に見立てた棒人間を差し込んでいく。
ちなみに女性は赤で、男性は青だ。
「これは最初のお金ね」
そう言って若菜は、それぞれに『1000ドル』と書かれた紙を3枚ずつ配っていく。
所持金は3000ドルから始まる。
「最終的に所持金が一番多い人が勝ちみたいね」
お金をより多く稼いだ奴が、人生の勝ちってことか。
「お金じゃ買えないものもたくさんあるんだぜ?」などとそんな寒いことを言う者はいなかった。
なによりゲームだ。
勝敗を決めるにはわかりやすくて一番いい。
「まず最初に、職業を決める。ルーレット回して」
「ということは職業は十種類ってこと?」
「そういうことだね」
澪の問いに若菜が答える。
全員この人生ゲームをしたことがないので、探り探り進めていく。
「じゃあ結人から右回りでいきましょうか」
「わかった。ルーレット回すぞ」
ゲームマスターから先頭バッターの座を譲られて、結人はルーレットを回す。
カラカラと心地よい音を立てて回るルーレット。
目に見えぬ速さで回る数字は、徐々にスピードを弱め『1』を指して止まった。
「1は・・・・・・、サラリーマンね」
「ほお、安定だな」
こうして結人は最初に安泰を手に入れた。
給料として8000ドルをもらう。
なかなか幸先が良い。
「じゃ、次はわたしが」
結人の右隣にいる桜乃がルーレットを回す。
針は『2』を指した。
「2番は・・・・・・、アイドルだね」
「お、人生ゲームの王道ですね」
桜乃はアイドルとして人生を歩むこととなった。
それにしても違和感が全くないな。
既に学園のアイドルだからだろうか。
「給料は12000ドルね」
「やっぱりサラリーマンより高いな」
「そりゃアイドルですから」
いいなそのセリフ。
俺も言ってみたい。
しかしサラリーマンでは太刀打ち出来ず、すぐに断念する。
「次はわたしだね」
説明書を片手に、若菜がルーレットを回す。
ルーレットの針は『6』を指した。
説明書を見て、数字に合う職業を探す。
「6番は、・・・・・・読書家?」
「それ職業じゃねーだろ」
反射的にツッコンでしまった。
早速尾を出しやがった。
やはりこのゲームやばい。
「給料無しなんだけど・・・・・・」
「読書家という名のフリーターじゃねえか」
若菜は肩を落としてしょんぼりしている。
さっきまでの威勢はどこへやった。
「最後は澪だね」
左隣にいる澪がルーレットを回す。
勢いよく回り、『9』を指して止まる。
「9番は・・・・・・」
「・・・・・・どうしたの? 若菜ちゃん」
言いづらそうな表情。
若菜の額に汗が滲んでいる。
嫌な予感しかしない。
「9番は、乳牛・・・・・・」
「乳牛!?」
「人間ですらねえよ!!!」
どうしましょう。
妹が牛になってしまった。
それも乳牛。
ろくな人生を送れそうにない。
もちろん、乳牛に給料などあるはずがない。
ここで結人は1つ気になったことがあった。
『9』が乳牛なら、『10』の職業はいったいなんなのか。
聞くのも恐ろしいが、人は好奇心には勝てないもの。
「若菜、ちなみに10の職業はなんだ?」
「10は・・・・・・、ゾー〇?」
「大魔王!?」
それはチートキャラだろう!!
某ゲームのボスキャラに、サラリーマンが敵うわけがない。
妹が乳牛で良かったぁ。
いや、良くはないけど。
「これでスタートね」
「澪は人間としてスタートすらしてないよ・・・・・・」
若菜のコールに澪が不満を漏らす。
こうして、サラリーマンとアイドルと読書家と乳牛の人生ゲームが始まった。
書き溜めてるものも、そろそろ尽きそうです。
ネタはあるのですが、書く時間が無い・・・・・・。
おのれ受験め・・・・・・。