第四十三話:確認
『ふむ…恐らくではあるが、世界の構造に支障が出たため、それが何らかの原因でそのようになったのではないかという憶測じゃ。それ以外になにも考えが浮かばぬのぉ。少なくともその死神を探さなくてはな』
「他はそう考えてるの?」
『いや、あくまで儂だけの憶測じゃな。しかし、それだけでも十分であろう。そなたの報告には感謝しとるよ』
今俺は、城の、それも絶対と言っていいほど人がいなくて、見えない場所で【神界通信】を使っている。勿論、口調からして、魔法神ベイルモニア様だ。
「いいえ。それほどでも。あ、そうそう。この世界に催眠術とかそういうのはある?こう…催眠魔術みたいな感じで」
『なぜそれを聞くのかの?』
「催眠術と闇魔法と色々関連がありそうで…。どっちも精神誘導系列だし、どうなのかなぁって思って」
『なるほど…そういう意味であるなら、催眠魔術は、存在するぞい。確かに闇魔法は精神誘導はあるが、それはどちらかというと拷問などの類じゃな』
「…」
『催眠魔術には、攻撃の類は一切ない。少なくとも肉体的には…じゃがな』
「でしょうね。なら良かった…。少々やりたいことがあったので。それと、そちらの方はどうです?」
『何をやりたいのかは知りたいところじゃが…。まぁよい。こちらとしては修復はもう済んでおる。可能なら今すぐどこか別場に移って欲しいところじゃな』
「もう…ですか。となると…次はどこに行けば良いのでしょうか」
『ふむ…そなた、ジバレ二ア公国という場所に一度赴いたそうじゃな』
「はい。諸事情で」
『そのジバレ二アはそなたのいるエーリュンゼ王国から南にある国なのじゃ。そこから更に南下すると学園都市エルダムとして有名なアルバンダ共和国という場所がある。そこにしばらく出向いてほしい。そなたの歳じゃと…小学部くらいは入れるじゃろう』
「ちょっと待ってください…俺はこれから遺跡に少々訓練をしようと思ったのですが…。それこそレベル上げとか、経験を積むとか、そういうのですよ」
『レベル上げは正直、【勝負システム】を使ってもらうほかないのじゃが…。経験も後々でもよかろう。そなたはまだ五歳児じゃ。五歳児に何ができる?』
「痛いところを突きますが、五歳児というのは見た目。確かにそれで侮られるのは確かですが、それでもし成功して帰ってきても、後の笑い話の種に出来るくらいですよ」
『化け物として…扱われる可能性があるとしても…か?』
「…」
否定はしない。確かに多くのラノベとかで出てる主人公はそういう化け物という言葉が遠いほどのチート持ちだったりする。
でも、じゃぁどうして怖がられないのか。それはその過程にある。
よくあるフラグとしては、そういう遺跡に行って、魔物使いとかだったらそこに仲間になるようなモンスターとか魔物がいて、そこから助け出すようなことだ。この場合は後にその一緒に助け出したモンスターが凄いという事になる。低くはあるが、助け出した本人が凄いというのもあるが、それでも一桁かそれ以下の確率だろう。そして逆に別の生き物…獣人やエルフ、ドワーフなどの種族だとしたら、その個人が特別強いという事になる。勿論、その力を危惧されてそれが後々…っていうパターンはあるけど、少なくともそんな力を持つ個人が出てきて、それを国で危惧とかそういうのをされることは無いだろう。むしろ取り込もうと躍起になるはずだ。…権力争いという事にはなるが。
だが、俺の場合、そういうのが皆無なのだ。確かにロムエシスはいるが、その力は鑑定のアクセサリで見抜かれている。加えて、この遺跡の最深部に行くときはおそらく、俺は誰も連れてない。そこでもし、本当に確率は低いが、それでももし、レイスとかそういうのはまだしも、不死の王やリッチなどと言った最高難易度の魔物が出てきて、それを攻略したとしたら?多くは攻略すればいいと思うだろう、いや、考えるだろう。
が…それはある意味悪手だ。俺は王族だ。どこぞの馬とも知れぬ冒険者なら、国王とかから誘いを受けたり~とかで済む話だ。周辺諸国も、「ああ、あの国結構いい冒険者手に入れやがったな~」みたいなノリで普通は終わる。…それこそ帝国とかそういう国じゃない限りは普通は終わる。後は強引な引き抜きとかな。王族の場合、周辺諸国にその事情が伝われば…エーリュンゼが終わる可能性もあり得る。あの王族は危険だ…ってね。引き抜きっていう最強のオプションが効かないなら、それこそ幾万もの暗殺者を送られる。これは流石にまずい。
『…そなたはよく考えるのぉ。じゃが…』
「が?」
『おぬし…それと同時に数多の国から姫がやってくるという事も考えておらぬか?』
「考えては…なくはない。けど、政略結婚?正直絶対って言っていいほど好きじゃない。他人から進められる恋?勝手に決められた未来?…くそ食らえだ。んなくらいなら…」
『熱いのは分かるが、それでもいいようはあるじゃろう』
「…わるい。で、話を戻すが、俺が化け物として扱われてもいいのかって?時期によるな。後はタイミングだな。少なくとも、俺としては不味いと思う。王族としては」
『王族としては…か。…そなたなりに考えてその結論に至ったのじゃな。なら、これ以上言っても無駄じゃのう。して、レベル上げじゃが、正直ここら辺は儂の専門ではなくての』
「……大体想像出来ますが…まさか闘神様の領域…ですか?」
『そして軍神じゃな。闘神は戦いその物、軍神はそれをいかに効率的に、尚且つ最低限の手段で出来るか…と言ったところじゃな。分かりやすくいうなれば、闘神が将軍、軍神が軍師…と言ったタイプじゃな』
「かたや直接赴き、かたや後方にて指示を…ですか。似てるようで似てない…ですね」
『うむ。じゃが、今回のように、事前に計画的にやるならば、軍神…ヴァ―ラスと話した方がよいじゃろう』
「軍神ヴァ―ラス…ですか。因みに闘神の方の名前を伺っても?」
『ギベルニじゃ』
「軍神ヴァ―ラスに闘神ギベルニ…はい、有難う御座います。それにしても、本当に多くの神様がいますね…それぞれを象徴する神がいるとは…。つかぬことを伺いますが、家庭などにまつわる神様もいるのですか?」
『おるのぉ。まぁ、そういって儂ら神々の事を聞くと永遠と聞くことになるがの』
「はは。そこは私の専属妖精に聞くとします。お時間とってもらって有難う御座います。今回は魔法関連の質問がありましたので…。他はついでです」
『うむ、別に構わんよ。その呪いについても儂の方で念のため聞いておく。それではの』
「はい。また」
―――プツン。
ふぅ…ベイルモニア様の話からすると、呪いは世界の構造そのものが何らかの影響により、ロムエシスに呪いという表示が付いてしまった…。これはこれでまた大問題な気はするけどね。俺も安心出来ないな。いくら神々のサポートが付いているとしても、絶対じゃない。例えば…死ぬこと。これは避けられない。それは以前の村の事で思い知った。
まぁ、色々考えても無駄か。
…学園都市…ね。でもその前にその遺跡だけは行きたい。
冒険は 五から始める ものなのだ。
…俳句っぽくしてみたけど滅茶苦茶安易すぎる。そして一部意味不明すぎるわ。
ま、それはさておき、とりあえずもう一度図書の間に行って資料探しかな。このままだとさっき見つけた迷宮は行けなさそうだし。
…ん?あれ?いけるか?細かい場所を確認して無かったからあれだけど。まあいいや。そこも含めて調べるとするか。
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