第二十六話:幼すぎる体の蝕み
次の日、俺は母さんと一緒に候補を付けた奴隷商の元へと向かった。この時に、俺はディオによる光の変装魔法【光学変装】を使っている。光魔法にしては消費は少な目でディオがナチュラルに持つ魔力で長時間維持できる。少なくとも今回は姿だけは偽装すればいいから、適任だろう。
こうして俺たちは奴隷商その1へとやってきた
俺がいるから俺が来た時と同じ人が対応してくれた。この調子だと他の奴隷商も同じだな。
とはいえ、今回は少し趣向が違う。確かに使用人を雇うとは言ったけど、今回は母さんに頼んで別の要件を追加で頼んだ。
「ええ、確かに聞いてたとおりね…。ちょっといいかしら?」
「はい、何でございましょう」
「ここ以外に…治癒士か誰かに見せなければならない奴隷とかって…いますか?実は私の国で治癒の実験をやっておりまして…」
「ふむ…公式の奴隷商では難しいでしょう。この手の奴隷は裏手の方が適任かと…」
「そうですか…」
そう、この通り、俺の開発した治癒の魔法の実験台の捜索である。打算を言うならそこにかわいい子がいたらなぁとは思うけど、望みはもとより無いので、あくまでちょっとした希望だ。
その後も同じような内容だったため、本当に裏に回らないといけないと思うと苦労するな…。
でも実際にいくつか奴隷を購入出来たため、完璧に無駄足ではなかっただろう。
そして昼頃、とりあえず必要な買い物を済ませた母さんと一緒に高級店で食事をしていた。
「ねぇ、これからバルはどうするの?」
「とりあえずは、裏手に行こうかと…。大丈夫です。私の魔法があれば大丈夫ですよ」
「それもそうだけど…」
「母上…あのような場所に私…いえ、彼女に勝てるようなものがいない可能性が極まりなく高いのです。それに…あのような場所には訳があるものも多いです。そうなると…」
―――用途の人がいるかもしれない。
そう、暗に母さんに説明した。高級店でする話ではないが、王族なおかげか、高級店にある個室で会話しているため、盗聴の恐れはない。少なくとも隠れ妖精のディオに見つからないやつは相当な手慣れだろう。もちろん、会話の中にある彼女とはディオのことである。レベル一でも巨力な魔法を使えるのは事実であり、ステータスも高めだ。だけど…戦闘では絶対はないのは事実。それでも母さんを安心させるために、そこは伏せておく。罪悪感はあるけど、このせいで救えない人が出たり、本来なら死ぬはずのない母さんも最悪…。
いや、そこを考えるのは止そう。それを考えるのは…俺が本当の意味で力を付けた時だ。そして…本当の意味で人を救えた時…だ。
いつまでお互いを見つめあっていたのだろうか。しばらくすると母さんの翡翠の瞳がす…と目を閉じて…。
「わかったわ…。でも無茶はしないで。お願い。そして夜には帰ってくるように」
「はい、母上」
ああ、無茶はしないさ。
残された人の哀しみは…知っているさ。
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母さんとの昼食が終わった後、俺は裏手…俗にいうスラムへと来ていた。
雑多な貧民達が集う…無法地帯。
この名があるが故に俺はここに来た。
俺の目的を確認すると、一つは俺の視力と聴力回復の人の実験台を見つけること。エーリュンゼで探しても良かったけど…効果が低くて期待外れなんて言われるのがなんとなく怖い。
もう一つは、言わずもがな、旅の仲間候補である。っと、今は治療の件に集中集中っと。
ううん…さっきから鑑定やってるけど、状態異常とか分からないのかな?特に問題はなさそうなんだけどね
「…それはちゃんと状態異常としてステータスに移るわ。熟以上だからちゃんと移るはずよ?」
むぅ…。でも特にこうと言ったやつらは見当たらないしなぁ。しょうがない、しばらく進むか。っていうか俺元から運がなかったっけ。チクショウ。
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しばらくスラム街を歩くこと、数時間。もうそろそろ母さんと合流かな?と思ってた頃、気になる子を見つけた。というよりディオが見つけてくれた。
「あの子…他の子たちとは妙な感じがする。なんか…悪意はないけどどこかに悪意があるような…」
はて?それは妙だな。特に彼女に異常は…ってここはスラム街だからそういうのは分からないか。
その子の見た目として奇妙なのが、彼女に翼が生えていたこと。これは彼女が天翼族という一番の証拠だろう。スラム街だからあまりよくは見えないけど。
そして俺は、その子を鑑定してみた。
すると、俺の想像を超えた鑑定結果が帰ってきた。
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疫病神・ロムエシス、6歳、天翼族、女
Lv.4
HP:17/31
MP:103/194
膂力:10
知能:13
俊敏:23
対物:12
対摩:13
スキル:
(レ)身体強化術
(レ)風魔法
(コ)生活魔法
状態異常:
死神の呪い
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…なんだよ、これ。