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第20話 作戦会議


 急にカイルが真面目な顔つきになる。


「でもさぁ、実際問題、魔王様は強いよ。魔王様を守る親衛隊も上級魔族ばっかだし」


「だからこそ、勇者の力を借りる事が絶対条件だ。狙うのは人間界へ行く日、つまり十日後。多分、魔界の中に親衛隊の数人とかを置いていくはずだ。完全に留守にするのはまずいからな。そこで、手薄になった親衛隊と、人間界へ向かう他の魔族のやつらは勇者達がどうにかしてくれるとする。となると俺たち三人が魔王を殺す」


「3対1か。一番まずいのは、魔王様を倒せなかった未来だよ。やるなら確実に」

「うわぁ、考えたくない未来だねぇ」


 出来るだけ万全を期すつもりだけど、アイルの言う考えたくない未来の可能性はゼロじゃない。


「作戦……立てようか?」


 カイルの提案に頷く。


「魔族側の味方が私達だけって、しょうがないのかもしれないけど、少し不安かも」

「二人に当ては無いのか?」


 俺はともかく、二人が信じられる人なら、と思ったが「んー……」と考え込んで表情を曇らせた。


「そうだ! リカリス=フェリス様は?」

「フェリス?」


「うん。吸血鬼のお姫様だし、ドロウドロップについても何か知ってるかもしれないし……それに、もっと仲良くなりたいし」

「アイルの場合、最後のが目的っぽいけど……。とはいえ、僕も賛成かな。シャルも放っておけないらしいし?」


 二人の顔にニヤニヤとした笑顔が浮かぶ。


「なんだよ、その顔は!!」

「別にぃ。ただ、フェリス様に話を持ちかけるとしたら、シャルだよなぁ、って」


 どうしてそうなるんだか。


 一つ溜め息を落とす。


「ったく、しょうがないな。分かった、俺が言う」

「じゃあ、その件は宜しく! で、だよ。問題は……」

「どうやって、魔王様を倒すのか、だよね?」


 一気に空気が重い。


 魔王は魔族の中でも、トップの魔力を持つ男だ。まず、真っ正面からじゃ到底敵わない。それは、ここへ来た時から分かっていた。


 だから、わざわざ、魔王の配下に就いたわけだし。


「まず、絶対条件として、魔王は一人にならないといけない。どうにかして俺たち三人と魔王、っていう空間を作り出す」

「どうやって?」


 と、カイル。


「……魔王は人間界の事をどれくらい知ってると思う?」

「んー、魔王様自身が遠征に行くのは珍しい……っていうか、初めてなんじゃないかな?」

「それは使えるな」


 魔王を騙す手段として。


「人間界に着いて、魔王はまず配下の者たちの話を聞きながら人間界の地形を把握しようとするはず。そのぐだぐだしてる間に偶然を装った勇者一行と対面させる。そして、アイル、もしくはカイルが


『安全な場所を知っている』


と申し出るわけだ」


「そうすると、魔王様と私達三人の空間を作れる!」

「上手くいけばな」


 ずっと、ずっと、殺してやりたかったんだ。


 失敗――?


 笑っちゃうな。


 このやり場のない、恨みを、憎しみを"失敗"で終わらせてたまるか。



 慎重に、確実に、殺す。



「作戦はいくつか考えておく必要がありそうだね」

「うん……。でも、もう遠征までそんなに時間は無いよ。だって魔王様、『十、鐘を聞いたなら』って」

「そうだな、考えすぎても頭がパンクする。作戦は三つに絞ろう」


 この十日の間、やるべき事は沢山ある。


 まず、作戦。


 俺自身の魔力強化。


 そして、フェリスの説得。

 


 フェリス、か。変なやつ、だけど、悪いやつじゃないんだよな。


 それに、魔王の事もあまり好きじゃないみたいだったし。


「あ、そうそう。南森の生息物調査もやらないとだよなぁ」

「あ」


 思わず声を漏らす。


 忘れていた。それもあった。


「時間かかるんだよなぁー。早く終わらせたいよね」

「じゃあ、作戦はとりあえず各自で考えておこう」


そしてカイルは、後ろから何やらメモ帳を取り出した。


「これが僕が取りに行った生息物調査の用紙だよ。今回は三人だからね。役割分担すれば早く終わるよ」

「でもシャルは初めてだし……任せて大丈夫?」

「説明してくれればなんとかなる」


生息物調査と言っても、調査だけなら簡単だろう。


「オッケー、オッケー! 生息物調査っていうのは名前の通り、まぁ生息物調査の事なんだけどね、主に魔物と植物かなぁ」

「もしかして、数も?」


となると、果てしないんじゃ……。


「いや、種類をメモる程度かな。ただ、範囲が広いから、それだけ頑張って、って事」

「なんだ簡単だな」

「シャル……これを甘くみない方が良いよ」


甘く見たつもりは無かったけど、そこまで警戒する必要も無い気がするのだが。一体何があるというのだろう。


「お、おう。一応、頭に入れておく」

「まぁ、じゃあ、分担しようか」


カイルに役割分担は任せる事にした。


少しすると軽い地図が渡された。


「シャルはその範囲よろしく」


今からやろう! とアイルが立ち上がったので俺もそれに続く。


「じゃあ、終わり次第ここに帰ってくるって事で」

「ああ」

「らじゃぁ!」


 生息物調査開始だ。


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