表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夕刻  作者: うぃる
3/3

彼女との出会い


 俺の名前を呼んでくれた。そして俺は一瞬で振り向き、気づくと彼女の名前を呼んでいた。

この時なぜためらいもなく彼女の名前を呼べたのかいまだにわからない。


 「はい。犬塚結衣さんですか?」


 そう、彼女の名前は犬塚結衣。忘れたくても忘れるわけがない。


 彼女は柔らかな声で返事をしてくれた。


 「はい。そうです。いきなり声かけてごめんなさい。六合塚中学の方ですよね?私と同学年の。」


 俺は一瞬の迷いもなくすぐに言葉を返した。


 「そうです。六合塚中学です。クラスは離れてましたけど犬塚さんのことは知ってます。」


 そうすると彼女は嬉しそうに、


 「あーよかった、知っててくれなかったらどうしようかと思いましたよ。」


 俺は慌てて


 「あ、部活で吹奏楽部だったでしょ。でも人数少ないからイベントの時演奏してるの見て知ってたんだ。」


 と恥ずかしさからよくわからないごまかしを言ってしまった。


 彼女は首を振りながら


 「それでも私のこと知っててくれて嬉しいな。あの時も嬉しかったんだ。」


 「あの時?」


 疑問を感じた。

あの時とは。


 「あ、ごめんなんでもない。気にしないで。それよりもその制服は向こうの男子校なの?私そこの女子校なんだ。だからまた、会えるかもね。」


 彼女は慌てながら俺の疑問をごまかした。

俺も緊張していたのでその時は何も感じなかった。それよりもまた会えるかもねという言葉に俺はドキリとしてしまった。また俺なんかと会ってくれるのかとテンションが上ってしまった。


 「そうだね、また会えるかもの。それよりも急いでたように見えたけど大丈夫?」


 「そうだった、少し急いでたんだ。ごめんね、急に呼び止めたりして。それじゃーまた帰り道にでも会えたら。」


 「うん、それじゃー気をつけてね」


 と、彼女は急ぎ足でその場を去って行った。


 しかし、俺の心臓はいまだに落ち着きを見せない。オーバーヒートしっぱなしだった。正直頭の中は真っ白で何を話せたかあまり覚えていない。


 正直もっと話していたかったが、緊張と恥ずかしさもあり自分も逃げるようなかたちをとってしまった。


 でも彼女も急いでたし、と心の中で言い聞かせることにした。


 そして自分も心と体が冷めやまぬままその場を立ち去ることにした。


 また、夕刻の時に彼女に会えますようにと祈りながら。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ