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夕刻  作者: うぃる
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やわらかな光


「和人ー、どっか飯でも食ってかない?」

久遠との学校からの帰り道、飯の話になった。


「俺、今月ピンチだからまた今度で」

「へーへー、じゃーバイト代入ったら行こうな」


そんな何気ない会話をしながらの帰り道。

俺は近所の家電量販店でバイトをしている。

理由は家電が好きだからだ。

今日は休みで、休みの日はこうして久遠とのんびりくだらない会話をして帰るのだった。


そんな日は決まって心がうずうずしてしまう。


そう、あの日の彼女を思い出してしまうからだ。


彼女は中学校が同じだったが、同じクラスになったことはなく、話したこともない。


しかし、彼女を初めて見た時一目惚れした。


ただの片思いだった。そして彼女のことは名前ぐらいしか知らない。

学校でも美人だったので彼氏がいるかもしれない。


勇気のない俺は結局話しかけることもできずに卒業し、彼女もどこの高校に行くのかわからなかった。


そんな高校1年の夏。


夕刻の時、彼女と出会った。


彼女はどうやら近くの女子高で帰り道にたまたますれ違った。

その時は心臓がはちきれそうにドキリとしたが、相変わらず何もできなかった。

そう、一人だったから何もできなかったと言い聞かせ逃げている自分がいる。

久遠が一緒にいればと。


久遠は彼女とクラスが同じだったこともありこいつと一緒にいれば会話が生まれるはずと淡い期待をしている。

ちなみに久遠に彼女が好きだとは言っていない。恥ずかしさもありクールぶっている自分が嫌いだ。だから彼女の情報も聞き出すことができない。


もっと素直になればこんなもどかしい日々を過ごさなくていいのにと悩めばきりがない。


だから久遠との帰り道はこうしてわずかな希望を抱いてしまっている。


そんな自分をかなり情けないと感じている。


しかし、あれから数か月たっているがあれ以来出会うことはなかった。

そして今は学校指定の真新しいカーディガンを着始めた秋。


今日も出会う気配はなさそうな感じだった。


そんな時だった。

久遠がいきなり「あれ?やべ、携帯忘れてきた!」

突然ポケットや空っぽのカバンの中を探すがどうやら見つからないようだ。

「わりー、先帰っててや。そんじゃまた明日」


と、勢いよく久遠は去って行ってしまった。


仕方なく、一人で帰ることにした。

今日はもう出会いそうもないし、出会ったところで何も出来ないし。


夕日を見上げながら帰ることにした。


一日の中で一番好きな時間だ。だから夕日が一番好きだ。



そしてその時はやってきた。


夕日をみていると照らされながら向こうから一人歩いてくる人がいた。


心臓が鼓動を速めていった。


そう、彼女だ。


俺は不意に視線を下にそらし歩いて行った。


自分の中で様々な葛藤があり歯を食いしばりながら勇気を出そうとした。


しかし結局なにもできずに彼女とすれ違っていった。


こんな自分が嫌いだ。


ひどく自分に嫌気がさしていった。


そんな時、後ろからやわらかい声がした。


「もしかして、桜木和人君ですか?」


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