1/3
幸せな時間
夕刻の時、それは訪れた。
高校の教室の窓から見た風景には夕日にきらめく雑居ビルがこの時を待ちわびたかのように綺麗にそびえていた。
そしてそれも。
俺はこの時間が一番好きで幸せになれる。
帰り支度をいったん止め、それを見つめていた。
しかしこの時間はすぐに終わりを告げようとしていた。
「和人、帰ろうぜ。てかいつも外見てるけどなんか見えんの?あ、もしかして女子高でも覗いてんの?」
つぶれたカバンを持ってニヤついた顔をした久遠が言った。
俺は一瞬心に緊張が走ったが適当に「眩しくて見えないよ。すぐ用意できるから少し待ってて」
帰り支度を済ませ教室をでる間際にまたそれを一瞬見つめた。
久遠とくだらない会話をしながら歩いて帰る毎日。
そんな帰り道、和人はいつもあの日のことを思う。
そう、あの時間に外を見るもう一つの理由。
彼女を思う気持ちで見てしまうそれを。
もう一度彼女と出会うことができるのかと。
しかしそれは突然訪れた。
夕刻という幸せな時間に。