ラストオーダー
最終話です
落ちは在りません
そして彼女は爆弾を投下した。
「あ、皆、一言ずつぼくに愛を囁くとか、如何ですか?公開羞恥プレイ。愉しそうでしょう?」
「其、愉しいのは陽茉だけだから」
わたしは苦笑して遠慮しようとしたのに、
「おーけぃ。絶対あんたに甘いって言わせちゃるわ」
「先刻のリベンジをさせて貰おうじゃないか」
萌莉先輩と貴咲がやる気満々で乗ってしまった。
マサカ自ら爆撃地へ躍り出るとは。
思わず華と目を合わせる。交わる諦めの視線。もう逃げられない。
「年功序列っ。私からね」
年上からだと、萌莉先輩、貴咲、わたし、華の順になる。此又、嫌な順番にされたものだ。
萌莉先輩が陽茉の前に進み出る。
「女同士だからって思って我慢しようとしてたけど、やっぱり無理。友達じゃ、耐えられない。ねぇ、貴女を愛してるの、付き合って、陽茉」
萌莉先輩、ノリノリだった。流石ヅカマニア…。陽茉がにっこりと宣言する。
「ありきたり。寒い」
「ちぃっ」
萌莉先輩が盛大に舌打ちをした。
「貴咲チェンジ」
「はい」
進み出た貴咲が真摯な眼差しで陽茉を見つめた。先程ばっさり切られた手前、如何するのか。
「陽茉、もう、君無しでは生きられない。好きだ」
わお、直球。
「うん、まぁ先刻よりか増だけどやっぱりベタベタだし昭和。駄目だね」
此方も直球。しかも豪速。
「くっ…杏那、後は、任せた…」
貴咲が片手で胸を押さえつつ、わたしの肩を叩いた。
任されても。
任されても!!
わたしは困って陽茉を見た。陽茉が苦笑して言う。
「無理しなくて良いですから。ノリで、適当に。と言うか、もえさんときどさんが勝手に乗っちゃったからって、ぶちょまで付き合う必要無いですから。嫌なら、別に」
こう言う所も、狡いと思う。我が侭な癖に、気遣い屋。
「陽茉なんか、嫌い」
わたしがぽつりと呟いた言葉に陽茉が目を見開く。
唯でさえ白い肌が、益々色を亡くした。
「え…?」
何か嫌われる事をしただろうかと、不安に染まった瞳を向けられた。
ああもう。
「狡い。我が侭なら我が侭で徹してよ。只の自己中女だったら、簡単に嫌いになれるのに、そんな気を遣われたら…好きって認めるしか、無いじゃん。可愛過ぎて、好き過ぎて、嫌い。何でそんなに可愛いの。馬鹿」
顔色を亡くしていた陽茉の顔が、瞬時に赤く染まった。
「うわー…」
華がぼそっと溢す。
「唐崎さん…あまー」
「ぶ…ぶちょがぼくを嫌いでも、ぼくはぶちょ、好きですから」
紅い顔の陽茉がわたしから顔を逸らし、不明瞭な呟きを漏らした。華が、ああーっと叫んで頭を掻く。
「俺、此の後かー!?どーしろとー!?」
「否、ぼくもう満足だから良いよ別に」
未だ紅い顔のまま陽茉があっさり言う。うい奴だ。
「其も悔しいだろ」
華は頬を掻くと、唐突に陽茉を抱き寄せた。細い身体をぎゅっと抱き締めて耳元に囁く。
「好きだ」
其だけ言い逃げて即座に離れた。素晴らしいバックステップだ。そしてド直球。
陽茉がにこっと微笑んだ。此は、からかう顔だ。
「うーん、ぼくより可愛い男と付き合うのはちょっと…」
「だっ…お前の方がかーいー(可愛い)だろー!?男にかーいーとか言うなー、ばぁかー」
「…はなちゃ、若干失言」
顔を紅くして怒鳴った華に、普段の顔色を取り戻した陽茉が冷静に言った。
「え…?」
ぽかんとした華に、にやりと微笑んだ萌莉先輩が近付いた。
「そぉかそぉか、華には陽茉が可愛いかぁ。そうだよなぁ、陽茉はめちゃくちゃ可愛いよなぁ、わかるわかる、うんうん」
にやにやと肩を叩かれて、華の顔が更に紅くなった。
「な、違…」
「誤魔化すなよ。わかってるからぁ。大丈夫、お姉さん応援しちゃる」
「もえさん」
陽茉が肩をすくめた。
「あんまりからかうと、はなちゃに嫌われますよ。別にはなちゃは失言しただけで、ぼくがどうこうとかじゃないですから」
「…」
華が微妙な表情で陽茉を見た。萌莉先輩も同じく微妙な表情で、ぽんぽんと華の肩を叩く。
「お姉さんは味方だから」
「もーいーです」
美人なのに、報われない子だ。でも、華には悪いが正直華と陽茉が並ぶと百合にしか見えない。何と言うか、目の保養だ。因に、貴咲と陽茉が並ぶと御伽話ちっくだ。
「折角だから、ぼくも何か甘い言葉とか言った方が良いですかね?」
気付いて居るのか居ないのか、陽茉がにっこり問掛けた。
萌莉先輩がちょっと考えてから口を開く。
「じゃあ華に」
鬼が居た。
貴方も鬼か。
「ちょー、西柳さーん?からかってるでしょー!?」
華が萌莉先輩を睨むが、そんなのお構い無しに陽茉が華の胸に飛び込んだ。
とろける悩殺スマイルで華を見上げて、
「華ちゃん、だぁいすき」
陽茉以外の其処に居た全員が、赤面して顔を背けた。
「甘…」
誰かが呟いた其の一言以外言い様の無い甘い声。
「魔性…」
真剣に、華が憐れに思えた。
拙いお話をお読み頂き有難うございました
上手い落とし方を考えようかとも思ったのですが
思い付く気がしなかったので
落ち無しです申し訳有りません
万一良い落ちを思い付いたら
こっそり更新するかも知れません
誤字脱字等気を付けているつもりですが
何か気になる点等ございましたらお教え頂けると助かります