三皿目
三話目にして漸く本題です。
間延びした語り口に苛っとなさる方は、三話四話の回避をお勧めします。
お話上問題在りませんので、五話まで飛んでお読み下さい。
「扨、華はどんな事をして私を楽しませてくれるのかな?」
華をからかうオーラ全開の萌莉先輩に、華は溜め息を吐いた。
「西柳さん俺で遊ぶ気満々じゃないですかー…」
其でも先輩命令に逆らわず大人しく相手をする華は、本当に出来た後輩だと思う。後輩への面倒見も良いからとても助かる。
「そーですねー…」
華が頬を掻きながら頭を捻る。
「じゃー、本当に在ったコワイ話でもしますかねー」
甘い話じゃないのか。
ついつい突っ込みながらも手元の文献に目を落とす。が、気になって集中出来ない。
駄目だな、わたしも。
「俺の上の姉の話なんですけどー、我が姉ながら本当に男を見る目が無い人でー、付き合っては手酷く振られーを繰り返してたんですー。姉にはー、幼馴染みがいましてー。此の幼馴染みって言うのがー、あの姉をして人生史上最悪の男ーと言わしめる超絶たらしでー、姉の初恋兼初彼なんですよねー」
もー其処から姉の人生の駄目ー振りがわかりますよねーと苦笑する華を見ながら、でも此の華の姉なら素晴らしい美人なんだろうなと思った。羨ましい事だ。
「姉が其の幼馴染みと付き合ってたのがー中1の時でー、まー中2迄ー、一年間以上保ってたーて、姉としては最長交際記録トップ2なんですけどー、其の破局の仕方が彼氏の五股発覚でー」
室内に何とも言えない空気が漂った。中2で五股って…どんだけや彼氏。
「まー姉の方も振られた其の日にー、熱烈アプローチ掛けて来てた相手に乗り換えてるんでー、お互い様なんじゃないかと思うんですけどー」
姉…。
「其処からー、ほぼ二月サイクルで彼氏取っ替え引っ替えするー、姉の波乱な人生が始まったんですよねー。告白されてー、付き合ってはー振られー、付き合ってはー振られー、でー。其の度うさ晴らしに付き合わされた俺はー、いーめーわくでしたよー」
華が肩を竦める。にしても、此処から一体どうやって甘い話に持って行くつもりなのか。否、コワイ話、だっけ。
「でー、そんな姉なんですけどー、二年程前、社会人二年目にしてー、転機が訪れたんですよねー」
お、来るのか。
「当時付き合っていたのは会社の先輩でー、もう直ぐ付き合って一年になるとゆー、初彼以来の長持ち彼氏だったんですー。中々相性も良かったらしくー、此の儘上手く行けば結婚迄持って行けるんじゃないかーてー、姉も期待してたそーですー。クリスマスが丁度一周年記念だったのでー、一緒に過ごそうねーて約束しててー」
良い感じじゃないか。
「でもー、直前に彼氏に外せない仕事が入ったとかでー、会えなくなってしまったんですよー。姉はー、終るまで待つよーてー、会社近くのカフェでずっと待ってたんですよねー」
健気だな。
「まー予定が無かったのを良い事にー、俺も無理矢理付き合わされたんですけどねー。受験せーを下らない事に付き合わせないで欲しかったなー」
うわぁ…災難。
「でー、まーナンパ男を軽くあしらったりしながら彼氏を待っていたらー、其のカフェの前をなんとー、例の幼馴染みがー、かーいー(可愛い)彼女連れて通ったんですよー」
雲行が怪しくなって来た気が…。あ、コワイ話だからか。
「二人で知らんぷりしよーとしたんですけどー、うっかりばちーり目が合ってしまってー。そーしたらー、思わぬ事に幼馴染みがカフェの中に入って来たんですよー。彼女連れですよ彼女連れー。なのに堂々と俺達の所に来てー、こんな日にこんな所で何やってんのーて。姉は彼氏待ってるのーてー、答えたんですけどー…」
華が苦笑した。嫌な予感しかしない。
うん、ホラー映画見てる気分だね。確かにコワイ話だ。
「ちょーど其の時ー、姉の彼氏がカフェの前をとーったんですー。胸のがつーり空いたー、ミニスカのー、気合い入ったワンピース着た女の子と腕組んでー」
ああ…。
「姉はー、唖然とした後ー、思わず笑っちゃってー。あちゃーまた振られたわーてー、俺に抱き付いたんですよねー。泣きそーなの堪えてー。そーしたらー、幼馴染みが姉を俺から引っぺがして言ったんですよー、抱き付く相手を間違ってる、来いー、てー。其の儘ー、姉引っ張って彼氏の所に連れてっちゃってー。かいけーもせずに出てっちゃうからー、俺持ちだったんですよー支払いー。幼馴染みの彼女さんはぽかーんだしー、もー散々ですよー」
華のだるーっとした話し方だから其処迄深刻に聞こえないが、結構アレな話じゃないだろうか。何と言うか、其の儘、昼ドラにでも出来そうな。
果たして此の先、甘くなるのか、コワくなるのか。
扨々、此から、如何成る。
拙いお話をお読み頂き有難うございます。
微妙な位置で打ち切ってしまって済みません。
誤字脱字等気を付けているつもりですが、何か気になる点等ございましたら、お教え頂けると助かります。






