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REAL WITCH ~ MISSING~  作者: 山極由磨
2/15

 軽くなった尻の財布を未練がましく撫でながら、花井の事務所がある中之島と大川を望むネオゴシック調の誇大妄想丸出し系ビルを出る。

 何気なしに天井を見上げると《ウァレフォルの紋章》をあしらったシャンデリア。

 大昔、ユダヤの王ソロモンが魔法によって縛りこき使った悪魔の一人のシンボルは泥棒よけに効果があり、下は一泊二千円のあいりん地区のドヤから、上は大阪駅前にそそり立つ超高層ビルまで、その意匠のどこかに忍ばせている。

 魔法などトンと知識のない彼ですら、その紋章や護符が示す悪魔や惑星の名前を知らぬまでも、何のために掲げられているかはボンヤリではあるが理解していた。

 それがこの大阪、いや、日本で生きるには最低限必要な暮らしの知恵と言う奴だからだ。特に、油断ならない夜の世界では。

 ちなみに、彼の務めるミナミのホストクラブ『チャンドラマハ』のエントランスの床には、刹那的な恋心を燃え上がらせると言う《金星の第五の護符》があしらわれ、客を骨抜きにしようと本人も含め他のホストらも、魔術師から買った《金星の第一の護符》をモチーフにしたアクセサリーをぶら下げている。

 まぁ、客は客で邪悪な誘惑から身を守る《月の第四の護符》を何らかの形で持ち歩き、ホストにはまり過ぎないように備えは万全なのだが。


 コインパーキングからパールホワイトのレクサスISFを出し通りに出る。客から買ってもらった車は大抵売り飛ばし金に替えるのだが、こいつは気に入り乗り続けている。

 御堂筋は韓国領事館前で難民のアボジやオモニらがデモをしていて大渋滞。朝鮮半島北部を巡って満州人民共和国との戦争に成るかもしれないとかで、韓国は在日韓国人まで徴兵すると言い出しこの騒ぎ、仕方なく谷町筋を南下する。

 土佐堀通りを天満橋で右折し、しばらくすると、左のリヤウィンドに大阪城が映る。

 一応『城』とは名がついているが、その見た目は誰が見ても城とは言えない。

 花崗岩と大理石で出来た直径百メートル、高さ百五十メートルの巨大なもので、更に高い五本の塔を五芒星の形に従える。

 まるでヨーロッパの大聖堂かイスラムのモスクを思わせる外観だが、その巨大さはどれにも当てはまらない。

 日本史上最強の魔術師であり、魔王とすら呼ばれた織田信長から、統一された天下と彼から強大な魔力を引き継いだ姪の茶々の二つをまんまとせしめた豊臣秀吉が、愛妾にして最も頼るべき魔術師である彼女のためにおっ建てた居城であり一大魔法研究施設。そして、今でもその中に大阪都庁と日本中の魔術師を管理監督する方術庁が置かれ、現役の建物として機能している世界遺産。と、二年の半ばで行かなくなった高校の歴史の授業で、居眠りで半分夢現の状態で聞いたことと、故郷の徳島から出てきて、実際にコイツを目の当たりにした時の気持ちも思い出す。

 正直彼は、文字通りド肝を抜かれた。人口一千二百万を超える日本第二の大都会にして、魔法と経済の都『大阪都』シンボル。今でもコイツを眺めるたびに自分は大阪で暮らしているという実感を味わえる。

 同時に、田舎者というコンプレックスも頭をグイッろもたげてくるのだけど・・・・・・。


 谷町九丁目の交差点で千日前筋へ、それから松屋町を南下し、続いて堺筋をさらに南に下る。

 表通りは東京の秋葉原と同じく電気街、その西側の通りはこれまたアキバと同じくサブ・カルチャーの街なのだが、それらの通りに囲まれた区域は魔法に関係する様々な商品を扱う店が、文字通りひしめく『魔法の町』と成っている。

 古今東西の魔道書や奥義書、惑星の護符や悪魔や精霊の紋章を作るのに欠かせない羊皮紙や金や銀などの地金、陰陽道や鬼道、修験道の護符に使う紙や経木、インセンスの材料となるハーブ類、術を行うのに必要な剣、杖、ペン、衣装の類、果ては犠牲にしたり使い魔にするための小動物や、魔術的な薬品を作るための植物や鉱物などの怪しげな品々が、築四十年から五十年は経っていそうなボロボロの雑居ビル達の、殆ど全てのすべてのフロアーで取引され、真夏でも真っ黒いローブやマントに身を包んだ魔術師たちが出物はないか?掘り出し品はないか?と量の目を皿のようにして歩き回り、似たような装束の店員たちも、一円でも高く奴らに売りつけようと手ぐすねを引いて待ち構える。

 大阪にいる魔術師の多くが、この界隈に工房であり事務所でもある《庵室》を構えるのも便利さを考えてのものだ。

 ただ、このあたりをうろついている魔術師は、良くて魔法結社でも下っ端で、親や師匠から受けついだ《株》を頼りに《白魔術師》をやってる程度の零細か、その《株》すらなく、魔法結社にも属さず、アングラな仕事で凌いでいる違法な《黒魔術師》が相場というもの。魔法結社の幹部に収まり帰り、大企業や政治家の顧問をやってる様な俗に大魔術師とか大魔女とか呼ばれる羽振りのいい奴らは、大阪城の周りにある坪単価一万円は下らないオフィスビルに、庵というには豪勢で機能的すぎる《庵室》を構えるのが普通だ。

 と、言うことは、この『武本慧』とか言う奴は、前者、早い話零細魔術師って事になる。

『花井のセンセイ、俺をガキや思うてええかげんな奴を紹介したんか?』そんな疑いが真也の中でムクムクと湧き上がる頃、目の前に通天閣が現れた

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