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竜殺し 08

このお話は全てフィクションです。

主な登場人物と用語

⚫︎立本吉成:本編の主人公。二十八歳。八歳の頃から竜を見て、竜と戦う強い力を持っている。

⚫︎立本武三:吉成の父親で六十歳。吉成と同じく竜と戦うが、止める力が強い。

⚫︎坂月大吾:吉成の又従兄弟にあたる弟分。二十五歳。公安に所属し、公安の立場から竜と戦う。守りが得意。

⚫︎結城士郎:武三の親戚で軍人。肩書きは少将。武三を何かと頼りにしている五十二歳。

▪︎和可津国:本編の舞台となる国。火山が多い土地で竜が多く出る。

▪︎竜:溶岩で体が出来ている化け物。天災と同じで多くの被害を出す。

 

 

 

 

 それから、さっそくの士郎は「大佐」と、部下を呼んで予定の変更を告げた。

 全員が付けている対竜装備の通信機器を、武三たちにも装備させるよう指示をして、隊を分ける作戦を練るため庁舎の見取り図を開く。

 

 覗き込む隊員に交じって、吉成と武三もそれを見た。

 囲む隊員たちは、興味深そうに武三たちの方も見る。

 

「先ほどはありがとうございました」

 そう武三に言ったのは、竜化症の対応をした医官である。

「彼は大丈夫じゃったか」

「はい。今は意識もあり、後遺症の気配もありません」

 

 そう言う医官の様子を見て、士郎が「途中だが、先に皆に改めて紹介しておこう」と、武三と吉成を促した。

 

「この度、顧問を務めてくださる立本武三さんと立本吉成くんだ。お二人とも、竜狩りをされて長い。武三さん、国防軍第二部隊先陣の面々です。対竜作戦を組んでいる専門部隊です」

 

 これに横に控えた大佐が「よろしくお願いします」と頭を下げる。

「お噂はかねがね伺っております」

 これに武三は「どうせ良くない噂じゃろう」と笑い飛ばした。大佐は「いいえ」と困った様子で首を振る。

 

「ご一緒出来て、光栄です」

 どこか感動すら感じる大佐の言いように、武三は少し驚いて志郎の方を見返す。

 当の士郎は小さく笑って首をかしげている。どうやら話は通っているらしいと、武三は士郎を見ながら肩をすくめた。

 そんな武三を横目に、士郎は大吾の肩を叩く。

 

「こちらは公安の坂月大吾くんだ。警察案件で対竜を組んでいる。何かあれば頼れる人物だ」

 その紹介に大吾は「とんでもない」と恐縮した。

 

「国防軍に比べたら、大したことはやってません」

「そう言うな。彼も竜狩りに覚えある腕前の人物だ。十分頼りになる」

 士郎は言って、場の部下たちを見渡した。

 

「以上の方々が今回、我々に協力してくださる。皆、昨日本部から、不審な撤退命令が出たのは知ってのとおりだ。これに躊躇することなく市民の安全を優先し、竜を追ってくれた君らを私は誇りに思う。しかし本部への確認も重要だ。それをこれからここで行う」

 

 士郎の言葉に、隊員たちは聞き入る様子だ。

 

「全員、通信機を離さず、二十分おきに相対点呼する。消火隊面々はそのまま屋外でドローン準備。庁舎とその周りを外から監視しろ。変化を見逃さずに報告だ。俺と吉成君、大尉の小隊五名で最上階からアタックする。大佐、君は立本顧問と玄関からだ」

 

 言われた大佐は「突入ですか?」と問いかけて、緊張の面持ちである。

 

「建前は安全確認のための入場だ。武器は持たず、サスマタと抗竜化剤を持てるだけ持って中に入る」

「目標は」

「おそらく竜化症にされた人間が多数いる。その対応になる」

 志郎が言うのに大佐は頷き、医官を呼んで皆の説明に当たらせた。医官は抗薬剤の打ち方と部位を、自分の首を指しながら説明する。

 

「ちなみに少将、もし想定の竜化症の人間が、いなかった場合はどうなります」

 そう聞く大佐に、士郎は「その場合は、私が上で責任を取る」と、建屋の上を指さした。

 

「この時間にですか」

「竜が出ている間だ。本来なら後詰だけでも、対応官が中にいる」

「上からの突入は、言い訳が効きませんが」

「だから私の責任になる。心配するな」

 これに大佐は「はい」と固く頷いた。その横から呼ばれた大尉が、士郎を見る。

 

「ヘリ無しのこの装備で、上からとなると、下から上がるしかありません。さらに屋上での引き上げ機の設置で二十分はかかります」

「仕方ない。壁伝いに下から上がってからだな」

 そう言う志郎に、吉成が手を上げて口をはさんだ。

 

「何だったら俺が運ぶけど」

 志郎は吉成を見て、「いけるのか」と聞くので、吉成は「大丈夫だろう」と胸を張って答える。後ろから大尉がギョッとした顔を見せた。

「無茶な。引き上げ機は、7機で百キロ近いんですよ?」

 

「いや、大丈夫。いけると思うよ。屋上に上がって、それ置いてくればいいんだろ」

 こともなげに言う吉成に、士郎が設置の説明を大尉に促した。

 

「彼は特別馬鹿力だから、いけるといったのは本気の話だよ」

「バカは余計だって」

 文句を言いながらの吉成は、大尉の横について「使い方教えてくれ」と教えを乞うた。大尉は唖然を口を開ける。

 

「いや、運ぶってあんた、そもそもどうやって上に運ぶんです」

 あきれる様子の大尉に、吉成は「壁を足場にして、上に登るんだよ」と大吾に言ったのと同じことを言った。それに大尉は「何ですって?」と首をかしげる。

 

 その反応に、説明が面倒くさくなった吉成は手を振った。

「実際、見てもらった方が早いや。上に運んでみせるから、その引き上げ機とやらの使い方を教えてくれよ。大丈夫、力を使えば壁登りなんて早いんだって」

 

 初対面の大尉相手に、どこか不遜にいう吉成に、志郎は笑った。

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