表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

竜殺し 06

このお話は全てフィクションです。

主な登場人物と用語

⚫︎立本吉成:本編の主人公。二十八歳。八歳の頃から竜を見て、竜と戦う強い力を持っている。

⚫︎立本武三:吉成の父親で六十歳。吉成と同じく竜と戦うが、止める力が強い。

⚫︎坂月大吾:吉成の又従兄弟にあたる弟分。二十五歳。公安に所属し、公安の立場から竜と戦う。守りが得意。

⚫︎結城士郎:武三の親戚で軍人。肩書きは少将。武三を何かと頼りにしている五十二歳。

▪︎和可津国:本編の舞台となる国。火山が多い土地で竜が多く出る。

▪︎竜:溶岩で体が出来ている化け物。天災と同じで多くの被害を出す。

 

 

 

 

 士郎が武三の力の稲妻で竜化症を回復しつつ、中央の国防軍指本部についたころには、夜中の十時を回っていた。

 

「嘘みたいに震えが止まりました。さすが武三さんだ」

 機嫌よさそうに首を撫でていう士郎に、後ろの武三は「調子に乗るんじゃないわい」としかめ面をする。

 

「お前に言わせると、ここから本番だろう」

「まあ、そうです」

 

 苦笑いの士郎は、乗車のままで運転手の大吾を所内へと誘導する。

 門衛には武三たちの入所手続きを求められたが、士郎の説明で入門書類の記入すら必要ないとのことだった。

 

「名前くらい書くけど?」

 尋ねる吉成に、士郎は「今はやめとけ」と難しい顔で答える。

 

「即時出動もあり得るので、上には私から報告する」

「承知しました」

 門衛は答えると、面々の身分証を目視で確認したあと、通行のため門扉を上げた。

 

 士郎は重ねて通行の際に「変わったことはなかったか」と確認したが、「特に報告はありません」との門衛の返答だった。

 

 所内を進み、門から見えなくなった距離の駐車スペースに車を止めて、車を降りた士郎は司令部の建物を睨む。

 見上げるほどの立派なシンメトリーの造りである玄関の構えは、煌々と明かりをともして不正などとは無縁に見えた。

 

「静かなもんじゃな」

 窓越しに武三が言って、部隊一行の車が駐車場に次々止まっていくのを片目に車を降りる。

 大吾もそれに続いて、一帯を見やった。

 

「外からしか見たことはなかったが、バカでかい作りですね」

「大きいだけじゃなく、防備もしっかりやってるようだ。当てが外れたな」

 大吾の後ろから言った吉成が、細い稲妻を走らせている。

 

 壁に当たったところから、雷筋がかき消えていた。

 竜の力が簡単に入れないという意味だ。

 竜の侵入は特定の超音波や電波である程度防ぐことができた。その周波数は発電機や電波塔から、回線を分けて街中にも張り巡らされている。

 

 士郎は「ふむ」と頷いて、少し安堵した様子を見せた。

「所内では二重以上に防御回線を設けてある。どうやら防備システムが、完全にオフになったわけではないようだな」

 

 言った士郎は隊を呼んで、車両を点検してから各自休憩するよう命令を出すと、他と分けて部下である大佐を呼んだ。

「司令部に顔を出す。君は付き合え」

 言ってから武三たちに顔を合わせる。

 

「司令部から、出現した竜を無視するよう伝達があったのは昨日の夜です。それから本部と北部支所経由で、衛星画像の確認を再度依頼しましたが、返答はありませんでした。司令部に何かあったとすれば、本部内の誰かが気づくはずですが、そういった報告も見たところ上がっている様子がありません」

 そう話す士郎に、武三は「回りくどいのう」といた。

 

「要はお前に言わせれば、ここの司令部とやらに何かあったと思うんじゃな?」

 士郎は持っていたヘルメットを、手でまわしてから武三に渡す。

「何かあったのは、間違いがないんですよ。他の支部からの呼びかけにも返事がないので。問題はどの程度かということです」

 言い切る士郎に、大吾が手を上げた。

 

「ここ以外から、確認できるアプローチもあるけど試しますか?」

「どんな方法だ?」

「警察経由で司令部面々の自宅の方を確認するんだ。案外、何かあれば家の方に伝わってるもんだよ」

 士郎はうつむいた。

「いい方法だと言いたいが、内部の記録は私的なことまで、本部内総務室の管理だ」

 

 大吾は不思議そうに首を傾げる。

「機動隊の情報があるんじゃないのか」

「別個だな。それに機動隊の上だからといって、普察側に適正資料を渡してるとは限らないよ」

 士郎の答えに、大吾が「むう」と唸る。吉成は「自宅は回ってもいいが、後のほうがいい」と、横から付け加えた。

 

「なんでそう思うんだ」

「自宅に不味さが出ている奴ほど、問題の元凶だろう。防備が一見これだけ硬くて、中が不味いとなると、その元凶の特定は、対応力があるとこがやるべきだ。一般警察官の手には余るぞ」

「どのみち行かなきゃならんのにか」

 大吾は不満そうである。吉成は笑った。

「お前が行くなら止めねえけどね。お前レベルが、警察に何人居るかって話だよ」

 

 言いつつの吉成が、両手で電雷を遊ぶ。

 

「そんなことより、外れた当てがはまったようなんだ。ここが不味い理由を一個見つけたぜ」

 

 武三が持ったヘルメットを志郎に返して、「言うてみい」と吉成を促す。

 吉成は稲妻を走らせたまま、両手をあげてみせた。

「こっちと、こっち、見ててくれ」

 

 言って両手で放出した雷を、片手ずつ吉成はまたも建物に向かって投げやる。すると片方だけ壁で消えずに、柱に沿ってから地面に流れた。

 武三は「増幅したな」と見たままを言う。

 

「どんな感情で投げた?」

「竜が嫌いってのと、竜が嫌いじゃないってので投げた」

「えらくファジーだな」

 大吾の指摘に、吉成は「周波数なんてそんなもんだぞ」と吉成は返す。

 

「電雷の波長は、気候や湿度でも変化する。それに同じ周波数を長く使っても、竜の方が慣れやがるからダメなんだよ」

 吉成が言うのに、武三が頷きながら髭を撫でる。

「残ったのは、竜に好意を持つ方の稲妻じゃな」

 武三が言ったので、吉成は「その通り」と笑って返す。


「これじゃ防備があべこべだ。力を呼ぶための電雷だと、それも弾いてるようだから、一見は気づかないね」

 吉成は言ってから、志郎を見た。

 

 士郎は難しい顔をする。

「まさか防備システムの点検時に、周波数がずらされたのか」

「人間じゃなく、竜がそのための核を置いて、直接これをやってる可能性もあるよ。ここからさっきの山間まで二百キロないだろ。竜の狙いがここだとすると、小父貴の体調の原因も案外これだぜ。中の人間全員、同じことになってても不思議じゃない」

 

「どのみちこの状態では、うまく確認できんな」

 士郎が大佐の方を見た。

「もう二人付き合わせる。選出してくれ」

 大佐は「はい」と返事して、車周りを見ている部下たちの方へと走った。

 それを横目に吉成は、士郎に「嫌なこと言っていい?」と話を振る。

 

「確かに中は今まずい状態なのかもしれないけど、まずい事をやってても、反応が全くなくても、よそから報告は上がるよな? 誤魔化せるほどの不味さで、中がはっきりしない状況ってことになると、庁舎内の機能丸ごと竜に握られてるっていう、一番良くない事態の可能性がある」

 

 大吾が横から「機能丸ごとっていうのはどういう意味だ」と尋ねる。

「例えば命令があって、連絡を取るための手段があるとする。それが周りから見て、無事やってるように見えるよう、連絡を持っている人間や機材から竜が握るんだよ」

 大吾は嫌な顔をした。

 

「お前の言いようだと、竜が電話やパソコン使ってると言うことになるぞ」

 吉成は「そうなる」と悪びれずに笑った。

「バカ言うな。竜はマグマの塊だぞ?」

 

「お前は妙に守りが固いから、見たことがないんだろ。俺は実際、奴が目の前でスマホを取って、使ってみせられたことがある。生意気にパスコードも突破してたぞ。それ以来俺も、竜狩りの時は携帯持つのやめたくらいだ」

 大吾は武三の顔を見た。

 

「そうじゃな。わしも見たことがあるから、間違いない本当の話だ」

 答える武三に、大吾は唖然とした様子だ。吉成は面白そうに大吾を小突いた。

 

「奴にとっては遊びなのさ。顔さえ把握していれば、そいつに見えるそっくりの影を出してくることもザラだ。お前も竜の惑わしは、受けたことがあるだろう」

大吾は「あるにはあるが」と不承不承だ。

「それは本人がいないと、出せないんじゃなかったか」

「だから居るんだろう。本人が、中に」

 

 吉成が言ったのに、士郎は吉成を見る。

「竜が機能を代替するシステムを組んだとして、外からの連絡の応対と、通退勤の人物なども映せるものか」

「乗っ取った領域の範囲でなら、できるだろうな。人間を映して騙すのも、奴の趣向だ」

 

「会話などは?」

「取り込んだ本人を、竜化症のまま、昏睡させて使うことがある。だからまあ、難しい会話はできない。しかし、中にいる人間が昏睡しているとなると、まだ助けられる手はある」

 

「そうなると、ここ本部から俺への撤退命令が一日前だ。竜の出現から一日、ここを観察していたという事か」

 士郎はゾッと本部の建物を見る。

「狙えばできると、言いたいわけだな」

 士郎が口惜しそうに言ったので、武三と吉成は互いに顔を見合わせてから、そんな志郎を見た。

6話です。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ