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学院潜入







いっけなーい遅刻遅刻☆僕エル‼︎ピッチピチの十六歳‼︎悪徳上司ことまおーに命令されて大陸統一国家『シューレン』の首都にある学院に入学(潜入)することになったの‼︎なのに新学期早々寝坊して遅刻寸前⁉︎僕の新生活一体どうなっちゃうのー⁉︎








僕の名前はエル、エル・ディアブロだ。トラックにぶつかって死んだら異世界にオギャーと生まれ直し森にポイされたが紆余曲折を経てまおーに拾われた。そんな僕は今や魔國軍の幹部だ。


魔國軍幹部ーー四天王とも呼ばれるーーは合計八人。僕を含めた内四人は秘匿された“裏”四天王だ。

魔國軍の規模は凡そ四千万ほど。つまりその中で上位九人の中にいる僕は凄いのである。


現在この世界は大陸間戦争真っ只中である。僕が所属する魔國『トバリ』の魔族領と大陸統一国家『シューレン』の人族領との数千年に及ぶ海を隔てた大陸同士の戦いである。


基本的にこの戦争は魔族領が優勢を保っている。が、百年に一度、人族領に傾くことがある。勇者の誕生だ。勇者は対となる存在、魔王と戦うことになる運命の下に選ばれる。


とはいえ生まれた時から勇者だと決まるわけではない。十六歳で成人すると同時に“魔力持ち”のみが行う“選職の儀”にて決まるのだ。








“選職の儀”【せんしょくーのーぎ】 魔力持ちのみが行う成人の儀式である。この儀式は数千年に及ぶ歴史を持ち、その方法は地区によって異なるが一般的に教会にて水晶に魔力を注ぎ、唯一神シュリエルからの神託を受け取る方式で行われる。

 魔力持ちは成人となる十六歳の誕生日に、この儀式によって天職が定められる。

 また、“勇者”“聖女”といった特別職は神により魔力保有量などの素質と元来生まれ持った性格などで百年に一度選ばれる。


      出典   国立シューレン学院

         神史教科書三ページより








逆に魔王は生まれたと同時に決まる。先代魔王の血縁である魔王族だけがなれるのだ。魔族は基本的に寿命が人間の五、六倍程だが魔王族は特に長く、千年は超えるらしい。

魔王族でも魔王に選ばれる者は条件があるらしいが、それは誰にも明かされていない。


さて、なぜ数千年もの戦争に勝敗がつかないのか、それは魔族と人族の総数に差があるからだ。前述の通り魔族は人族に比べて寿命が長いため子孫を残さなければいけないという意識が低い。そのため人口は、人族領にいる魔族や人型でない者含め一億人程、人族の1/8程にしかならない。前世でいうところのモンゴルくらいの人口密度だ。


逆に人族は人族領にいるのだけで八億人ほど、その中でも魔力持ちは半分程で四億人くらい。とはいえ人族は科学が発展しているので魔力持ちか否かは一般市民にはあまり関係ない。

基本的に魔族の方が個の能力としては優れているが人族にも偶に魔族以上に魔力保有量が多かったり力が強いような化け物が生まれるので、割と戦力はトントンだったりする。


勇者の誕生に伴ってそういう者が現れやすいので今まで魔王は勇者に敗れ続けている。とはいえそれは仕方ないとしかいえない。

一定以上魔族領が優勢に傾くと勇者が生まれ、魔族領を統治している魔王を倒しに行く。

勇者には魔族、そして魔王特効の神の加護が掛かっている。逆に魔王は自分の玉座の間以外で勇者を殺すことはできず、勇者に相対すると弱体化するような呪いがかけられている。これでどうやって勝てというんだ。

神はどうしても勇者に勝たせたいらしい。

いや、少し違うか。どうしてもこの戦争を終わらせたくないらしい。


勇者が魔王を倒すと人族領の士気が上がり一気に人族が優勢になるがそのまま押しきれないのは魔族の性質にある。魔族は弱肉強食の思想が強く出ており、強さの頂点である魔王に全ての者が従う。

その絶対的な王が死んだとなると一時的に士気は下がるが数日で元に戻る。魔族の薄情さが窺えるがそういう性質で生まれてきたのだから仕方ない。


とはいえ敵討ちをしようと勇者を探しに行く魔王の忠臣もいる。

さて、勇者は魔王を倒すと勇者でなくなる。魔族特効の加護がなくなるのだ。

そんな状態で魔王の忠臣、例えば魔國軍幹部の戦うとどうなるかは一目瞭然だ。勇者はすぐに死ぬ。それで結局人族側の士気は下がり戦況は元通りというわけだ。


神の性格の悪さがわかる。奴は僕らなんて娯楽でしかなく、偶にスパイスを求めて勇者と魔王という要素をぶち込むのだ。


まおーことうちの悪徳上司はそのことに気付いた上でその運命に抗おうと必死だ。だから僕もその手伝いをすべく人族領に潜り込んでいるのだ。人族である僕ならシューレンの情報収集がてら勇者の仲間になる事ができるから。


そして勇者は必ず学院に来る。一年間学院で学び、力をつけ、仲間を見つけ、戦いに出る。とはいえ戦場まで行くのでなく、冒険者として仲間たちと共に旅をしながら強くなっていき、魔族領に行く。勇者は戦争をする軍人ではなく、魔王専用の戦士だからだ。


勇者の仲間になるには二つ方法がある。

学園で優秀な成績を納めつつ、勇者の友人として選出される方法と、冒険者ギルドに登録して冒険者として勇者に実力を見込まれる方法だ。

二つ目はどうしても運にかかっている。ならより確実なのは一つ目。

なので僕は学院に入学したわけだ。



国立シューレン学院は成人し、天職が定まった魔力持ちだけが通える人族大陸唯一の魔力持ち育成学校。受験資格は満十六歳であることと魔力持ちであることのみ。それなりに厳しい試験を突破さえすれば、学費や寮での生活費は国によって賄われるという高待遇が待っている。


しかも成績上位者には給付型の奨学金制度もあり、簡単に言えば学院からお小遣いがもらえる。首席で合格した僕は毎月×万リエル(一円=一リエル)をもらえるのだ。まぁ、成績が下がれば額も少しずつ下がっていくので真面目に学院生活を送ろうと思う。










まぁそれも今ちょっとピンチなんだけどね⁉︎


朝の鍛錬をしていたらとっくに登校時間を過ぎていたのだ‼︎やばい、退学させられる…


というのも、学院は基本的に時間厳守、校則厳守だ。入学初日から遅刻なんて正直退学になる可能性少なくない。それを覆すには、遅刻を許してしまうほどの理由がいる。





例えば、魔物が襲ってきたのを食い止めた、とか。





魔物、それは動物の中でも魔力を持ち知性と理性を捨てた生物。基本的に人族領、魔族領のどちらでも見つけ次第殺すか逃げることを推奨している。(ちなみに肉が高く売れる場合もあるので冒険者は基本殺して捌く)


それとは別に魔獣という者たちがいる。彼らは獣型に分類され、人権(獣権?)を持つ歴とした魔族の一種だ。高い知能と理性を持ち合わせた種族で、高い身体能力を持つ。ごく稀ではあるが魔物が魔獣に進化する場合もある。

それとは反対に、魔獣の子は魔獣になるのが普通だがごく稀に魔物として生まれてくるものもあるらしい。まぁ、僕は見たことがないので本当に稀なケースだが。


魔物と魔獣の違いを判断するには言語能力の有無、後はまぁ見ればわかる。魔獣の方が基本的に威圧感というべきか、存在感を放っているからだ。とはいえ魔物と間違えられて魔獣が殺されることもよくあるため魔獣は基本的に集落から出ないのが特徴だ。





話は戻り遅刻の話だ。僕が今何をしようとしているのか、勘のいいガキの諸君なら気付いただろうが、自作自演である。そう、遅刻を覆すために魔物を召喚してぶっ殺そうという訳だ。成功すると遅刻を覆すだけでなく逆に学院からの信頼を得られる正に一石二鳥の策‼︎僕は天才なのだ。


あまり強すぎる魔物だと逆に怪しまれるし、実力は隠しておけと言われているからちょうどいい塩梅というのは難しいものだ。本気で自分にデバフを掛ければ1/10くらいの実力になるか?

とりあえず1/10くらいの力で倒せる奴は…うーむ、悩むな。電狼くらいでいいか?


電狼はその名の通り狼型の魔物で魔獣へと進化すると紫電狼という種族になる。

一メートルもない小柄な体躯で全身に電気を纏っており近接戦闘だと感電する恐れがあるためランクCに認定されている。(ランクCとは冒険者でいうとベテラン、凡人の最終到達点)

また、紫電狼になると体長はニメートルを超え纏う電気が紫色になる。体躯に見合うほどに力も強くなり特に爪を使った攻撃は鉄板を易々と切り裂くほどである。

ちなみにその見た目のかっこよさから魔族人族問わず全男子の憧れである。


話が逸れたがつまり電狼はそこそこ強くてそこそこ弱いちょうどいい塩梅というわけだ。


そういうわけで召喚をする。本来魔獣や魔物の召喚は天職が召喚士のやつが得意とするところで僕は苦手な分類だが猛練習した。なにかと便利だからだ。ただ、やっぱり苦手なので詠唱をしないと上手くいかない。使い勝手は悪いな。


ちなみに出てくる魔物は自分が見たことのあり、なお且つ自分より弱いものだけだ。どっかの生息地から急に連れて来られるので基本どいつも気が立っている。



「我汝を求む。汝我が願いに応えよ。【召喚】」



空間に急に穴が開き、電狼が落ちてきた。困惑していたようだがすでに召喚されたことを悟ったようだ。牙を剥き出しにしながら攻撃してくる。実力差もわからない馬鹿だったか。


「グルルルッガァッ」

「っと、わざと攻撃を受けておかないとな。…ははっ‼︎痛い痛い」

「ア゛ァァァオォォォン‼︎グルルッ」

「どんな叫んでも仲間は来ない。無駄だ…っと。人が話していることは聞いたほうがいいぞ」

「グルルッ‼︎ガオッ‼︎」

「…ある程度の傷は負ったしもういいか。『影舞・火影』」

「ギャウッッ」


電狼の足元に伸びる影から炎がでてきた。至近距離から燃やされ、避けられずに電狼が喘ぐ。


これぞ僕の天職“影操士”の十八番、『影舞・火影』である。そして影操士の固有スキル・『影舞』において唯一の四大属性技だ。正直すごくかっこいい。『影舞』という言葉は言わなくても使えるがその方がかっこいいからな。まぁ、威力の上昇も望める訳だが、本来ならコイツ相手にそんな必要はない。たださっきも言った通り最大限にデバフをかけているから必要なのである。いくら自分にかけるバフデバフは威力が上がるとはいえ、こんなに大幅にデバフをかけられるのも僕の鍛錬のおかげである。ふふん。


「グギャッ⁉︎グガァッ‼︎グ…」

「死んだか?」

「…」

「死んだな。よし、連れて行くか」



丸焦げになった電狼の前足を掴み校舎へと歩いて行く。校舎の目の前には仁王立ちの教師がいた。キリッと上がった眉と反対に優しげにタレた金茶色の目のイケメンだった。勝色の、前世で言うところのウルフカットというんだろうか?襟足が長い髪は、苅安色のインナーカラーが入っていて随分とモテそうな見た目だ。教師は俺を見るなり目を釣り上げ…目を丸くしていた。


「だ、大丈夫かい?それは電狼?」

「遅れてすみません。朝の鍛錬の後、学校の周りの森で電狼に襲われて」

「…職員室に行こう。詳しくはそこで聞くよ」

「はい。あの、これを持つの手伝ってくれませんか」

「君にそのまま持たせる訳ないだろ。ほら、貸して」

「空間魔法ですか。助かります」

「…ふむ、丸焦げだね。君、天職はなんだい」

「影操士です。幼少期を魔族大陸で過ごしたもので」

「‼︎君か、今年度の首席は…話は聞いているよ。入試では教官を圧倒したとか」

「まさか…手加減されていただけでしょう」


入試、か。入試は現役の教官に一撃を入れる、というものだった。思っていた以上に弱く、ついやりすぎたのだ。本気ではないが。


「ふふ、面白いね。確かに彼は新人且つ実技担当ではないが、少なくとも手加減はしていなかった。ランクDほどの実力はあるはずだ。あぁでも、君は電狼を仕留めたんだったね、なら容易いことか。君、名は?」

「エルです」

「エルくん、か。ボクはハク。天職は“闇魔導士”だ。同じ魔族大陸出身同士仲良くしようよ」

「…へぇ。よろしくお願いします」


魔族大陸出身者が教師?このシューレンの学院に?ふむ、冒険者上がりというやつか。ならこの人は少なくともランクB…もしくは、この大陸に二十人もいないというランクA…ははっ…面白い。



さっきも言った通り魔族大陸には人族はほとんどいない。ある程度の貿易はあるので完全にいないわけではないがごく少数だ。そして、魔族大陸出身の人族はある程度の疎まれる。そりゃあ敵の本拠地で育った人間なんざスパイかと疑われても致し方ない。実際僕のようなスパイもいるんだしな。少なくとも心証はよくないだろう。


つまり、このハクという教師がそのデメリットを覆すほどの実力者である可能性がある。要注意リストに入れておいて損はなさそうだ。


ボロを出さないために、まおーに言われた通りクール無口キャラのガワを被ることにした僕は“俺”としてこの学院で生き抜く。寮制のこの学院ではとくに細心の注意を払わなければ。


まおーのために頑張るぞ‼︎





普段二次創作(夢小説?)を数シリーズ並行して書いている人間でございますので更新速度が鬼のように遅いです。月一更新を目指しております。


カクヨムにて同じ物を投稿しております。どうぞよろしくお願いいたします。

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