表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

008:ドミニオン領(塩とニガリ)

 翌日、私は1人で領主館を訪れました。ドミニオン領の文官と今回の視察の打ち合わせをする為です。宰相を通して必要となる道具や機材の設計図は事前に渡してありますので、出来上がっている機材の確認と、どの順番で、どこを回るのか、何日ぐらいで結果がでるのか等なのでスムーズに進みました。

 タバタ男爵が最も興味があるコメはドミニオン領の南部で栽培が多いそうなので、海に先に行って塩の設備を整えてから領都に戻り、コメの見学に行くことになりました。

 タバタ男爵は私が打ち合わせをしている時に護衛騎士とメイドを連れてドミニオンの領都を散策されたようです。食料品の品ぞろえは生産地だけあって王都よりも新鮮な食材が多くあったそうです。ただ、目新しいものは無かったと言っておられました。


 翌日の早朝、私たちを乗せた馬車は海へと進みます。ドミニオンの文官を乗せた馬車に道案内をしていただき、馬車に揺られ潮の香りのする村と言いますか小さな漁港に到着しました。

 まずは漁港を視察します。ドミニオンの文官の案内でこれから領都に運ばれる予定の箱に入れられた色とりどりの魚や貝を見て回ります。私は魚に詳しくないので名前までは分かりませんがとても美味しそうです。タバタ男爵も楽しそうに文官や漁師と話をしています。

 そして本日の目的地である漁港の近くの砂浜へ移動します。砂浜では塩を作る機材の設置と作業の指示になります。風通しの良い浜辺で、タバタ男爵は小穴の開いたとい、すだれ、などなどの機材の組み立て指示をしています。すだれは聞いたことが無かったのですが、笹竹を編んだだけで良いそうなので、その様に指示しました。出来上がったものは、直ぐ倒れそうな塀のようなものです。両側に階段があり、上部の樋に海水を入れて、少しづつ、すだれを伝って、海水が下に落ちてくる装置のようです。落ちてきた海水は、下の樋を通って、タライに集められるので、その海水を階段で上に持っていき、樋に入れるという作業を数回するようです。繰り返すことによって海水の濃くなるので、塩を取り出しやすくなるそうです。私には難しくて良く分かりません。この作業には時間が掛かるとのことなので、塩になるのは数日後だそうです。大きな平鍋で煮る作業もあるとのことなので、魔道具のカマドを作り、平鍋を設置して、2日後に来るからという事で、作業員には繰り返し海水を流すように指示して本日の作業は終わりになりました。


 海水は濃くするのに数日かかりますので、本日はドミニオン領で1番大きい漁港に来ています。1番と言うだけあって、今は昼近くなので朝の漁を終えた、大小さまざまな船が数えきれないくらい停泊しています。魚の荷揚げも終わっているようで、漁港にいる人はまばらです。お店を覗くと大きなタライの中で魚が泳いでいます。赤い大きな魚、小さい魚、さまざまな種類がいるようです。別のタライには貝が入れられています。こちらも縞模様の奇麗なのとか、大きいの小さいのがいます。

 お店から少し離れたところでは火が焚かれ、魚や貝が焼かれています。今日はタバタ男爵を歓迎するために新鮮な魚介を焼き、食べる、浜焼きといううたげです。魚は火魔道具より直火の方が良いのでしょう。魚の焼ける匂いが食欲をそそります。タバタ男爵も私と同じように焼き魚を気にしています。これは食べるしかありませんね。

 魚貝の焼き場は石を組んで作ったカマドに鉄の細板を平行に並べて、下から火で炙っています。板の隙間から炎が出ています。炎に炙られ、魚貝が良い感じに焦げて、良い匂いがします。大きめの魚と貝を1つずつ2皿もらい近くのベンチに腰かけてタバタ男爵と食します。魚は程よく焼けたさっぱりした白身で、貝は波型の蓋のついたものです。タバタ男爵が言うには、魚はタイで貝はホタテだそうです。どちらも美味しいです。この外で焼く感じは王都では無理なので、あぁ、でもお祭りの時は外で焼いてましたね。護衛の騎士たちも一緒に魚貝を堪能たんのうしました。


 漁港を視察したりして2日後、塩の波辺を訪れました。海水の方は指示した作業が終わっており、今度は平鍋に濃くなった海水を入れ煮ていきます。焦がさないようにヘラでかき混ぜつつ、水分を飛ばしていきますが、水が減ったら濃い海水を足しての作業の繰り返しです。半日ほど繰り返すと白いものが目だってきました。そして夕方には水分は少なく、白いものは多くなっていました。少し残っていた水分をタバタ男爵は壺にくっています。タバタ男爵は壺に指を入れ、味見をして顔をしかめています。失敗したのでしょうか。タバタ男爵は私に壺を差し出されたので、同じように舐めてみました。

「苦!・・・何ですか?これ」

 何ですかこれは、非常に苦いです。壺の中身はニガリというもので、以前にタバタ男爵が言っていたトウフの材料になるようです。白い方が塩という事で、火を止め、平板に移して乾燥させるようです。こちらも味見してみましたが塩です。すばらしい。ただ、いつも食べている塩とは少し味が違うようで、タバタ男爵が言うには、いつものは岩塩で、これは海塩だそうで、山と海の違いが、味の違いだそうです。

 今回はお試しという事で量が少ないですが、数日間、海水を濃くする作業をして、1日から2日掛けて煮詰めていけば塩が手に入るようになります。王国にとって塩は重要なので定期的に入手できるのは、とても有意義です。王国の産業として大量に生産できるのであれば、他国に輸出することも出来るようになると思いますので、タバタ男爵の王国への貢献度は高いと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ