恋愛弱者
初めまして。ここへ書き込むのは初めてですので簡単な紹介をしたいと思います。名前はそうですね、適当に高村謙志とでもしておきましょう。大学は、まあ国内トップのとこと言えば分かるでしょうか。大手商社の営業で働いてます。
小さい頃から何か飛びぬけたものがあるわけではありませんでした。でも特別不得意なものがあるわけでもなかったです。
目立たず、穏やかに過ごしていました。
みんなの輪の中心にいるわけでも、教室の隅にいたわけでもありません。成績が振るっていたわけでも、留年スレスレというわけでもありません。何か熱中できることがあったわけでも、極端に何かを嫌うというわけでもありません。
普通の、波風が立たないような生き方をしていました。
そのことを自覚するたびに恥ずかしさを覚えました。ここまでの長い人生を何にも費やせていない、寿命が目減りしていることを自覚しながら何にも使うことの出来ない言いようもないもどかしさ、「あんた、今まで何やってきたの?」「何もやれなかった、いや、やってないのか」「アハハ」「アハハ」という言葉が脳の中でこだまして、でも何かをするというわけでもなくただ時間を使っていました。
でも相談するにしても、友達に相談しても、どうやって相談したらいいかわかんなかったし、そもそも私は話を振る方じゃなくって振られる方だったので友達に振り回されていました。
私の人生で初の転機、何か特別なことが起ったのは中学最後の年のことでした。当時、私にもいっちょ前に好きな人がいまして、同じ学校の女子で、とてもかわいい、それでいて優しい人でした。と言っても、当時それほど親しい間柄なわけでもなかったので、遠目で見た感想というだけだったのですが。それで、卒業したら普通はもう会わなくなるわけだし一か八か行ってみようと、今でもなんで自分にそんな度胸があったのか分からないんですけれども、まあ不思議な力とでもいうのでしょうか。それでTalksで
「突然ですみません、付き合ってくれませんか?」
って告白したんです。本当に突然で、それまでTalksで話したことなくって最初のトークがそれになったんですよ。今思うと馬鹿だなあとなるんですが、当時の私は大真面目で悩みながら送ったんですね。そしたら
「ちょっとすぐには答えられない」
って言われて、ああ、お察しだなって返答じゃないですか。でもそれから一時間ぐらいした後ですかね、突然、
「いいよ!よろしくね!」
って返信来て、もう嬉しさやら驚きやらがあふれでて変な気持ちになって、でもやっぱり嬉しくって、その一日中にやにやしながら過ごしてたんじゃないですかね。それから学校でもTalksでもよく話すようになって、週一で一緒に学校から帰ったり、年に二回くらい一緒に遊びに行ったり、今まで彼女いたことなかったんで、そういうことが出来るってことが嬉しかったんです。まあ、バレンタインとかクリスマスとかは彼女の方に予定あるって言われて一緒に遊んだりは出来なかったんですけどね。
それ以来勉強にすごい打ち込むようになって、彼女のことが好きだったから見合う男になりたいと思って、将来的に結婚したときに不自由ない生活が出来るように運動はどう頑張っても出来なかったですけど。それに、彼女のために頑張っている時間だけは自分の人生に意味があるような気がして。別に彼女と連絡できればいいやと思っていたのでそこまで多くは無かった友達とも疎遠になっていって、その分彼女との関係をもっと大切にするようにして、、、っていうループに入ってました。
高校は彼女とは違う学校に入りました。自分の力で受かる最大限の所を受けました。彼女と学校で話したりとか、そういう時間は無くなりましたけど、自分の彼女への思いは本当だったし、彼女もそれをわかってくれてたみたいだったんで、勉強に励むことができました。
高校でも友達らしい人は出来ませんでした。でも別に寂しいとは思いませんでした。彼女のために勉強して、人付き合いも出来るだけ少なくして、彼女のためにお金を使って、予定だって彼女の予定に全部合わせたし、全部彼女のために、彼女のためにって。
それで、付き合う以前では全く考えられないほど成績上がって、高校最後の年には全国最高峰の大学を目指せるまでになりました。三年の年は彼女も受験に打ち込みたいってことであんま会えなかったんですけど。それがまた勉強に打ち込ませてくれて。
結局、国内一位と言われるような大学に入学できました。
彼女はどこにも受からなかったみたいなんですけど、正直どうでもいいなって。どうせ僕が養ってあげられればいいなって思ってたし。
まあ大学通いをしている私としていない彼女では時間があう訳なかったんですけど。昼は私が大学で忙しいし、夜は彼女のほうで忙しいらしいし。
それでも必死に頑張って、大学も成績上位で卒業して、就職先も大手に就職出来て、同年代の中で収入は高い方で、東京で二人で暮らせるようになりました。
ちょうど私が働き始めた段階で同棲し始めました。私はインテリアとかおしゃれとか全然分からなかったんで、彼女に全部丸投げしました。正直言えば、全然好みじゃないデザインのものもあったけど、彼女が満足できればいいやと思って特に口出ししませんでした。
すいません彼女とご飯食べてくるんで少し待っててください。
えっと、どこまで話しましたっけ?ああ、同棲し始めたところか。
まあそんな流れで同棲したんですけど、やっぱり生活リズムは合わなくて。自分は夜遅くに帰るし、彼女は朝僕が会社に行くぐらいに帰って来るし。休日は彼女はほぼ家にいないし。会っても会話はほぼないし。
でも良かったんです。彼女がそういう生活出来るのも、私が頑張っているからで、私がいないと彼女は生きていけないし、彼女の生活が回るのは私のおかげだから、満足していたんです。
でも、同じことの繰り返しで飽きちゃって。ちょうど彼女の誕生日、ちょうど二十五歳、付き合った年から考えると十年目になる時も近かったんで会社を半日休んで、サプライズでプレゼントを渡そうと思って。
男物の靴が玄関にあった時点で嫌な予感はしていたんです。
なんかもう色々察して、逆に冷静でした。カメラとか用意しといた方がいいのかなとか、親権の問題とか色々、でもまあ考えていても仕方ないと思ってばれないように歩いていきました。部屋の前まで歩いていくときはどん底にまで自分で歩いていくような気持ちでしたよ。
まあ案の定って感じでした。
逃げられないようにしてから話を聞くと、中学の時、私が告白する前から付き合っていたんだとか。私は全然知らなかったんですけど、クラスでは結構有名だったらしいです。そんな時に私から告白を受けて、当然付き合うつもりはなかったらしいんですけど、彼氏と相談したときに、
「いいじゃん受けてみたら?」
「面白そうだし、真面目そうだし」
「うまくいったら使えそうじゃね?」
「いいじゃんうまい感じに避けたらさ」
それで付き合う、いや、付き合ってるふりをしていたらしいです。
バレンタインも、クリスマスも全部全部あいつと、
週四で一緒に帰って、
俺が勉強必死に頑張ってる間も、あいつと一緒に遊んでて、
しかも、
子供も出来たんだとか
俺にはそんな幸せの形なんてなかった
俺の十年間、
彼女のための十年間、
それが、ずっと、ずっと
演出されたものだったなんて、
いや、もう演出すらもされていなかったんだ。
その時は二人を開放して、家でずっと泣いた。
久しぶりに家で酒を飲んだ。
でも
相談できる人がいなかった。
中学にも、高校にも、
友達と言えるような人がいなかった。
十年間、感じなくてよかった劣等感が全て襲い掛かってきた。
「あんた今まで何やってたの」
「なーんにも残ってないじゃん」
「あははははハハハハハハハハハハハハハハハ」
「あははははハハハハハハハハハハハハハハハ」
だから、手に残るものが欲しかった。
この十年の、自分がいたんだという証拠が。
それで思ったんです。自分が十年間生きていた証拠あるじゃんって。
だから彼女に連絡を取りました。
もう一度話したいって
それで、
気づいたら彼女が目の前で横たわってました。
せっかくの思い出が汚れるみたいで嫌だったんですけど。
でもそこには確かに十年間の思い出があったんです。
私の青春時代を奪われたんですから、
彼女の一番純粋な時間、
死んだ後の時間を私が独り占めしてもいいですよね。
もうご飯も食べなくなっちゃったけど、
もう喋れないけど、
こんなに長い間一緒にいれたの初めてでした。
もう誰にも渡さない。
十年とは言わず、もっと、ずっと愛してあげるから。
久しぶりにこんな頭使ったのでもう寝ます。
おやすみ、僕の彼女。
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感動した。これからも彼女と末永く幸せに過ごしてほしい
お疲れ様でした!色々辛いこともあったかと思いますが、幸せに生きてください!
読んでて悲しくなった。高村さんに幸あれ!
本当に彼氏がやばすぎる。彼氏に復讐出来たらまた報告してほしい!