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最終話

最後までおつきあいくださり、ありがとうございました


「よっしゃ、終わった!大聖堂に婚姻証明書を提出してきたから、僕とリリーはもう婚約者だよ。イエーイ、婚約者!婚約者最っ高!!ああでも、すぐに夫婦なるか。夫婦になっちゃうよな~アハッ、夫婦……夫婦最高!」

 笑いが止まらないという感じで、婚約の報告しながらクロードは大いに笑う。


 その様子に呆気に取られていたリリーであったが、すぐに、先程の件を問いただす。


「ちょ、ちょっとまってよ、クロード。突然通信を切っちゃってよかったの?っていうか、私は、何も聞いていなかったのに、いったい、どうしたらああなるの??なぜ突然私と婚約を?何か理由があるのよね?あるはずよね?そ、そそ、それに!あれよ、アレ!!キ、キッ…スのことも…せせ説明、説明を求めます!」

 キスのくだりだけ声が上擦りやたらと小さい。

 リリーは一連の出来事に対しての混乱が激しく、クロードへ説明を求めた。

 特にキスをした理由が気になって気になって仕方がない様子だが、恥ずかしすぎて言葉に出来ない。


「そうよ、リリーは何も知らないままで、その通りですとしか答えぬよう言われていたでしょう。それに婚約だなんて、急いで契約しなくてもよかったのでは?え、嫌がらせじゃないわよね。このことについてきちんと本人の口から説明しなさいよ!!」

 サラも加勢し、クロードに説明を求めた。


「みんな、少し落ち着いて。それから、あれはさ、ああもう、昔からクロードがリリーの事を好きだったから、いいや、大好きすぎたから、それゆえの行動だったのさ。もう、みんないい加減、気づけ!!」

 と、アドルフがクロードの長年の想いをいきなりバラした。


 自分はクロードの味方なのだと言うよう、2人の仲を拗らせたくはないとアドルフが間に入り緩和剤を買って出たつもりらしい。


「は?なにそれ、いつから?」

「だから昔からだよ。」

「昔っていつ?」

「僕らが出会った当初からだ。もう10年以上前。あんなにあからさまなアピールを繰り返してきたのに、君達はちっとも気がつかなくて、クロードの気持ちをワザと気づいていてふりしているのかと疑った時期があったくらいだ。だが思い知ったよ。本当に君達はただ気が付いていなかったと判ったからね。純粋に、君達がお子ちゃまだったのだと理解したのさ。もうね、傍から見て、クロードの事が本当に可哀相だった。だから、クロードが学校(あそこ)へ入学してから、僕らを無視し始めたのは、その腹いせなのかと何度も考え憐れんだ。実は、半年が過ぎてからクロードの態度にあまりにも拗ね過ぎではと我慢ならなくて、直接彼に話を聞きに行ったのさ。その時に彼の現状(王命を受けている)を聞くこととなった。」

「そうだったの…全く気が付かなかった。ごめん。」

 サラとアドルフが会話する。


「え、えっ!?そうなの??」

 リリーがクロードへと振り向き尋ねると

「本当の話だよ。僕はリリーの事を出会った時からずっとキミが好きだった。」

 と、優しく返される。


「で、出会ってからずっと!?」

 リリーはその事実に戸惑っている。

 それと同時に、気づかなかった己の愚かさを恥、さらに心の底で嬉しさが沸き上がった。


 あの頃のクロードは、本来、子どもが持つことで負担になるとされるよりも遥かに莫大な量の魔力を保有していたことから、魔力抑制が上手くいかず、近くに居る者に様々な影響を与えることが多かった。

 それも、外的に良くない印象を与える事もあり、貴族間で変な噂もたっていた。


 “コスタ侯爵子息に近づくと、命を削られる”

 危険な存在であるという悪質なものであった。


 クロードの魔力量は、普段の生活でも周囲に様々な影響を及ぼしていた。

 例えば、魔力過多による周囲への圧迫感や静電気のような電流が走り、相手に痛みを与える事などはしょっちゅうで、持っているグラスを無意識の力で割ってしまったり、相手へ無意識に圧をかけ苦しい思いをさせたりと、これらは、他者に対して、ワザと起こしている事ではないので、苦情を言われることに苛立つこともあったようだ。


 その所為で、怒りの感情にそれらが加わり、余分な魔力から怒りの感情を含む精神力が放出され、周囲に新たな事故を呼び、更なる被害が拡大した。

 そんなことの繰り返しに、幼い日のクロードは精神共々、まいっていたのだ。


 そんな頃に、彼は勇者一行の集まりでリリーに出会った。

 貴族は、昼間だとお茶会などで集まるのが大概だが、勇者一行は、庭やテラスで肉などを焼き、みなで食するスタイルのランチ会を季節ごとに開いていた。

 ランチ会だけでなく泊りでという時もあり、別荘であったり野外地でテントを張ったり、自分達で食料を調達してとする時もあり、冒険をしていた時を思い出すよねと言いながら、大人達も楽しんで過ごしていた。


 クロードは、これまで参加してきた貴族の茶会で散々な扱いを受けてきていた。

 大人でさえも、触らぬ神に祟りなしといったふうに、遠巻きにする。

 話し掛ける者も居なく、ポツンと一人で過ごし、両親のいない所では、遠巻きに嫌味を浴びせてきる者が多かった。

 だからクロードはこの会でも同じ反応であろうと全く期待をしていなかったのだ。


 しかし、その考えは一人の少女によって、大きく狂わされた。


 大人たちがご飯の準備をしている間、子ども同士で仲良く遊んでいなさいと顔を付き合わせたのが最初だ。

 兄や姉たちは大人の手伝いを許されたので、狩りへついて行ったり、料理の手伝いをしている。


 残されたサラとアドルフ、リリーにクロードは顔を突き合わせ見つめ合っていた。

 まずはアドルフが自己紹介をして、手を差し出し個々に握手を求めたが、クロードは手を出すことなく、そっぽを向き、よろしくと小さく呟いた。

 その様子を見て、サラが腕組みをし、自分の名だけをその場で名乗る。

 次にリリーが名乗り、個別に近づき、挨拶をしようと手を差し出したのだが、やはりクロードは応じない。

 応じないクロードに、これは何かあると踏んで、何としてでも手を握ってやろうと彼の手を狙った。

 だが、その手をクロードが素早く叩き落とした。

 その時に、バチっと大きな衝撃と音が響いた。

 その瞬間、彼女の髪の毛がモハッと広がり、天へと目掛け、逆立った。


 クロードは、その光景を見て、やってしまった今までの経験から罵倒がくると考え酷く悲しくなったのだそうだ。

 これまでのお茶会ならば、これで彼の特性が知れ渡り、扱いが変わってしまう。

 だから、この失態に酷く落胆した。

 だが、その考えは大いに裏切られる。


 リリーはケラケラと可笑しそうに笑いながら自身の髪の毛を楽しみだす。

「見て見て~この髪型。最高じゃない!?」

 侍女に鏡を持って来させ、現状を確認するとさらに大笑いしだし、頭をフワフワ揺らして楽しみ、そう発した。

 それにつられて周囲は笑いに包まれる。

 皆も面白がり、嫌がるそぶりを見せない。

 彼の態度の理由をこの一瞬で把握した。

 彼は自分達がこうならないようにしてたのかと考え、この男は良い奴だと認識したようだ。


「ねえ、君、何かもっと面白い事出来るの?やって見せてよ?これさ、何かに使えないかな?あ、この力を貯める事って出来る?あのいたずらに応用できないかな。」


 その発言を皮切りに、クロードの欠点とされる有り余る魔力から、様々な遊びや悪戯が開発された。

 自分の能力は不幸にすることばかりではないと感じるようになった瞬間である。

 彼女達との昼食会は、クロードにとって特別なものとなっていった。


 “リリーに会える場所。リリーは僕の特別”

 と、自然に変化を遂げていくのに時間は掛からなかった。


 後に、魔力のコントロールを取得してからも、クロードはリリーへの特別な想いは変わらず持ち続けていたのでる。


 ***


「うん、出会ってからずっと。だから僕は、あのリンドバーグの王子にリリーを奪われたくはないし、この国の王子達にだって君を奪われたくはない!少し前に聖女と王族の婚姻の話を王城で耳にしてから、権力を盾にと怒りが込み上げた。それから僕とリリーが結婚できる方法をずっと模索してきたのさ。そして、今日、その願いが稔った!僕は最高に幸せだ!」

 具体的に何をしてきたのかは、少しだけ想像が出来た。


 時に、第一王子の側妃を持たせないように隣国から圧力を掛けさせた影の首謀者を演じてみたり、第二王子の一時王国離脱を監査官として促したてみたり、それらも彼の導きの成果なのだろうと考える。

 彼が本当に一人でやったのであれば、寒気がする程の行動力と実行力である。


「あのリンドバーグの王子は思ったより行動力があったからね。下手したら、国の力を駆使して、リリーを何が何でも奪いに来る可能性が今でもあるから不安だ。下手したら、王族の地位を捨ててでも、奪いに来るかもしれないと僕は踏んでいる。だから、僕の傍で、僕がリリーを守る最も相応しい理由を得たかったのだ。リリーが僕の婚約者(ぼくの)であるという確かな理由を持ちたかった。そしてその望みは叶った。アイツが仕掛けてきたら、全力で潰す!」

 これまでにない深い笑みを浮かべ、クロードが語る。

 その表情を見ていた者達は、部屋の温度が何故だか下がったように感じ、身震いをした。


「なぁ、リリー。君がこの婚約にあの場で拒否の言葉を発しなかった事を、僕への好意があるのだと受け取っていいかな?拒否されず受け入れたのだから、少なからず、僕に興味があるって事であっているよね??僕と、そうなってもいいって事でいい??僕に全く興味が無いわけではないと受け止めたよ。それが分かった今だから、僕は待ったなしさ!これからは臆することなくガンガン君にアプローチをさせてもらうから!!」

 長年片思いを拗らせてきたせいか、この手のポジティブ変換だけは高性能であり、結婚まで突き進めとのオッケーサインが勝手になされたようだ。


「私がクロードを好き…そ、そうなのかもしれない?」

 リリーもそう考えたのではと思うような気になっている。


「言質、頂きました!!これ目覚まし音にする。あっ、キスはフライングしちゃってごめんね。でももう婚約したから、これからはしていいよね。」

 嬉しそうに、クロードが録音機を頭上に掲げ、恥ずかし気なく宣言する。

 その言葉に、リリーは顔を真っ赤に染めた。


 ***


 翌日

「早く出発しないと間に合わない。」

 リリーは暦の用紙を眺めながら、そう呟いた。


 あと10日で長期休みが終わってしまうのだ。


「あと10日しかないわ。直ぐにお祖父ちゃんの元へ行かないと帰れなくなる。」

 焦りを感じつつ、リリーは発現した。


「大丈夫。僕が居れば、1日だろうと関係ない。行きたいところへすぐさま転移可能だから任せてよ。もう王命はないからいつでも付き合える。何たって、僕はリリーの婚約者だから、君の願いならばすべて叶えるよ。」


 そう、クロードが言ってくれたが、低級冒険者として旅立ち、ここまで苦労して馬車移動をしてきたのにと少しばかり残念に思う。

 悩んだ末、今回は時間がないので仕方がないと、祖父の元へとクロードの魔法で転移した。

 クロードの力があっても、2回は転移をしなければならない距離だそうで、一度目の転移をしてから、半日近く魔力回復で休憩し、再び転移をして、夕刻に到着となったのであった。

 祖父家は事前に連絡をしていたので、村総出で温かく迎えてくれた。


 その翌々日、祖父家で団欒していた際に、父からの通信で予想外の報告を受ける事となった。


「え、秋から編入!?」

 リリーは通信魔法で会話する父との会話から衝撃の事実を告げられた。


「ああ、リリーの婚約が決まった翌日にリンドバーグ国から書簡が届いた…」

 父方告げられた内容に寒気がする。


 その内容とは、要約すると状況が整い次第、リリーを妃に迎えたいと言うものであったようだ


 そして、

 “リンドバーグの皇太子が留学を希望し、ベッドスタイ学院に秋から編入する”

 と言うのだ


 それを聞いたリリーは、幼馴染たちへと相談した。


「ふむ、リリーやっぱり学校は行かなくていい。辞めよう。大丈夫、永久就職先は決まっているからね。すぐに我が家においで。」

 そうニッコリと不敵に微笑み、クロードが言う。


 後に、アドルフが証言する。

 あの報せを聞いた時のクロードが、リリーをその場で攫って監禁してしまわないかと、ハラハラしたと。


 そして、次の父からの報せに、クロードの表情は険しくなる。


「クロード大魔導師様、あなたは直ちに王城へ登城しろとの陛下の命令が出て居たはずですよね。魔導師の緊急のお仕事だそうですよ。大変だろうから、あとはリリーの家族である私に任せ、任務を遂行してください。それから、リリー。残念だが、王命の追加で学校へはそのまま通わなければいけなくなった。聖女の能力覚醒したのだから、最低限の教養は学びなさいだそうだ。その為に三月後に開かれる宮廷舞踏会の場で聖女のお披露目を大々的に行うとのことだ。すまんな…リリー…」


 父親は、おそらく嫌がるだろうと予測される娘の気持ちを先回りし、色々と陛下と交渉してくれたのだろう。

 それでもこれ以上は贖えなかったといった風景を滲ませた、申し訳なさそうな表情で謝ってくる。


 あの腹黒王と、クロードが悪態をついた後、すぐに笑顔に表情を戻し、リリーの父へこういった。


「バーナード公爵。一週…一か月後に婚約式を開くのをお許しください。リリーが私の婚約者であると、世間に知らしめておきたいのです!」

 力強く言い切る。


「ああいいぞ。早い方が良いだろうとは思っていたが、そんなに早くて、式の準備は間に合うのか。」

 父が不安そうに思案していると、


「大丈夫です、義父さま(おとうさま)私はいつでもリリーと結婚できるよう。様々な準備をしておりますので、婚約式も素晴らしいものをご用意するとお約束いたします。我が家に全てを任せてください!」


 この言葉通り、帰国し、約束の一か月を待たないうちに、盛大な婚約式がコスタ家で行われることとなる。

 その婚約式は、急ピッチで準備されたはずなのに、全てがパーフェクトに用意されていたそうだ。


 主人がゴーサインをだして一週間後には婚約式が開けるようにコスタ家の使用人は訓練を受けているとか、モロー大商会の全勢力を投じたとか、コスタ家の魔法の無駄使いとか、王家の力を大魔導師が操り間に合わせたなど様々な誠なのか嘘なのか分からない噂が社交界で流れることとなる。


 それから、それまでリンドバーグの王子はリリーに会う事は叶っていないだろう。

 一国の王子を住まわせるので、警備や設備の問題から留学先での部屋が決まらないとのだと足止めし入国を遅らせるというプランで話しがついた。


 王もこれに承諾したというのだから驚きだ。

 安全のためという確固な理由であるので、疑わしくても無暗に行動に出られまいとのことであったので賛同したらしいが、他国の王族の機嫌よりも恐れる何かがあるのだろうかと考えてしまう。


 そして、クロードは、そんな彼の事も、婚約式に招待するといっている。

 妨害しに来るであろう王子の全ての策をコスタ家の総力を挙げて封じる予定なのだそうで、婚約式を滅茶滅茶に出来ずに悔しそうに帰っていくリンドバーグの王子の姿を見たいが為に彼を招待すると、クロードは家族に楽しそうに語っているという。

 クロードがそれを見て満足し、声を出して愉快に笑う所まで家族は想像し、結束を固めている。

 彼の家族は幼少期のクロードを間近で見ているので、彼にとてつもなく甘いのだ。


 そして、天下のクロード様に抜かりはない。


 ***


=エピローグ=


「リリー、早く起きなさい。学校行く時間なのに起きてくれないと、メイドが困っているわよ。」

 ベッドから出てこないリリーを心配して、母が様子を見に来る。


「お母さん…聖女のお披露目以降、学校で周りが色々変わりすぎてうるさいの。掌返しとかもううんざり。あと、リンドバーグの王子もクロードの魔法の回避方法を見つけたらしく、かいくぐって会いに来て毎日しつこい。それに、クロードと婚約発表してから王女が毎日教室に尋ねてくるのよ。婚約破棄しろって。」

 リリーがぼやく。


「それは、困ったわね。どうしましょう。」

 母は真剣に解決策を一緒に考えようとしてくれる。


 メイドが、クロードが迎えに来たと伝えにきた。


「そうだ!やっぱり私、学校を辞めるわ。お母さん、陛下を説得して!」

 頼んだからねと母へ言い残し、着替えを済ませて、部屋を出ていく。


 その娘の背中を見つめて、ヤレヤレと溜息をつく母であった。


 =おしまい=


補足、王女はクロードを狙っていたようです ポッとでの女に奪われたとにご立腹中です

王は王女の気持ちを知っていたので、会議には参加させませんでした


最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました☆★☆

評価、ブックマーク、いいね、ありがとうございます☆彡

リアクションしてもらえて、とても嬉しかったです☆

感謝

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