表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

240430火曜、エッセイ「ハグ記念日」の巻

前回のエピソードの続きになります。


母は小生の生活している重度障害者施設に、

月に一度1ヶ月分のお菓子や飲み物を届けてくれています。

先週の金曜はファミマのどん兵衛おにぎりや焼きそばUFOおにぎりを、

買ってきてもらいました。


母が施設に到着する10分ほど前に思いました。

来年になるか何年後になるかわからない、

母の家の桜のしたでの母とハグする機会を待っていたら、

それまでに万一母に何かあった場合、

ハグし損なうという可能性もあります。

じゃあ、このあと母が来てガラス戸を開けた際に、

〈ハグしようといえるだろうか〉

言いにくいなぁ……。

しかし、「思い立ったが吉日」といいます。

小生は今日を逃すまじ、と決心しました。

途端に気持ちがそわそわしてきましたが、

小生は覚悟を決めました。


部屋の外のベランダを足音が近づいてきました。

そして、ガラス戸が開きました。

「溶けてきてるから早く食べなさい」

そう言って母が、

アイスクリームのチョコモナカジャンボを小生に渡しました。

「じゃあ、行くね」と母が外へ出ようとします。

「お母さん!ハグしよう!」口を衝いてでました。

母は思いがけず「どうしたんや?」と言いました。

〈そんなんせんでええ、と母は言うのだろうか。〉

母はすぐに言いました。

「いいよ、ハグしよ」


小生は幼いころ、

母に「おんぶ」「抱っこ」を何度もしてもらいました。

でも、いわゆるハグというものをしたことは、

これまで一度も無かったのではないだろうか。 

40年前には「ハグ」という言葉も日本語には無かった気がします。

「抱っこ」の変化形なのだろうか。


「よしよし」と母は言って、

小生の背中へと手をのばしてきます。

「生まれたときはあんなにちっちゃかったのに大きくなったなあ……」

と、母はいつになく優しい声になっています。

小生が母の背中へと腕を丸めます。

母の身体はぬくかった。

母の体温が冷たくなくてよかった。

小生はさらりと済ませるつもりだったというのに、

とめどもなく勝手に涙が溢れだしました。


小生はハグを力強く行うことは出来ませんでした。

〈母の身体を枯れ枝が折れるみたいに傷めてはならない〉

というより、

まだ、ひとかけらの気恥ずかしさが残っていたのかもしれません。

「お母さんはあんたより先に死ぬやろう。

何も遺してやれるものがない。

でもな、おまえが小さいときにいろんなところへ連れて行ってやった。

想い出をたくさんつくってやろうと思ってな」

母は続けて言いました。

「おまえは自分がすごく不幸と思ってるかもしれん。

でもこの世の中で働かなくてすんで、

こういう施設で生活出来てるのはありがたいことやでぇ。

いま施設もいっぱいいっぱいで、

入りたくても入れない障がい者が多いらしいんよ」


自分自身にバカ正直な小生は頷きませんでした。

というのは、小生は自分を不幸とは思っていません。

歩行はもとより胸より下を動かすことが出来ず、

動けなくなってからの14年でバットのように細くなった脚を見るたび心配になり、

施設のはるかに歳下の職員から見下したようなタメ口をきかれ、

生活に不快とか不便だなと感じることは多々あります。

でも、自分の人生を不幸だなと宣言したら、

その時点で自分に敗けなのだと思います。

小生は今生の栄光の王冠をあきらめはしないーー。


それにしても涙が止まらず嗚咽する小生……。

〈ここまでなるはずじゃなかったのに……〉

母がマスクの内側で鼻をすする音がします。

母の窪んだ目から涙が流れているのかは、

よくわかりませんでした。


母が帰ったあとーー。

鏡を覗くと小生の目ん玉は真っ赤に充血してましたが、

心の奥の深いところで積もるように溜まっていた膿を、

荒波が押し流したかのように、

台風の過ぎ去った翌朝の青天のように、

心は軽く爽快になっていました。


約40年間ほど母の身体に触れてませんでしたが、

初めてのハグとなりました。



続く。果てしなく続く……。


玉置浩二「コール」

Spotifyで聴く https://open.spotify.com/track/6VdF8SqmcVRYrfO2Vcg3JN?si=LwjuO7nmRTOIcj3qv4dKcw&context=spotify%3Aplaylist%3A37i9dQZF1DZ06evO3oc2wI

YouTubeで観る https://youtu.be/svUSQHE7Wy0?si=gswNjDSakxFNyEP7


いつもお読みくださり、

無限の無限のありがとうございまする☆

ブックマーク(フォロー)していただけますと嬉しいです。

では、ご氣元よう‼️

( ⸝⸝•ᴗ•⸝⸝ )੭⁾⁾

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ