野生の熊は普通に怖い
ウサギを倒した俺のlvは2に上がっていた。
「近くに街はあるのか?」
とりあえずチュートリアルに忠実に進んでみるか。
「一番近いのは公国領地の新開拓村でファス村です♪歩いて2、3時間くらいですねぇ。
魔族領と獣人族領に挟まれた公国の魔族領国境付近です」
なんだか複雑そうな場所だな。
「戦争とか起こってないだろうな?」
いきなりシミュレーションゲームの様な展開になられても困る。
「わかりません♪ただ他種族への侵略行為にはペナルティがあるらしいので、
魔人族や獣人族と戦争になるとは考えにくいですねぇ」
そんなものがあるのか。まぁ平和が一番だな。
そんな事を考えていると、突然サポちゃんが何かに気付いたようだ。
「サポちゃんよりnew伝です♪」
入電と掛けているのか?
意味変わってないか?・・・まぁ、どっちでもいいか。
冗談を言っている場合なんだろうか?
「まだ距離はありますがLv20のブラッドベアが接近しています♪」
言っている場合では無さそうだ・・・。
Lv20は無理だろ、こっちはLv2だぞ。
「やり過ごせそうか?」
とてもじゃ無いが勝てる気がしない。
熊だぞ?そもそも俺は非戦闘員だ。
「やり過ごすと近くの農家の人が危ないですねぇ」
見殺しにするのは心苦しいなぁ。
「サポちゃんなんとか出来たりしないのか?」
「わかりませんねー。マスターの作戦次第では?」
自分で考えるしか無さそうだな。
方法はあるにはあるが・・・。
「サポちゃんは何が出来るんだ?」
とりあえずサポちゃんから色々と情報を聞く。
スキルは全て使えるが今はLv1らしい。
あと複合アーツなんてものがあるようだ。
他には妖精族の特性スキルで、姿を消す隠蔽スキル、
離れた相手の鑑定が可能で相手のステータス、鑑定履歴、
足跡を知ることが出来るとか。
色々と便利そうなのが揃ってるなぁ。
「一番攻撃力の高いアーツで熊を殺せないのか?」
それが一番楽なんだが・・・。
「8属性複合アーツが一番強力ですがHPを4分の3削るのがやっとですねぇ。
あと連発は無理です♪」
Lv差を考えるとかなりの攻撃力だが・・・
やっぱりあの作戦で行くか。
「サポちゃん俺を10秒ぐらい浮かせられるか?」
これが出来れば楽なんだが・・・
「30秒くらいなら行けると思いますが?」
なら行けそうだな。
後はどうやってここに誘い込むかだが・・・
「サポちゃん、ちょっとここまで熊連れてきてくんない?」
俺は出来るだけ軽く言ってみる。
ノリでやってくれないかなぁ。
「熊をここまで誘い込めばいいんです?嫌です♪」
チッ。駄目か。
「熊って飛べるのか?」
「飛べるわけないじゃ無いですか♪マスターはアホですか?」
このポンコツ妖精め。いや、落ち着け俺。
「飛んで魔法攻撃すりゃあ誘導ぐらい簡単だろ?
有能なサポちゃんなら余裕なはずだ。なんとか頼む」
俺は穏便に煽てつつ、お願いをする。
「まぁ出来なくはないですけどぉ・・・」
もう一押しでいけそうじゃね?
「熊を挑発してここまで連れてくるだけでいいんだ。
そしてこれはサポちゃんにしか出来ないことだ」
さりげなく簡単そうに、そして頼られてる感を出してみる。
「仕方ないですねぇ・・・。報酬は甘いお菓子ですよ!絶対ですからね!」
意外とチョロい奴だな。
俺はサポちゃんに作戦を伝える。
「うわー何というか・・・卑怯?」
サポちゃんが蔑む様な目でこちらを見る。
なんとでも言うがいいさ。正々堂々なんて強者の戯言だ。
「勝てばいいんだよ。誘導頼むぞ」
サポちゃんは渋々、熊の元に飛んで行った。
俺はその姿を見送る。なんかドローンみたいだなぁ・・・。
・・・
暫くすると遠くの方にサポちゃんが見える。
半泣きで叫び声を上げながらこっちへ向かっている様だ。
「無理無理無理!マジで怖いです!飛んでても怖いものは怖いですぅ!
主に顔が怖いです!!なんでそんな怒ってるんです?
頭おかしいんじゃないですか!?」
後ろには2.5m近くの熊を連れている。
いい感じに煽ってるなぁ。あれは素なんだろうけど。
熊は血走った目で凄い形相をしながら呻き声を上げて、
がむしゃらに手を伸ばしサポちゃんを追いかける。
「モテモテだな」
ちゃんと届かない高さを飛んでいる様だが、あれは怖そうだなぁ。
俺は呑気にそれを眺める。
・・・
そして打ち合わせ通り、丁度いい距離でサポちゃんが姿を消す。
突如目標が消え、熊は周りを見渡していた。
俺はと言うと5mほどの岩山の上にいる。
そして、事前に拾って置いた手頃な石を熊に向かって投げる。
「お。なかなかいいコントロールなんじゃ無いか?」
思いっきり投げた石が上手く熊の頭に当たった。
ダメージは無さそうだがこちらに気づいた様だ。
すごい顔でこちらを睨んでいる。
「めっっちゃ怖かったですぅ・・・」
気づけば、横には半べそかいたサポちゃんが戻ってきていた。
「ご苦労だったな。完璧な仕事だ」
そんな事を言っていると、すごい勢いで熊はこちらに向かってくる。
そして岩に捕まり、よじ登ってきた。
熊って意外と登るのは得意なんだよなぁ。
次の瞬間、俺は足元に手をつく。
「収納!」
足元の岩山が消えた。
「レビテーション!」
サポちゃんが唱える。
と同時に俺の体が宙に浮く。
熊はそのまま岩山のあった穴に落ちていった。
それを確認した俺は直ぐ様に、
「取り出し!岩山!」
穴に向かって収納した岩山をそのまま戻した。
「ドスンッ!!」
大きな音を立てて元通りに戻った岩山の上に、俺はフワリと着地する。
「ふぅ、手強い相手だった。後少し、奴の顎が出ていたら倒れていたのは俺だったかもしれない・・・」
俺はあたかも激闘を制したかの様に振る舞う。
「何を一仕事終えた感じ出してるんですか!ほとんど私の手柄ですし!
あと顎、関係ないですし!!」
サポちゃんのツッコミが鋭く入る。
本当にサポちゃん様様だな。
「その通りだ。ありがとな」
俺は笑いながら言った。
因みに、熊を倒した俺のlvは16になっていた。
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lv16 ルーク マナ225 魔力0 筋力0 精神0 防御0 知力390 器用25
lv16 サポ マナ75 魔力75 筋力75精神75防御75知力75 器用75
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