魔力供給源と魔獣 1
結論から言えば、朝にはラペルト様の魔力は完全に回復していた。
むしろ以前よりも、強くなったといっていいかもしれない。
「これなら、老後に向けての魔力の貯蓄が増やせそうだ」
「長生きしてくださいね」
「無駄死にはしない、それは約束する」
どうして私とラペルト様は、同じくらいの年齢に生まれなかったのだろう。
どうしようもないと、わかっていても辛くなる。
「……そうだな。君と出来るだけ長く一緒にいたい」
「私もです」
人生なんて、何が起こるかわからない。
だから、もしかしたら私の方が先に、という可能性だってある。
そんな私の考えを読んでしまったのだろうか。
ラペルト様が、赤い瞳を細めて私を見つめる。
「君が先にいなくなったら、禁忌の魔法に手を染めるかもしれないな。いや、確実に染める」
「えっ、どんな魔法……」
「時間を巻き戻すか、命を取り戻すか……」
ラペルト様には、それが可能なのだろうか。
けれど、禁忌というにはそれなりの理由があるに違いない。
一秒で良いから、ラペルト様より長生きしようと心に誓う。
「……ところで、どうして魔獣は魔力供給源を狙うのですか?」
一番大事な部分だ。ラペルト様は、すでにそのことを知っているような口ぶりだった。
「……魔獣は、元々普通の動物だ。ただ、魔力を持っていただけの」
「魔力を持った動物?」
「そう……。なぜ魔力供給源を狙うのかについては、悍ましいから、君に伝えたくない」
ふと、淡いピンクの髪が黒へと変わった、リーリアム・フィンク男爵令嬢の姿が浮かぶ。
それは嫌な想像だ。魔力を持った動物が、魔獣になるというなら、人なら何になるのだろう。
――私もそうなる可能性があるのだろうか。
「……あの、ラペルト様」
「僕が君を守るよ」
「でも、もしも」
「もしも、君が変わってしまったときには、一緒にすべてを破壊しよう?」
「……それは」
それは、私の考えに対する肯定だ。
「……まあ、そのときには僕はいない可能性も高いけど。それでも、君が嫌だというなら、どんな手を使っても阻止しよう」
「……ラペルト様」
魔力供給源については、実はあまり明らかにされていない。
「大丈夫。僕は計画性ある男だから、頼りにしてくれて良いよ?」
確かに、私のために長年魔力を溜め込んでいたことと良い、準備万端備えてくれそうだ。
「……どうしたの?」
「……ラペルト様と一緒が良いです」
「君がそう望むなら、そうなるように足掻こう」
まるで誓いの口づけのように合わさった唇。
そして、ラペルト様の本気を私は目の当たりにすることになるのだった。
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