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最愛の魔力供給源 2


 ところで、魔力供給源は不思議な力で魔術師に魔力を供給するけれど、魔術師が魔力供給源に魔力を返したときに何が起こるかという資料はほとんどない。


 というのも、普通は魔力の受け渡しなどできないのだ。だからこそ、魔力を供給できる相手を見つけることは難しく、魔術師にとって魔力供給源は、特別な存在なのだ。


「……ええ」


 お昼になって、フワフワした午睡のような心地よさが消え、寝台から起き上がると、私は魔法が使えるようになっていた。

 まず、その対象になったのは、フィーニアス様だ。


「えっと」

「うーん。触れてもいないのに、人間の姿に戻りましたね。それにしても、どうして筆頭殿の魔力で満たされているんですか?」

「えっ」


 すでに、魔獣討伐の任を遂行するために、ラペルト様は出掛けてしまった。

 私はその質問に答えることができず赤面する。


「相手を魔力で満たすことができるのは、魔力供給源だけのはずなのに。ん? 魔法式の残渣がここに……。なんだこれ、複雑すぎて脳が理解を拒むな……」


 フィーニアス様の言葉から察するに、ラペルト様はその天才的な能力で、魔力供給源の仕組みを魔法式で実現してしまったということなのだろう。

 魔力がたくさんあるけれど、初級の魔法式も使えなかった私には、この魔法式の複雑さなんて想像もできない。


「さすがは、ラペルト様」

「魔法式で実現できるということは、やはり魔力供給源は無意識に魔法を使い、相手に魔力を与えていると仮定されます」

「無意識に魔法を?」

「そう、今、俺の姿を元に戻したように」


 そんなはずないだろう。

 幼いころから魔力ばかり多くて、魔法が使えたことなんてないのだから。

 それとも、ラペルト様なら何か知っているのだろうか。


 そんなことを思いながら、生温くなってしまったアイスティーを手にする。


「きゃ!?」


 途端にアイスティーは、パキパキと音を立てて凍ってしまった。


「これはいったい……」

「やっぱり、魔法式なしで魔法が発動した」


 そのとき、勢いよく窓が開いた。

 窓枠に足をかけたラペルト様が、ひどく動揺したような表情で私を見つめている。


「あの……」

「屋敷でまた、魔法が発動したから慌てて戻ってみれば……」

「えっと、おかえりなさいませ」


 ラペルト様は、体重がないかのように、床に降り立った。ふわりと白いマントがたなびくのをただ見つめる。


「……ただいま」


 私に手を差し伸べかけて、それなのにラペルト様は、なぜかその手を引っ込めてしまった。


「……なるほど、予想外だ」

「……なるほど、研究の余地があります」


 ラペルト様と、フィーニアス様が、ほぼ同時に呟いた。

 理解できないのは、私ばかりだ。


 その日から、急速に距離が近づいた弊害が、私たちの距離は再び離れてしまう。

 それはもちろん、魔法式を介さない、魔法が原因だ。けれど、それを理解しているのは、ラペルト様と、やはり敏腕魔術師のフィーニアス様だけなのだった。

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