6 胡蝶花ー5
簡易登場人物紹介
◆シャルル=リャンドル=ザクトリア
公爵家嫡男(17)攻略対象(2年)
一人称:自分。金色の髪に紫色の瞳。
アーシェンの兄。
「今度のお茶会はここ最近では一番の大規模なものを予定しているみたいなんだ」
「そのようですわね」
ティオル殿下の言葉に頷く。
簡易的な集団お見合いなのだからそれは大規模なものになるのも道理だ。
「エメリア殿下はご参加なさるのですか?」
「ああ、王妃様から参加するように言われていると聞いている」
やはり社交界デビューしているエメリア殿下も参加するのか。
それならば高位貴族の子息も多数集められている理由も、ますます納得がいく。
エメリア殿下は15歳で今年社交界デビューしたばかり。
魔術学院にはまだ通っていないけれども、来年から通うことが決定しているという。
ちなみにエメリア殿下も悪役令嬢の1人。
留学してきた隣国の第一王子殿下とゲオルグ殿下のルートで悪役令嬢となってしまう。
他にも悪役令嬢は2人いる。
1人は来年度入学予定、もう1人は既に入学済みの1年生で弟のルートに入ると悪役令嬢になってしまう。
悪役令嬢の担当は一人につき2人。すなわち攻略対象は8人で隠しキャラはなし。
乙女ゲームらしく悪役令嬢との友情エンドもちゃんと存在しているが、PCゲーム版とアプリゲーム版ではその内容が激しく異なることだけは言っておく。
ティオル殿下はまだ用事があるのか立ち去らず、一緒にいるシャルル様に少しだけ視線を送った。
「ベアトリーチェ嬢、君が王族の個人的なお茶会にあまり積極的ではないことは知っているが、今度私が個人的に主催するお茶会にどうかな? もちろん友人を誘ってくれて構わないさ。こちらも見合った友人を招こう」
その言葉に一緒にいる友人たちが声に出さない悲鳴を上げ一様に口元を手や扇子で隠す。
まじでやめろください。
背後にいる友人たちの期待に満ちた視線を感じながら、表向きはにこやかに会話を続ける。
「もったいないお言葉ですわ。けれどもどの友人に声をかけるか迷ってしまいますわね。社交界デビューしている方を呼んでいいというのでしたら、今度皆様の希望を聞いて決まったらお手紙を書かせていただきますわ」
「早めに決まると嬉しいよ」
「ええ、けれども本当に迷ってしまいますの」
「君は友人が多いからしかたがないね。けれども真剣に考えて欲しい」
「ベアトリーチェ嬢、自分からもお願いします。その……アーシェンがベアトリーチェ嬢と一緒にお茶会に参加したいと言っておりまして」
「まあ、アーシェン様が。けれども今度の王妃様のお茶会にいらっしゃいますわよね?」
「それは、まあそうなのですけれども」
歯切れが悪いな。やっぱり今度の王妃様のお茶会が集団お見合いだからアーシェン様の中ではお茶会に一緒に参加したことにカウントしないとかなのだろうか?
アーシェン様というのは悪役令嬢の1人で、魔術師団長とシャルル様ルートに入ると悪役令嬢になってしまう。
人見知りでブラコン。ちなみに魔導士団長のファルク様とは従兄妹の関係だったりする。
でももう1人の悪役令嬢のディアティア様もだけれどわたくしの事を慕ってくれているらしく、何かとなつかれている気がする。
シャルル様はその事が嬉しいらしく、何かにつけて屋敷に招待しようとしてくれたりするし、アーシェン様も来年度魔術学院に入学することを楽しみにしていると言っていた。
ヒロインが選ぶルートによっては悪役令嬢になってしまう最悪な未来が待っているんだけどね。
「それでは王妃様のお茶会でお会いした時にお話をしてみますわ」
「ぜひそうしてやってください。ベアトリーチェ嬢と会った後のアーシェンはそれはもう楽しそうなんです」
「お世辞でも嬉しいですわ」
「お世辞なんかじゃありませんよ。自分もベアトリーチェ嬢とお会いできるのは嬉しいですし」
「シャルル」
「失礼しました、ティオル殿下」
穏やかな微笑みを浮かべるものの短くシャルル様を制したティオル殿下に内心首を傾げるが、シャルル様はちゃんと理解しているようだ。
まあ2人の間で通じ合っていればわたくしには関係ないけど。
そう思ったわたくしの視線に気が付いたのか、ティオル殿下が一度シャルル様に向けていた視線をわたくしに戻して笑みを深める。
「とにかく、お茶会の事は頼んだ」
「かしこまりました、努力いたしますわ」
わたくしの返事にあまり納得はしていないようだけど、とりあえず了承は得たと思ったのかティオル殿下は「それじゃあ、また会おう」と離れて行った。
ティオル殿下たちがすっかり見えなくなってからわたくしの背後で様子をじっと見ていた友人たちが一斉に声を上げる。
「ティオル殿下の個人的なお茶会ですって」
「素敵……ぜひ参加したいです」
1人がそう言うと誰もが自分もと言い出す。
こうなるとわかっていたし、こうなる事を期待していた。
参加者が絞り切れなければそれを理由に手紙を出さずに済む。とりあえず当面は……。
「他の皆様にも声をかけてどなたと一緒に参加させていただくか決めますわね。けれども迷ってしまって当分は決まらないかもしれませんわ」
「まあベアトリーチェ様ってば」
友人たちが冗談だと思っておかしそうに微笑むけれども、わたくしは真剣に引き延ばす方向で考えているから。
むしろそのまま話が流れてくれる方向で期待してたりするんだけど、流石にそれはなさそうだな。
ティオル殿下が主催するお茶会か。子息側の参加者を予想するだけで頭が痛くなりそうだが、王妃様のお茶会にはジョセフ様は社交界デビューをしていないから参加しないし、改めての仕切り直しのお茶会というものなのかもしれない。
一見すれば豪華な顔ぶれになりそうなので、こちらも行く場合のメンバーはちゃんと厳選しなければいけない。
だからと言っていつも一緒にいる友人を贔屓して参加するのでは、わたくしの周囲がうるさくなってしまいそうなのでそれもいけない。
はあ、本当に難しく面倒な事をさせてくれるものだ。
その後他愛もない話を友人たちとしてから連れだって馬車寄せまでいくとそれぞれ家に帰った。
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