194 錦燈籠ー1
どちゃくそシリアスプロットを修正してシリアル展開にしました!
シリアル展開ってなんだよ(´;ω;`)
「ねえ、グレビール。そろそろ課題の提出日だと思うのだけれど、進捗はどうでして?」
学院に行くための馬車の中、ふとそんな風に弟に声をかける。
授業の進み具合を尋ねるのは珍しい事ではないので、特に疑問を抱く様子もない弟は笑顔を浮かべた。
「おかげ様で問題なく進んでいます。流石に姉上やティオル王太子殿下のように高度な魔術式の研究とまではいきませんけど」
「それはよかったですわ。結局わたくしはほとんどアドバイスが出来ませんでしたけれど」
「姉上はお忙しいですからね。今日も学院が終わったら王宮に行くのでしょう?」
「ええ」
ティオル殿下の婚約者となってからは放課後は王宮に通う事がほぼ日常化しており、家族と過ごす時間が少なくなっている。
両親は元より、義兄も弟もわたくしが王太子妃となるためには必要な事だと理解しているため、特に不服を言うような様子は見受けられない。
精霊で監視をしているだけなので、心の中はやはりわからないが、態度が変わらないので大丈夫だと踏んでいる。
弟が叔父と不用意な接触をしないか不安ではあったが、今のところそのような様子はない。
もっとも、表向き叔父はロクサーナさんに入れあげている事になっているため、我が家に来る回数自体も少なくなっている。
わたくしとしては喜ばしい事なのだが、ロクサーナさんを叔父が構う理由がわたくしに頼まれたからというのは、なんというか苦いものを口に含んだような気分になってしまう。
「グレビールは今日の放課後は何をして過ごす予定ですの?」
「いつも通りですよ。図書室から資料を借りて、ディアティア嬢とリャンシュ様と一緒に課題を詰めていく予定です」
「そうですの」
ふむ、以前はリャンシュ様の名前を先に出していたように思えるが、最近はディアティア様の名前を先に持ってくることが多いように感じる。
それだけ2人の距離が縮まっているという事なのだろうか?
ジョセフ様に口出しをしないように言われているが、姉として気になって仕方がない。
両親に2人の事を話せば、あっというまに進展することはわかるのだが、口を出さないように言われているのがやはりネックだ。
1年生の間で興味事になっているのなら、それを台無しにするような真似は避けるべきなのもわかる。
わかるのだが、気になる……。
野次馬根性というか、デバガメ根性というか、おばちゃん精神というか、とにかく気になって仕方がない。
「ここ最近、エメリア殿下たちの婚約のおかげなのか、貴族子女の間では婚約を結ぼうとする動きが活発のようですが、貴方はどうでして?」
「ぼくは家の意向に従いますよ。まあ、しいて言うなら傲慢だったり散財したりする妻は遠慮したいですね」
「わたくしとしてもそのような方が義妹になるのは遠慮したいですわ」
「そのうち父上たちがいいようにしてくれるでしょう。もっとも、2人とも恋愛結婚を推奨していますが」
「そうですわね。我が家は現在とくに権力に固執しているわけでも、入れなければいけない血があるわけでもありませんし……しいて言えば、外戚になる家が下手に権力に固執しないことですわね」
「姉上が王太子妃、いずれは王妃になるにあたって……ですね」
「ええ」
現在、我が家に対して送られてくる釣り書きのほとんどが、王族となるわたくしとの繋がりを目当てにしているものだろう。
だからこそ、両親の審査によって弟に紹介される前に弾かれているのだろうが、中には本気で弟に惚れ込んで婚約を申し込もうとしているご令嬢もいるかもしれない。
けれども学院の1年生の間では、弟とディアティア様を応援する動きがあるわけだから、話題に乗っている令嬢は釣り書きを送ったりはしないだろうし、家の意向で送っていてもすぐに撤回の手紙を出す可能性が高い。
なんせ両親が恋愛結婚推奨なのは、我が家の中だけではなく社交界でもそれなりに有名だからだ。
家が弟へ釣り書きを送っていても、それを知った後に弟への恋心がないので辞退したいと一筆送ればうちの方で弾いてくれるだろう。
問題は、ディアティア様の生家であるクレアルト侯爵家からはまだ釣り書きが来ていない事。
リャンシュ様を入れた3人が懇意であることはあちらも把握しているはずだが、様子見の打診すら来ないのはなぜだろうか?
もしかしてリャンシュ様に嫁げる可能性も残しているのかもしれない。
クレアルト侯爵家はそこまで野心や出世欲のある家ではないが、貴族としての普通の常識と矜持は持っている。
娘であるディアティア様の将来を考えて、隣国とはいえ王子妃になれるのならそれに越したことはないと考えていてもおかしくはない。
もっとも、公爵夫人となり、未来の王妃の義妹となるのも悪い選択肢ではない。
つまり、ディアティア様の嫁ぎ先は弟との仲をどれだけ深める事が出来るかにかかっていると言っても過言ではない。
「在学中に恋人を作る気はやはりありませんの?」
「ありませんよ。一時の気まぐれに時間を割くのは億劫です」
「恋人関係になった方をそのままお嫁にいただけばいいのではありませんこと?」
「そんな都合のいい相手は簡単には見つからないでしょうね」
思わずディアティア様はどうかと言いそうになって口を閉ざす。
ちょっかいをかけたいのが本音とはいえ、ジョセフ様に止められている以上、下手な事は出来ない。
うーん、ここはリャンシュ様に相談して外堀を埋めるしかないのだろうか?
いや、急に接触を持つと不自然に思われるか……。
それにあらぬ誤解を生んでティオル殿下に嫉妬をされても困る。
「うまくいかないものですわね」
「姉上はティオル王太子殿下と婚約なさって順風満帆では?」
「わたくしは確かに順調かもしれませんが、グレビールの今後については気にかけておりますのよ」
「それはありがたいですが、現在考えなければいけないのは姉上の周囲についてでしょう」
弟の言葉に首を傾げる。
「わたくしの、周囲でして?」
現状、周囲の問題と呼べるようなものはだいたい排除出来ているはずだ。
弟が気にかけるような事柄はないはずなのだが?
「……叔父上は、出来の悪い造花にいつまでも興味を示す方ではありませんよ」
その言葉にピクリと指先が動いてしまい、誤魔化すように持っている扇子を開いて口元を隠すように持ちあげる。
「そうですわね」
「お気を付けください」
「……貴方は、叔父様をどう見ておりますの?」
「恐ろしいですよ、色々と」
「それには同意しますわ」
「姉上はもともと警戒なさっているようなので多くは申しませんが、お気を付けください」
真剣なまなざしで伝えられた言葉を疑いたくはない。
「ありがとう」
「いえ、弟として当然です」
演技ではないと、そろそろ信じてもいいのだろうか?
信じたいと思うわたくし自身を、そろそろ認めるべきなのだろうか?
「グレビールは、わたくしの事をどう思っておりまして? 何を言われても怒らないので正直に言ってちょうだいな」
「姉上をですか? 好きですよ。聡明なところも天然なところも、しっかりしているように見えて抜けている部分も愛らしいと思います。あと、天才的な発想力は尊敬するべき部分であり、いずれ姉上の事業の一部を引き継ぐ身としてはその名を穢さぬよう努力せねばと思っております。ただ、失礼を承知で申し上げるのなら、不特定多数の異性を無意識にたらしこむのはおやめになった方が夫婦円満になるかと思います。特に他国の異性と親しくなりすぎるのは、国交にも関りが出てきますし注意なさるべきですね。商会関連で他国にも姉上の信奉者は大勢いますが、それが火種になってしまっては姉上としても心が痛んでしまうでしょう」
「え、えっと?」
「ぼくも出来る範囲だけではなく出来ない範囲も命を懸けてサポートするつもりではありますが、今まで以上に姉上の御身はお1人のものではありませんので、お気を付けください」
「ありがとう……?」
「時間があればもっと姉上について語りたいのですが、学院についてしまったようです」
「え、ええ。そうですわね」
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